第28話:カグツチ塔・4~カグツチ塔・5:1/5 | 魔人の記

第28話:カグツチ塔・4~カグツチ塔・5:1/5

★1/5話 横顔と告白★

>カグツチ塔402階。
ここまで長い、長い旅を続けてきたフィフス・バベルたち。

ハイピクシー「気をつけてね」

光介「…ああ。一番最初といい、今回といい…いろいろと世話になったね」

>フィフス・バベルたちはカグツチ塔最上階へ向かうべく、準備を整え終わった。
あとは、貼り絵の間にいる者たちに、別れを告げるばかりとなっていた。

別のコダマ「だいじょうぶ、きっと勝てるさー★」

コダマ「そだねー★ なんたって、みんながいてくれるもんねー♪」

シキガミ「マタ 新シイ 絵 見セテ クレ」

ウィルオウィスプ「ウン。 ウォレ ソウセイ オワッタラ マタ エ カクゾ」

妖精たち「がんばってくださいですぅー」

カハク「ま、ちゃちゃっとやってくるから、大船に乗ったつもりで待っててよ」

>仲魔たちの顔は、決意に満ちて輝いている。
それは、誰もが旅の終わりを感じているからに他ならない。

光介「みんなも…ありがとう」

>ヨスガ、シジマ、ムスビ…それぞれのコトワリを持った悪魔や思念体たち。
さらにマネカタたちにも、フィフス・バベルは礼を言った。

思念体たち「さっきから言いすぎなんだよ、てめーはよ。まあ…悪い気はしねーが」

悪魔たち「人修羅様、ご武運を祈っております!」

悪魔たち「我らは世界の行方をただ見守るのみ…しかし、どうかお気をつけて」

マネカタたち「気をつけてね…怖かったら帰ってきてもいいよ」

光介「うん。今まで出会ったみんなや倒してきたヤツらのためにも…必ずやり遂げてくるから」

>壁面、そして中央の床にある貼り絵たちにも声をかける。
広間にいる者たちの思いを受けた絵たちは、彼らに向かって微笑んでいるようにも見えた。

光介「これを…頼む」

泉の聖女「…はい」

>フィフス・バベルは、色紙に描かれた貼り絵を泉の聖女に渡す。
聖女はしっかりとそれを胸に抱きしめた。

泉の聖女「我らはここで、貴方たちをお待ちしております…どうか、お気をつけて」

光介「ありがとう。それじゃ、いってきます」

泉の聖女「はい」

>フィフス・バベルは、仲魔たちのもとへと戻った。

光介「みんな、いってきます!」

カハク「行ってくるわね!」

コダマ「ボク、がんばっちゃうからねー★」

ウィルオウィスプ「セイゼイ タタキ ノメシテ クルゾ!」

ピシャーチャ「…(ざわざわと頭を下げている)」

悪魔たち「お気をつけて!」

思念体たち「気をつけて行ってきやがれ」

悪魔たち「その身に、世界が味方することを祈ります!」

マネカタたち「がんばってねー」

ハイピクシー「また、みんなで一緒にいろいろ作りましょ!」

別のコダマ「ボク、全然心配してないからねー♪」

シキガミ「気ヲ ツケテ ナ」

妖精たち「がんばってくださぁーい」

ゴウト「…よし、それでは向かおうか。カグツチ塔の最上階へ…」

ライドウ「…」

光介「…ああ」

>フィフス・バベルたちは上へ向かうリフトに乗った。
皆の顔が完全に見えなくなるまで、彼らはいつまでも手を振っていた。

>上階に着き、リフトを降りたフィフス・バベルたちは、話しながら塔内を進んでいく。
どうやらワープの仕掛けも、フィフス・バベルは完全に憶えているようだ。

カハク「…もうすぐ、戦いも終わるのね…」

コダマ「そだねー…」

ウィルオウィスプ「…」

>旅が終わることに何かを感じるのか、仲魔たちの言葉はどこか力がない。
だが、突然カハクが大きな声でそれを打ち破った。

カハク「違うわよ! これからが真の戦いってヤツじゃない! 元気なくしてる場合じゃないわ!」

光介「ああ…カグツチとの戦いは、いろんな意味でこの旅の総決算だからね。破戒の力のこともあるから、何が起こってもおかしくない」

コダマ「でも、ボクたちみんな一緒だからここまで来れたんだよー! 最後の戦いだって、みんなで勝てるさー★」

ウィルオウィスプ「ウン。 ソノトオリ ダゾ!」

カハク「…で」

>カハクは、服の中にしまっていた小さなグングニルを取り出す。
それは手のひらサイズであり、元の大きさには戻っていない。

カハク「いずれわかっちゃうから言っちゃうけど、これって実はコースケへの恩返しなのよね」

光介「…え? そのグングニルが?」

>フィフス・バベルは目を丸くした。
彼は、なぜカハクがオーディンからグングニルを預かっているのか、その経緯を知らないのだ。

カハク「別に、コースケにこれをあげるってわけざじゃないのよ。オーディンが言ってたわ…最後の戦いの時にこれが元の大きさになって、昔の仲魔たちを呼べるかもしれないって」

