陸上フライング・ルール改正(再び) | 上智まさはるの陸上競技ブログ

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ちょうど1年ほど前に、陸上競技のいわゆる「フライング」のルール改正について取り上げました。
→ 「陸上フライング・ルール改正」(2012.7.28)

この最新のルールも、移行期間を経て、いよいよ今年度から日本国内の大会に全面的に適用されることになりました。
そして迎えた日本選手権。
はたして成功裏に運用することができるか、はたまた問題を引き起こすか、注目しました。

■最新ルールの確認

ここでもう一度、この最新ルールについて確認しておきましょう。
ルールブックをそのまま記載すると分かりにくいので、あえて私の言葉でまとめました。(念のため、ルールブックの抜粋を最後に掲載しておきます。詳しくは、日本陸上競技連盟の公式ページをご覧ください)

一度でも不正スタート(いわゆるフライング)した場合、その競技者は失格とする。(いわゆる「一発失格」ですね)
ただし、「不適切行為」の場合は警告とし、同じレースの中で2度以上の警告があった場合は「不正スタート」=失格となる。


ここで「不正スタート」はいわゆるフライングなので説明は不要かと思いますが、「不適切行為」とは以下を指します。
(a) 「位置について」または「用意」の合図の後で、信号器発射の前に正当な理由もなく手を挙げたり、クラウチングの姿勢から立ち上がったりした場合(理由の正当性は審判長によって判断される)。
(b) 「位置について」あるいは「用意」の合図に従わない、あるいは速やかに最終の用意の位置につかなかったとスターターが判断したとき。
(c) 「位置について」あるいは「用意」の合図の後、音声その他の方法で、他の競技者の妨害をしたとき。
(d) 速やかに最終のスタート体勢に構えない。
(e) 最終のスタート体勢で静止しない。
(f) 一旦静止した後で動く(局所的な一瞬の動きを含む)。
※(d)~(f)は日本陸上連盟だけのルール。国際陸上連盟(IAAF)は(a)~(c)のみ規定。

このルールをまともに解釈するなら、基本はあくまでフライング「一発失格」であり、ごく希なスタート以前の不適切行為のケースだけは、1回だけ猶予を与えるというルールと捉えられます。

このスタート以前の不適切行為のケースとは、たとえば、「用意」の合図の後の静止時間に足をピクッと僅かに動かしてしまった場合に、スターターがスタートのピストルを打たずに、全選手をいったん起立させ、スタート準備のやり直しを命ずる場合ですね。


■日本選手権での疑問

さて、今回の日本選手権では、一発失格の「不正スタート」は私の知る限り1件もありませんでした。代わりに「不適切行為」でスタートのやり直しが何度かありました。

しかし、私の目には、これら「不適切行為」の実態は、どう見ても「不正スタート」そのものに見えました。
これを「不正スタート」と認めないなら、そもそも「不正スタート」などありえないとまでいえそうです。

そう。私の目には、大会運営側が「不適切行為」のルールを意図的に拡大解釈して、フライングの解釈を実質的に2003年のルール改正以前の状態、すなわち「フライングは同一選手が2回で失格」というルールに引き戻して運用したと映りました。
つまり、フライングをすべて上記「不適切行為」の主に(f)に該当するものと無理やり拡大解釈しし、スタート前に遡って適用して再スタートを命じたというストーリーでしょうか。

皆さんはどう感じましたか?
私のように違和感を感じた人はいないのでしょうか?
ネットなど見てもあまり見当たらないので、何か私が大きな勘違いをしているのでしょうか??

まあ、個人的には、2003年以降のルール改正の変遷にはどちらかというと反対だったので、2003年以前の状態に戻ったことは歓迎ではありますが、ルールはルール。それをなし崩しにするのはいかがなものかと思います。


■ご参考:ルール抜粋

※一部、同義の言葉で言い換えている部分があります。
詳しくは以下の日本陸連公式ページをご覧ください。
ルールブック2013第3部トラック競技(150~154ページを参照)

【フライングルール】
混成競技と道路競走および駅伝競走を除いて、一度の「不正スタート」でも責任を有する競技者は失格とする。
混成競技と道路競走および駅伝競走においては、各レースでの「不正スタート」は1回のみとし、その後に不正スタートした競技者は、すべて失格とする。

【不正スタート】
競技者は、最終の用意の姿勢をとった後、信号器の発射音を聞くまでスタート動作を開始してはならない。もし、競技者が少しでも早く動作を開始したとスターターあるいはリコーラーが判断したときは不正スタートとなる。
〔注釈〕足がスターティングブロックのフットプレートから離れない、または手が地面から離れない限り、競技者のスタート行為の開始とは見なされない。
この観点から、以下の(a)(b)(c)の行為は不正スタートではなく、スタートにおける不適切行為として区別される。

【不適切行為】
競技者が下記の行為をしたと判断したなら、スターターはスタートを中止しなくてはならない。
(a) 「位置について」または「用意」の合図の後で、信号器発射の前に正当な理由もなく手を挙げたり、クラウチングの姿勢から立ち上がったりした場合(理由の正当性は審判長によって判断される)。
(b) 「位置について」あるいは「用意」の合図に従わない、あるいは速やかに最終の用意の位置につかなかったとスターターが判断したとき。
(c) 「位置について」あるいは「用意」の合図の後、音声その他の方法で、他の競技者の妨害をしたとき。
(d) 速やかに最終のスタート体勢に構えない。
(e) 最終のスタート体勢で静止しない。
(f) 一旦静止した後で動く(局所的な一瞬の動きを含む)。
※(d)~(f)は日本陸連だけのルール。国際陸連(IAAF)は(a)~(c)のみ規定。

この場合、審判長はスタートにおける「不適切行為」があったとして当該競技者に対して警告を与えることができる(同じレースの中で2度以上の警告があった場合は「不正スタート」となる)。

以上です。