愛宕山中納言日記 -444ページ目

元恋人にあって、恋人にないもの

一昨日モテない話を書いたばかりである。だから、もちろんこれは僕の話ではない。最近気になった「元」の表記の話である。

当然、元恋人は恋人ではないのだから、「元」をつけないと不正確だ。今の恋人にしてみれば、同じにしてもらっては気分が悪い。

では、先日亡くなった三浦和義に続くのが、なぜ「元」社長なのだろう。日本語として随分と違和感がある。もう社長でもなんでもないのだ。(ここでは事件について言及する気は全く無い。)他にこういう使い方があるかを考えてみると、あるある。よく目にするのは「元会社役員」「元大臣」などといった表現だ。そういえば、あの西川史子さんの恋人だって、「元区議会議員」だった。ではいったい彼らは、今何をしているのだろう。そして名刺は、「元●●」となっているのか。「元」というのは、現役の人には普通は使わない呼び方のように思う。

  逆に引退をした人が事故に巻き込まれた場合、新聞やテレビはたいてい「無職」と報道する。決して「元会社員」「元課長」などと呼んだりはしない。そして主婦も「無職」である。なんだか目に見えない「格差社会」の存在を感じるのだが、気のせいだろうか。

  ちなみに僕も20代で、当時世界で最も大きい生命保険会社のパリで取締役をしていた。思えば、現欧州中央銀行の総裁と、隣の席で食事をしたこともある。それでも僕が事故に巻き込まれた場合、「元会社役員」とは間違っても報道されないだろう。いやいや、それはかなり恥ずかしい。しかも不正確極まりないと思う。昨日の日記で肩書きに拘った「元ユーモアコラムニスト」と呼ばれるのも相当に変だ。やはり今の肩書きを使わないと。

  ひるがえって「元社長」である。この呼び方に関して、報道機関への通達があったのだろうか。ニュースを見るたびに、不思議に思う。