光介「!」

>フィフス・バベルは驚愕の表情をありありと浮かべる。
それは彼にとって、予想だにしないことだった。

光介「昔の仲魔たち、って…」

カハク「あ、もちろんハイピクシーたちのことじゃないわよ。その前…前の世界で、コースケが一緒に旅してた仲魔たちのことね」

コダマ「おぉー? そうなの? ボクてっきり武器だと思ってたー★」

ウィルオウィスプ「ウォレモ」

ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずく)」

カハク「コースケさ、ちょっと前まで破戒の力についていろいろ悩んでたじゃない?」

光介「あ、ああ…今じゃみんながくれたマガツヒのおかげで、コントロールできるようにはなってきたけど」

カハク「だから、昔の仲魔をもし呼び寄せることができたら、コースケも元気になるんじゃないかな…とか思ってさ」

光介「カハク…」

カハク「だって、あたしたち…コースケが何が好きかとか全然知らないんだもん。みんなへの恩返しはそこそこいいもの贈れたかなって自信はあったけど、コースケだけマガタマだったし」

ゴウト「…まあ、我らはそれなりに苦労したけどな…」

ライドウ「…(小さく苦笑する)」

カハク「あ、ゴメン! そういう意味じゃないのよ。ゴウトにゃんとライドウには、ホント感謝してる…でも、なんていうかそういうのとは別に何かないかってずっと考えてたの」

