第28話:カグツチ塔・4~カグツチ塔・5:2/5
★2/5話 無尽光カグツチ★
>カグツチ塔、最上階のさらに上…
光介「…」
>この世界の中心である、カグツチの中に彼らはいた。
いくつもの環が重なっており、それはあたかも星を思わせる。
カハク「…」
コダマ「…」
ウィルオウィスプ「…」
ピシャーチャ「…」
>仲魔たちは皆、言葉を失っている。
この世界に光と力をもたらしてきた、太陽のような存在であるカグツチ…それを目の前にして。
ゴウト「これが…カグツチの本体か…」
ライドウ「…」
>ライドウたちも、この場所の様子に驚きを隠しきれない。
輝くばかりと思われたカグツチの中に、自分たちは入ってしまっているのだ。
光介「…」
>フィフス・バベルは、その中心に向けて一歩前に出る。
巨大な球体の空間であるこの場所は、全てが白く光り輝いている。
カグツチ「おお…まさか、お前がここに来ようとは…」
>巨大な空間の中央。
そこに、カグツチはいた。
カグツチ「力の国…ヨスガを興さんと、我の元に来た…今の今までそう思っていたが…」
>カグツチもまた、巨大な球体であった。
フィフス・バベルたちの目をつぶさない程度に光り輝き、彼らに言う。
カグツチ「どうやらそうではない…お前たちは、ヨスガを求めてここに来たわけではないのか…」
光介「…そうだよ、カグツチ」
>フィフス・バベルは、しっかりとした声で言う。
光介「俺たちは、ヨスガでもシジマでもムスビでもない。完全な自由を求めて来たわけでもない」
カグツチ「むう…」
光介「ただ『トモニ』…みんなと共に進むために、ここに来たんだ」
カハク「…」
コダマ「…」
ウィルオウィスプ「…」
>いつもは饒舌な仲魔たちも、この時ばかりは黙り込んでいる。
それだけ、この場は緊張で張り詰めていた。
カグツチ「コトワリに適さぬ存在…それがお前だ、フィフス・バベル。それを分かっていて、我のもとへ来たということか」
光介「そうさ。ここにいるみんなでいろんな場所に行き、いろんなことを感じて…そして乗り越えてここまで来た。残る相手は、お前だけだよ…カグツチ」
カグツチ「…」
>カグツチはしばし黙る。
目などはない球体なのだが、じっとフィフス・バベルを見ているようでもあった。
カグツチ「…この世界に満ちたる破戒…それを引き起こしたのはお前たちだ。その罪がどのようなものか、理解しているのだな?」
光介「罪だとは思っていない…もう、何度も周回する世界は終わる。お前を倒せば、全部終わる」
カグツチ「なるほど…」
>カグツチの光が止む。
今までは光る球体だったカグツチの姿が、よく見えるようになった。
カハク「あ、あれ…」
コダマ「ブロックー?」
ウィルオウィスプ「イッパイ クッツイテル ゾ…?」
>カグツチの表面には、いくつもの線が入っている。
球体にぴたりとブロックがはめ込まれたような姿だった。
カグツチ「…やはり、お前の創世を許すわけにはいかぬ」
>球体から声が響いてくる。
それは厳かにこの空間全体に響く。
カグツチ「ただ共に進むという…そのような不確かな世界を、許容するわけにはいかぬ」
光介「…ああ、わかってるさ」
カグツチ「やはりお前はただの悪魔! 世界の姿を、お前のような者に決めさせるわけにはいかぬ!」
>カグツチの怒声が響く。
仲魔たちは、思わず耳を両手でふさいだ。
カグツチ「お前の心を見た…もし、世界の姿がその心に全て確定していたなら、我も考えたであろう。しかし」
光介「…」
カグツチ「お前の中に、世界を定める決定的なものは何も無い! やはりお前こそが破戒の使者であったか!」
>カグツチは、自らの体から2本の角を突き出させる。
その間を、雷のようなプラズマが走った。
カグツチ「我が怒りの光を受けよ!悪魔よ! そしてその存在を全て抹消されるがよい!」
光介「残念だがカグツチ…俺は破戒の使者じゃない!」
>フィフス・バベルは、背中にある「混沌の翼」を広げる。
光介「俺たちこそが破戒! 俺たちは、使者じゃなくてその王だ!」
カグツチ「笑止! 思い上がりしその翼、我が怒りにて焼き尽くしてくれようぞ!」
>カグツチは戦闘態勢に入る!
