父のこと(2)
父が有料老人ホームに入所してひと月余り。新しい環境にすっかり順応しているように感じる。私は子供の頃から父には親しみを感じなかった。酒タバコはやらず、趣味もない。仕事一筋、残業の毎日で、休日も遊んでもらった記憶は殆どない。私は結婚してから7年間、公営団地で暮らしたが、子供が成長するにつれ父母との同居を考えるようになった。私と父とは長年打ち解けられないわだかまりのようなものがあったが、私には独力でマイホームを建てる甲斐性はない。父母との二世帯住宅がベストと思えた。我々が建てた二世帯住宅は、1階と2階で完全に別々の生活ができるようにした。普段特に用がなければ行き来はない。この方式で26年間、お互いが干渉されずにうまくやってきた。しかし、一昨年頃から父が二度救急車の世話になったり、庭で転んだりして、放っておけなくなってきた。母も数年前から認知症が進行してきていた。そして今年の正月、父が倒れ一時は寝たきり状態になった。幸い持ち直して自力でトイレと食事は出来るようになったので、ヘルパーさんの力を借りてお互いの生活を維持してきた。そんな時、かみさんが入院した。 ー続くー