ゴウト「わかっている。少し言ってみたかっただけだ」

ライドウ「…(優しく微笑んでうなずく)」

カハク「ありがと。で、思いついたのが昔の仲魔たちだったってわけ。邪教の館でヴァルキリーに会ったんだけど、別のヴァルキリーだったみたいで…」

光介「そうか、それで彼女たちの主人であるオーディンにも会ったんだな?」

カハク「うん。そしたらグングニルを貸してくれたの。まさか、戦いでも役立ってくれるとは思わなかったけどね」

コダマ「そうだよねー! ボクたち、ちょっと大きくなったグングニルに助けられたよー★」

ウィルオウィスプ「ウン。 ハマ デ ヤラレ ナカッタ カラナ」

カハク「あたしも、ハエにされちゃうところを助けてもらったわ。この戦いが終わったら、オーディンにも何かお礼しないとね」

光介「ああ、そうだね」

>フィフス・バベルはにこやかに笑う。
カハクがそこまで、自分のことを考えていてくれたことが素直に嬉しいようだ。

カハク「…で、何で今この話をしたかっていうと、最後の戦いの時にグングニルが元の大きさに戻るらしいのよ」

コダマ「ふむふむー」

カハク「オーディンが持ってた時は、あたしじゃ持ってられないほど大きかったから、それを服の中に入れてたら破けちゃうでしょ? だから出したのよ」

光介「確かに、最後の戦いで服が破れたんじゃシャレにならないもんね」

カハク「そーなのよ。お色気を期待してるかもしれないけど、あたしはぜんっぜんそういうつもりないから」

ウィルオウィスプ「マ ダレモ ミナイガ ナ」

カハク「なんですって…?」

>カハクは、小さなグングニルつまみ上げ、その先をウィルオウィスプに向ける。

カハク「何か言ったかしら、ウィル?」

ウィルオウィスプ「カ カハク… ソレ ツカウノ ハンソク ダゾ!」

カハク「な に か い っ た?」

ウィルオウィスプ「イ イッテ マセン…」

ピシャーチャ「…(ざわざわと何か言う)」

カハク「え? 何よピシャーチャ」

>彼女にはピシャーチャが何を言っているかわからない。
通訳を求めてウィルオウィスプを見た。

ウィルオウィスプ「ピ ピシャーチャ… ウォレニ ソレ ツウヤク ムリ!」

カハク「なによ…ピシャーチャはなんて言ったの? 教えなさいよ、ウィル!」

ウィルオウィスプ「オコトワリ ダゾ! ウォレ クチガ サケテモ イエナイ!」

ピシャーチャ「…(ざわざわとさらに何か言う)」

ウィルオウィスプ「バ バカ! ウォレ ソンナコト ウォモッテ ナイゾ!」

>うろたえるウィルオウィスプ。
意味がわからないカハクだったが、彼がうろたえる姿を見るのは楽しいようだ。

カハク「なんて言ってるのかわかんないけど…いいわ、ピシャーチャ! もっと言ってやって!」

ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずき、何か言った)」

ウィルオウィスプ「ウォ ウォレ… ゴメン ナサイ!」

カハク「え!」

>ウィルオウィスプが突然謝ったことに彼女は驚く。
どうやらよほど効果的なことを言われたらしい。

ウィルオウィスプ「アヤマル アヤマルカラ… ピシャーチャ モウ ヤメロ! ウォレ タエラレナイ ゾ!」

ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずき、黙り込んだ)」

カハク「…? なんかわかんないけど、まあいいわ。これにこりたら、余計なこと言わないことね!」

ウィルオウィスプ「ハ ハイ…」

ゴウト「…ふふ、最後まで賑やかなことだ」

ライドウ「…(優しく微笑んでうなずいた)」

>フィフス・バベルたちは塔内を進み、やがて最上階へ続くリフトへとやってくる。
上を見上げるが、その先は光が見えるばかりで目的地が見えない。

コダマ「うわー…高そうだねー」

光介「ここを上れば最上階…カグツチは、そのさらに上にいるんだ」

カハク「ついに、ここまで来たのね」

ウィルオウィスプ「…」

ゴウト「ここまで来て、戻る選択肢もあるまい。広間の連中にも、そのつもりで挨拶してきたのだろう?」

光介「ああ…みんな、いいか?」

カハク「ええ」

コダマ「いいよー★」

ウィルオウィスプ「イイゾ」

ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずいた)」

光介「よし、それじゃ行こう…カグツチ塔、最上階へ…!」

>フィフス・バベルたちはリフトに乗り、それを起動させる。
リフトは天高く上り、彼らを最上階へと運んでいった。

>そして、カグツチ塔666階。
「666」という悪魔の数字を冠したこの階が、カグツチ塔の最上階である。

カハク「うわー…キレイ…!」

コダマ「光がいっぱいだねー♪」

ウィルオウィスプ「…アア」

光介「ここが最上階…カグツチ塔666階だ」

>その場所は、真紅を基調とするカグツチ塔内とは全く違い、青白い光が輝く場所だった。
フロアの中央には三本の柱がある。

光介「あの柱に、今まで手に入れてきた3つのタカラをはめ込んでいけば…カグツチに会える」

カハク「いよいよね…!」

コダマ「ボク、なんだかドキドキしてきたよー★」

ゴウト「どの柱にどのタカラ…そういうルールはあるのか?」

光介「いや、ないよ。ここまで来たら、もうトラップも何もない。好きにはめ込んで、カグツチに会いに行くだけなんだ」

>そう言って、フィフス・バベルは歩き出す。