それと同時に、周囲の空間が青白く色を変えた!
光介「さあ、最後の戦いだぞ、お前たち!」
カハク「え、ええ…! やってやるわ!」
コダマ「ボク、最後までマイペースでがんばっちゃうぞー★」
ウィルオウィスプ「コレデ キメル ゾ!」
ピシャーチャ「…(ざわざわと心配そうにしている)」
ゴウト「ここで我らが手を出すのは野暮の極み…不測の事態に備え、少し下がるとするか、ライドウ」
ライドウ「…(静かにうなずいた)」
カグツチ「破戒の者たちよ、今ここでその命を終えよ!」
>無尽光カグツチと戦闘開始!
光介「…なんだか、こうやってまともに戦闘をスタートさせるのも久しぶりな気がするね」
コダマ「それは言わない約束だよー。だって、バアル・アバターの時はコースケが勝手に突っ込んじゃったんだからー」
ウィルオウィスプ「チットモ ハンセイ シテ ナイナ」
光介「ごめんごめん。でも、これで最後だ…! みんな、気合い入れて頼むぞっ!」
カハク「ちょ、ちょっと待って!」
>カハクが突然大声をあげた。
手に持っている小さなグングニルを指差す。
カハク「最後の戦いだっていうのに…グングニル、全然大きくならないんだけど!?」
光介「まだカグツチは第1形態だ…ダメージを与えていくと第2形態になる。だから、まだグングニルが大きくならないからって慌てることはないよ」
カハク「そ、そうなの? それだったらいいけど…じゃ、あたしはこれ持ったまま戦うわね」
コダマ「んでさー、作戦はどうするのー?」
光介「カグツチに妙な耐性とかは全くないよ。だから、久しぶりに『いつものように』やっちゃっていい!」
コダマ「うひょー★ んじゃボクはしんくうはーだねー♪」
ウィルオウィスプ「ウォレハ キアイ ツキ ツクモバリ ダナ!」
カハク「あたしはプロミネンスね!」
光介「ああ! 俺はフォッグブレスを限界までかけて、それから気合いを込めてアイアンクロウをぶちかましてやる!」
カグツチ「相談は終わったか…では、行くぞ!」
>カグツチは光を放ち、コダマを狙う!
しかしコダマは避けた!
コダマ「あっぶなー! いきなりなんてびっくりしちゃうぞー★」
光介「だが、お前が避けてくれたことでスキが生まれた! 今のうちに攻めるっ!」
カハク「がっつり燃やしてやるわっ!」
>カハクのプロミネンス!
カグツチの表面がブロック状にはがれる!
カハク「あれ? 弱い…?」
>しかし、はがれた表面はパズルのピースが収まるように元の位置へ戻った。
カハク「…やっぱそんなに甘くないか! 次いっちゃって!」
コダマ「ヒーホー! 今度はボクのしんくうはーだいっ★」
>コダマの真空刃!
またもカグツチの表面がブロック状にはがれ、そして元に戻った。
コダマ「…なんだか、ダメージ与えてる気がしないねー?」
光介「大丈夫だ! 俺たちはここまでずっと強くなり続けてきたんだ…もっと自信を持っていい!」
ウィルオウィスプ「ナラ ウォレ ジシン モッテ キアイ イレルゥゥゥ!!」
>ウィルオウィスプの気合い!
その体に力がみなぎる!
光介「それじゃ俺はフォッグブレスかけさせてもらうぞっ!」
カグツチ「…む」
>フィフス・バベルから吐き出されたフォッグブレスが、カグツチの視界をぼやけさせる!
命中&回避力が下がった!
カグツチ「小癪な!」
>カグツチは大量の炎を呼ぶ!
その全てがフィフス・バベルたちに向けて襲い掛かってきた!
