愛宕山中納言日記 -449ページ目

こんな店、二度と行かない

身の丈よりプライドの方が高いので、時々人の言葉に腹が立つ。 

 それが、こちらがお金を払う立場のレストランであればなおのこと。つい先ほども、虎ノ門の名店Aの前を通って、嫌な話を思い出した。 

 愛宕の地に越してきて間もない頃、Tシャツにジーンズで界隈を散策していた。そこに、なんとも気になる雰囲気の店を発見。だが、メニューが出ていない。 

 入り口で対応をしている人物に、料理の種類と凡その価格を聞いた。見たとおりの日本食の店で、お昼のコースは8,000円からという。 この人物、さらにこう付け加えた。「今度は是非、接待でいらして下さい。」 

 ビジネス街に不釣合いの格好だったとはいえ、僕個人でも払える金額だ。それなのに、なんとも失礼な言葉である。誰が行くものか。 こんな店が、テレビや雑誌で名店として紹介されているのが腹立たしい。 




 それより残念だったのは、気の効いた台詞で返せなかったことだ。用意していないと、なかなかそうした言葉は出てこない。 

 欧米のレストランで、日本人客はよくウエイターに間違えられるらしい。僕も、何度か間違えられた。 

 ヨーロッパのとある高級レストランでのこと。トイレに行く際に、酔ってだらしない顔をした男から、ビールを頼まれた。 このクラスの店なら、間違いなく僕よりずっといい男をウエイターに雇うだろうに。 


後悔しているのは、その時「僕はウエイターじゃないよ」と答えてしまったことだ。




今なら言える。「君はこんな高級なお店に来たのは初めてかい。それなら教えてあげよう。オーダーはウエイターにするんだよ。それからこういうお店では、ビールじゃなくてシャンパンを飲みなさい」と。 



もしタイムマシンで時間が戻せたら、あの時に戻ってあいつに言ってやりたい。