今回が「男はつらいよ」の締めとなります。
総括でもあります。
しかし、なぜ、今、いや、いまさら「男はつらいよ」を取り上げたのか?
国民栄誉賞も受賞したほどの、正に日本人ならほとんどの人が、全シリーズ見ているはずです。
私は、48作中、5作しか見ていません。
しかも諏訪家の長男満男が幼い頃までです。
私は、渥美清のファンでした。
彼の「目の演技」は、本当に素晴らしいのです。
その渥美さんが、「寅さん」に獲られてしまった感があったのです。
もっと他の映画で、色々な役の渥美さんを見たかったのです。
そいう事情もあり、私的には、「男はつらいよ」には、興味があまり沸きませんでした。
そして、最近気づいたのです。
私、本当に、心からこの作品を理解していたのか・・・
理解していなかったかもしれません。
筋書はいつもワンパターンではあります。
若い時に家を飛び出した男が、フーテンとなり、日本各地を渡り歩き、テキや業で日銭を稼いでいる。
ただし、頭はシンプルであるが、男気があり、愛想が良いので、意外と女性にもてる。
約20年ぶりに、生まれ故郷東京柴又に帰る。
年に、1~2回、腹違いの妹のいる、親戚が営む東京柴又にある団子屋に立ち寄る。
そして、一家団欒で食卓を囲むが、多くの場合、途中で寅さんと家族が喧嘩になる。
2階の部屋に泊まること大半であるが、喧嘩の後、すぐに飛び出すこともある。
それでも、またしばらくすると、柴又に帰って来る。
現地で知り合った女性が、なぜか柴又を訪ね、多くが泊まって行く。
しかし、実を結ぶことはなく、ほとんど失恋の繰り返しである。
最近「男はつらいよシーリーズ」を第1作、第28作から第50作まで鑑賞しました。
そこには、作り手(山田洋次監督)のメッセージが画面に登場するのです。
何気ない会話、行動の中に、私たちが忘れていた、いや捨ててきた魂の財産が散りばめられているのです。
寅さんが持つ、人間の原点の優しさ、
また、人間の原点の生き方、
人間の原点の哲学
それらが、山田監督は、私たちに伝えてくれています。
私は、実は寅さん的生き方は、山田さんの理想の生き方なのではないかと思うのです。
会社社会、家族に囚われない生き方、
日本各地を巡り、現地で知り合った人たちと、一合一会の出会いをする、
恋が芽生えても、相手の幸せ(!)を考えて、自ら去って行く、
そして、何と言っても、帰る場所を大切にしている、
もちろん、柴又のことです。
また、寅さんを囲む柴又の人たちの優しさ、絆、
団子屋での一家団欒の食卓、
寅さんは、この帰る場所があったからこそ、ますます充実した人生を送れたのです。
もしかして、人間誰しも、できれば寅さん的生き方を望んでいるのではないでしょうか。
いまさら、寅さんです。
いや、今こそ寅さんなのです。