光介「マハラギダイン程度で、俺たちが沈むと思うか!」
カハク「甘いわね!」
コダマ「ドツク名物まんじゅうより甘いぞー★」
ウィルオウィスプ「ドツク ジャナクテ ツクド ダゾ」
>フィフス・バベルたちは余裕をもってそれを避ける!
だが、炎の衝撃で足場が崩れた!
光介「うおっ!?」
>フィフス・バベルは慌てて「混沌の翼」を使い、その場に浮かぶ。
その後で後ろを振り返った。
光介「ピシャーチャ!」
ゴウト「無事だ! 後ろを見ている場合か!」
>ピシャーチャは、ライドウたちに守られてリフト付近に戻っている。
それを確認したフィフス・バベルは仲魔たちに言った。
光介「ここじゃ、ライドウたちも巻き添えになる! カグツチの後ろに回るぞ!」
カハク「りょーかい!」
コダマ「ピシャーチャたち、飛べないもんねー」
ウィルオウィスプ「ワカッタゾ! ダガ…」
>ウィルオウィスプは、カグツチをじっと見ながら旋回している。
ウィルオウィスプ「カグツチ サッキヨリ アカルク ナッテルゾ!」
光介「ああ、なんといってもカグツチはこの世界の光! 自分の都合で勝手に輝きを『進めて』るんだ! 煌天になる前に、第1形態を終わらせたい!」
カハク「コーテンって、月で言ったら満月状態ってことよね? やっぱり一番輝いてる時ってヤバいわけ?」
光介「ヤツだけが使えるスキル、無尽光を放ってくる! 俺たちはここから出られないからな…避けることはできないぞ!」
コダマ「そりゃ大変だー! それじゃ、もっと力込めないとねー!」
>移動していきながら、コダマは真空刃を放つ!
カグツチの表面がまたはがれ、元の位置に戻ろうとする。
ウィルオウィスプ「イマ ダ!」
>そこを逃さず、九十九針を撃った!
表面の奥へと数多の針が入り込む!
カグツチ「ぬぅっ!?」
>さすがにこれにはカグツチも面食らったようだ。
上部に伸びつつあった2本の角が、動きを止める。
カハク「ウィル、ナイス! 今のはいいわ!」
>そう言いながら、彼女も時を逃さない。
力いっぱいプロミネンスを叩き込んだ!
カグツチ「なんだと!」
>カグツチの表面は、さらに大きくはがれる。
それはまた戻ろうとしていたが、そこに…
光介「ウィルが見出したこのチャンス、無駄にはしない!」
>フィフス・バベルがスピードを上げて突っ込んだ!
戻ろうとする表面組織を殴り飛ばし、むき出しになった部分へアイアンクロウを叩き込む!
カグツチ「ぐぅお!」
光介「よし! いい感じだぞ…この調子で、一気に押し切るっ!」
>フィフス・バベルは、仲魔たちのそばへと戻る。
その頃には、ピシャーチャたちの反対側へ移動し終わっていた。
光介「今まではただ単に殴ったり魔法で攻撃するだけだったけど…今は違う! 破戒の力のおかげで、みんなで連携して攻撃することができる!」
カグツチ「おのれ…!」
光介「原初の光、カグツチよ…俺たちは、お前すらも超えるっ!」
コダマ「ボクらの気分、ノッちゃってるよー★」
カハク「一気に決めてやるわ!」
ウィルオウィスプ「ソレナラ アレシカ ナイ ナ!」
カグツチ「破戒の力を使うか…! そうはさせぬ!」
>カグツチは、突如として強く光る。
あまりに強い光が、フィフス・バベルたちの視界を完全なる白へと変えた!
光介「うぐっ!?」
コダマ「まぶしー??」
カハク「こ、これじゃ見えないわ!」
ウィルオウィスプ「マズイ!」
カグツチ「我が光にて、浄化されよ! 忌まわしき悪魔めェェェェ!!」
>視界を奪うだけの光に紛れ、何かが飛んでくる。
それは的確にフィフス・バベルたちをとらえ、その体を吹き飛ばした!
光介「うおおおおっ!」
>空間の外壁に、体を叩きつけられる!