仲魔たちもそれにならい、中央の柱へと向かった。

ウィルオウィスプ「…」

>そこに向かいながら、ウィルオウィスプはすぐそばにいるカハクの横顔を見つめている。

ウィルオウィスプ「(ゼンセ ハ ゼンセ。 イマ ハ イマ…)」

>ただ、じっと見つめている。
彼女はそれに気付かず、他の仲魔たちと話している。

ウィルオウィスプ「(デモ ヤッパリ メイファノ オモカゲ アル… キレイ ダゾ カハク)」


$とある魔人の記-大人カハク


>彼は、彼女の姿を焼き付けるように見つめている。

ウィルオウィスプ「(サッキハ ピシャーチャニ イワレテ ビックリ シタ ケド… デモ ウォレモ ソウ ウォモウ。 ヤッパリ カハク キレイ)」

ピシャーチャ「…(ざわざわと何か言う)」

ウィルオウィスプ「(…ワカッテル。 ウォレ チャント ワカッテルゾ…)」

>ピシャーチャの言葉に、彼はただうなずいた。

ウィルオウィスプ「(コースケ イッタ。 アクマ ハ デンショウカラ ハズレ ラレナイ。 ソレハ ウォレタチモ ウォナジ コト…)」

>カハクから、コダマ、フィフス・バベル…
そして最後にピシャーチャへと視線を移した。

ウィルオウィスプ「(ハカイノ チカラ… ヘタ シタラ ショウメツ スルカモ シレナイ… コースケ ハ ショウメツ シナカッタ。デモ…)」

>自らの下半分を見る。
鬼火状の体なので目立たないが、そこは少しだけ半透明になっている。

ウィルオウィスプ「(ウォレ ゲドウ。 デモ ウォレ ゲドウ カラモ ハズレタ キモチ モッタ… モウ ナントナク ワカル ゾ)」

ピシャーチャ「…」

ウィルオウィスプ「(ツギガ サイゴ。 ナラ ウォレ ゼンリョクデ ガンバル ダケ! ソノアト ノ コトハ…)」

>彼はまたカハクを見る。
その視線は、優しくもあり寂しげでもあった。

ウィルオウィスプ「(キット ミンナガ ウマク ヤッテ クレル… ウォレ ソレデ イイ。 ソレデ イイゾ…)」

>彼は誰にも言わず、ただ思う。
そばにいるピシャーチャだけが、彼の心情を感じ取っているようだ。

光介「…よし、せっかくだから、左から手に入れた順にはめ込んでいこう…」

>彼の心情を知らないまま、フィフス・バベルは3本の柱にツチノタカラ、ヨミノタカラ、アメノタカラの順ではめ込んでいく。

カハク「わ…!」

>柱に光が宿り、それは空の彼方に放たれた。
その方向から声が聞こえてくる。

声「汝…全てのコトワリを統べし者。我が元に来るがよい…」

>声が聞こえた直後、柱の前にある円盤状の床が光を帯びる。
それは、カグツチへのリフトへと変化した。

光介「…いよいよだぞ」

カハク「そうね…! あたしもドキドキしてきちゃったわよ」

ゴウト「今までの力を全て出せば問題なかろう。それだけ強大な敵に、お前たちは勝ってきたのだからな」

ライドウ「…(静かにうなずく)」

コダマ「おおー★ ゴウトにゃんがそう言ってくれたら、ボク自信持っちゃうよー♪」

ウィルオウィスプ「…」

カハク「…? どうしたのよ、ウィル」

>カハクは、自分をじっと見つめているウィルオウィスプに気付く。

カハク「あたしの顔…なんかついてる?」

ウィルオウィスプ「…イヤ ナニモ ツイテナイ ゾ」

カハク「ちょっと大丈夫? これから最後の戦いなのよ…いつもみたいに『ウォレタチ サイキョウ ダゾ!』って言ってくれなきゃ!」

ウィルオウィスプ「ウ… ウン。 ウォレタチ コソガ サイキョウ ダゾ!」

>カハクに言われ、ウィルオウィスプは無理に大声を出した。

コダマ「おぉー! ウィル、いつもよりやる気だー★」

光介「これは、がんばらないといけないな! 俺も負けてられないぞ!」

カハク「その意気よ! さすがウィルね!」

>仲魔たちは彼の声を「最後の戦いに向かう気迫」だと勘違いし、自分たちもと気合いを入れる。

ピシャーチャ「…」

ウィルオウィスプ「…イインダ ピシャーチャ。 ウォレハ コレデ イイ」

ピシャーチャ「…(ざわざわと寂しげにうなずいた)」

ゴウト「…」

>ウィルオウィスプとピシャーチャの様子を、ゴウトはじっと見つめている。
だが何も言うことはせずに見つめるだけだった。

光介「よし、それじゃカグツチに会いに行くぞ…!」

>フィフス・バベルは、カグツチへのリフトを起動させる。
それは青白い光をあふれ出させながら、真っ直ぐ上っていく。

ウィルオウィスプ「(ズット…)」

>下にゆっくりと降りていく景色を見ながら、彼は思う。

ウィルオウィスプ「(ズット イエナカッタ。 キット モウ イエナイ… ダカラ ウォレ ココロデ イウ)」

>そっとカハクに近づく。
だが、口は動かさない。

ウィルオウィスプ「(スキ ダ ゾ カハク)」

カハク「…? ウィル?」

>突然自分のそばに来たウィルオウィスプに、彼女は不思議そうな表情を浮かべる。
そんな彼女に、彼は精一杯の笑顔でこう言った。

ウィルオウィスプ「ミンナ イッショデ サイキョウ… ソレヲ キッチリ カグツチニ オシエテ ヤルゾ!」

カハク「…うん! そうよ、あたしたちみんないっしょなら、どんな相手だって裸足で逃げ出すんだからね!」

>彼女の元気いっぱいの言葉に、ウィルオウィスプは微笑んだ。
そしてリフトは、ついにカグツチのもとへと到着した……!

>2/5話へ続く…


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