仲魔たちも散りぢりに飛ばされてしまった。
光介「く、くそ…無尽光、か!」
>光はまだ強く、目を開けることすらできない。
カハク「ちょ、こんなのアリなの!?」
コダマ「全然見えないよー!」
ウィルオウィスプ「ウロタエル ナ! コエト ニオイデ イバショ ワカル ゾ!」
>ウィルオウィスプは叫び、一番近いコダマのそばへと飛んでいく。
ウィルオウィスプ「ダイジョウブ カ?」
コダマ「あー、ウィルだー★ 見つけてくれて、ありがとちゃーん♪」
カグツチ「お前たちのような者に、創世をさせるわけにはいかぬ…このボルテクスはまだ存続させねばならん! 我が意に足るコトワリを持つ者が現れるまで!」
>全てを真っ白にする光の中、カグツチはさらに何かを飛ばしてくる!
フィフス・バベルたちは、外壁とその何かにはさまれて動けなくなった!
光介「な、なんだこれは…! 光、なのか!?」
>思わずフィフス・バベルは、自分を押さえつけているものに手を伸ばす。
しかしそれに触れることはできない。
光介「俺に触れている感触はちゃんとある! なのに、俺がどんなに手を伸ばしても触れない! くそ、目で見ることさえできれば、これが何なのかわかるっていうのに…!」
カグツチ「我は光…! 全てを照らし、影を滅する光なり!」
>カグツチは叫び、フィフス・バベルたちにさらなる光を放つ!
カグツチ「受けよ! 無辺無尽光!!」
光介「なに! 第1形態で放ってくるってのか!」
>カグツチの無辺無尽光!
外壁に押し付けられたフィフス・バベルたちに向けて、カグツチを中心とした光の衝撃波が襲い掛かる!
光介「ぐううぅぅう!!」
カハク「くぅぅ…!」
コダマ「うわーぁぁ?!」
ウィルオウィスプ「ヌグゥゥゥ!」
>カグツチのいる空間全てに、無辺無尽光が襲い掛かった!
それは、リフト前にいたライドウたちにも向かう!
ライドウ「!」
>目を閉じたまま、とっさに霊刀・明星暁を抜き、ピシャーチャの前に出て守る構えを取る!
ライドウの前に光の盾が現れ、無辺無尽光を周囲へと受け流した!
ゴウト「全く何も見えぬが、どうやらライドウに助けられたか! しかし、フィフス・バベルたちは…」
光介「ぐううぅ!」
>体を押しつぶそうとする衝撃波。
それに彼らは何とか耐えている。
カグツチ「むぅぅ…! まだ足りぬか!」
>忌々しそうに言うカグツチだったが、どうやらこれ以上光を保っていられないらしい。
無辺無尽光は、やがてゆっくりと収まってきた。
光介「く…!」
カハク「あぐっ…」
コダマ「うぅー…」
ウィルオウィスプ「ク クソ…!」
>自分たちを押しつぶそうとする光が止む。
だが彼らは、滞空しているのがやっとの状態にまで追い込まれていた。
光介「く、くそ…! 一気にいけるどころか、こっちが一気にピンチになってしまった…! やはり最後の相手、油断はできないってところか…!」
カハク「じょ、冗談じゃないわよ…! なんなの、あの光!」
コダマ「ボク、ぺちゃんこになりそうだったよー」
ウィルオウィスプ「トニカク タイセイヲ タテナオス ゾ!」
>ウィルオウィスプは、そばにいるコダマを連れてカハクのそばへと行く。
ウィルオウィスプ「カハク ダイジョウブ カ?」
カハク「目、閉じてたっていうのにチカチカしてるわ…」
コダマ「ボクもチカチカー★ お星さん飛んでるっぽいよー♪」
ウィルオウィスプ「ハカイノマジン ツカウニハ ミンナ アツマラナイト ムリ。 コースケノ トコ イクゾ!」
カハク「そうね! もう一発食らう前に、さっさと終わらせないと…これはヤバいわ!」
>仲魔たちは、少し離れたフィフス・バベルがいる場所へと飛んでいく。
だが、光によって視力がおかしくなったらしく、いつものようには飛べない。
カハク「く、くそ…目が」
ウィルオウィスプ「シンパイ スルナ! コースケノ ニオイ ウォレ チャント ワカルゾ!」
コダマ「さすがウィルだねー♪」
>コダマは嬉しそうに言いながら、ちらりとウィルオウィスプを見る。
コダマ「…?」
>チカチカする目をこすって、もう一度見た。
コダマ「あれー?」
ウィルオウィスプ「コダマ ドウシタ?」
コダマ「ボク、いよいよ目がおかしくなっちゃったみたいだよー? ウィルの体が、半分見えなくなってるー」
カハク「え?」
ウィルオウィスプ「!」
>ウィルオウィスプはそう言われ、思わず自分の体を見る。
彼もまた視力がおかしくなってはいたが、別の感覚でそれをはっきりと悟った。
ウィルオウィスプ「(ウォレノ ニオイ… ウォレノ オト… カンジラレ ナイゾ!)」
>自分を形作っているもの。
それが大幅になくなっていることに、彼は今やっと気付いたのだ。
カハク「ウィルの体がなくなってるって、どういうことよ?」
コダマ「ボクにもよくわかんないー」
ウィルオウィスプ「ソ ソンナ コトヨリ サッサト コースケノ トコ イクゾ!」
コダマ「そだねー★ 早くカグツチ倒しちゃわないとねー!」
カハク「そうよ、ウィルの体がなくなるとか、そんなことあるわけないじゃない。とにかく今は、カグツチを倒さないと!」
>コダマとカハクは、また気持ちを戦闘へと切り替える。
その様子を見て、ウィルオウィスプはほっと胸をなでおろした。
カグツチ「…かくなる上は…!」
>一方、カグツチはその体を怒りに震わせている。
カグツチ「我が真の姿を、そして真の力をもってお前たちを滅ぼしてくれる!」
>カグツチの体が、一気に分解される!
それは小さなブロック状となり、それが組み合わさることで別の姿へと作りかえられていく!
光介「…こ、ここで第2形態か…!」
>おかしくなった視力で、どうにかカグツチの姿を見るフィフス・バベル。
その目にはぼんやりと、その姿が見えていた。
カグツチ「…さあ、破戒の悪魔たちよ…これで終わりにしよう!」
>カグツチの姿は、球体から老人の顔へと変化する。
鈍く光を放ちながら、自分の正面にいるフィフス・バベルへと叫んだ。
カグツチ「我が光は広大無辺、どのような場所にでも届く…無尽の光に照らされ、滅びるがいい!」
>カグツチは自らの体に光をまとい始める。
光介「く…!」
>フィフス・バベルは、カグツチがさらに無辺無尽光を放つつもりであることを悟る。
だが、その表情は沈んではいない。
光介「カグツチ…わかっているのか! 俺を破戒の者だと言ったが…お前もまた破戒を犯している! 無辺無尽光は第1形態では放てないものだ!」
カグツチ「我が力が破戒による歪みだとでも言うのか…フフ」
>カグツチは笑いながら言う。
カグツチ「そのようなこと、とうの昔に承知しておるわ。だがその反動など、我には届かぬ!」
>カグツチはさらに光を増す。
やっと視力が戻りつつあったフィフス・バベルは、思わず目を閉じた。
光介「くそ…! このままじゃまずい! どうにかしてみんなと合流しないと!」
>薄目を開けて仲魔たちの居場所を確認する。
だがまだ彼からは離れており、破戒の魔刃を使えるような状況ではない。
光介「!」
>その時、彼は2つのことに気付いた。
両手で影を作り、痛む目を無理に開ける。
光介「どういうことだ…? ウィルの体がおかしい! それに…カハクが持っているはずのグングニルが…」
>カハクの手の中にあるグングニル。
それは、元の大きさに戻ってはいなかった。
カハク「どうしてよ…!」
>フィフス・バベルのもとに飛んでいきながら、彼女は悔しそうに言う。
カハク「これが最後の戦いのはずでしょ…! あたしたちを助けてくれたってことは、性悪な槍ってわけじゃないんでしょ、グングニル!」
>手のひらの中にあるグングニルに向かって叫ぶ。
だが、小さな槍はその大きさを変えることはない。
カハク「どうして戻らないのよ! 今こそ最後の戦いでしょ! 別に助けて欲しいってわけじゃないわ…でも、約束は守りなさいよ!」
光介「まさか…カグツチが最後の相手じゃないってことなのか? まだ戦うヤツがいるってことなのか?」
カグツチ「…我が力…! 邪悪なる悪魔を滅するため、我が体を満たせ…!」
>フィフス・バベルたちが驚愕している中、カグツチの光はさらに増す。
光介「く、くそっ!」
>彼は、今やっと思い出したかのように仲魔たちのもとへと飛ぶ。
視力をやられたことで平衡感覚も少しおかしいのか、素早く飛ぶことはできない。
光介「破戒の力はもう、この中で起きてる…充満してると言ってもいい! その反動がウィルの体に出てきてるってことなのかもしれない…!」
ウィルオウィスプ「ハヤク…! ミンナデ カツンダ!」
コダマ「もうちょっとだよー!」
カハク「くそっ、くそおっ!」
光介「だが、とにかく今はみんなのところへ…! そして、破戒の魔刃でケリをつけなければ!」
>フィフス・バベルたちは懸命に飛び、集まろうとする。
その時、声が聞こえた。
カグツチ「我が光は満ちた!」
>まだ、仲魔たちと手が届くような距離にはきていない。
カグツチは彼らの合流を待たずに叫ぶ。
カグツチ「お前たちの存在を消す! 無辺無尽光!!」
>カグツチから、全方位に強烈な光が放たれる。
フィフス・バベルたちは合流する直前まで来ていながら、その全てを光に包まれてしまった……
>3/5話へ続く…
→ト書きの目次へ
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>カグツチ塔、最上階のさらに上…
光介「…」
>この世界の中心である、カグツチの中に彼らはいた。
いくつもの環が重なっており、それはあたかも星を思わせる。
カハク「…」
コダマ「…」
ウィルオウィスプ「…」
ピシャーチャ「…」
>仲魔たちは皆、言葉を失っている。
この世界に光と力をもたらしてきた、太陽のような存在であるカグツチ…それを目の前にして。
ゴウト「これが…カグツチの本体か…」
ライドウ「…」
>ライドウたちも、この場所の様子に驚きを隠しきれない。
輝くばかりと思われたカグツチの中に、自分たちは入ってしまっているのだ。
光介「…」
>フィフス・バベルは、その中心に向けて一歩前に出る。
巨大な球体の空間であるこの場所は、全てが白く光り輝いている。
カグツチ「おお…まさか、お前がここに来ようとは…」
>巨大な空間の中央。
そこに、カグツチはいた。
カグツチ「力の国…ヨスガを興さんと、我の元に来た…今の今までそう思っていたが…」
>カグツチもまた、巨大な球体であった。
フィフス・バベルたちの目をつぶさない程度に光り輝き、彼らに言う。
カグツチ「どうやらそうではない…お前たちは、ヨスガを求めてここに来たわけではないのか…」
光介「…そうだよ、カグツチ」
>フィフス・バベルは、しっかりとした声で言う。
光介「俺たちは、ヨスガでもシジマでもムスビでもない。完全な自由を求めて来たわけでもない」
カグツチ「むう…」
光介「ただ『トモニ』…みんなと共に進むために、ここに来たんだ」
カハク「…」
コダマ「…」
ウィルオウィスプ「…」
>いつもは饒舌な仲魔たちも、この時ばかりは黙り込んでいる。
それだけ、この場は緊張で張り詰めていた。
カグツチ「コトワリに適さぬ存在…それがお前だ、フィフス・バベル。それを分かっていて、我のもとへ来たということか」
光介「そうさ。ここにいるみんなでいろんな場所に行き、いろんなことを感じて…そして乗り越えてここまで来た。残る相手は、お前だけだよ…カグツチ」
カグツチ「…」
>カグツチはしばし黙る。
目などはない球体なのだが、じっとフィフス・バベルを見ているようでもあった。
カグツチ「…この世界に満ちたる破戒…それを引き起こしたのはお前たちだ。その罪がどのようなものか、理解しているのだな?」
光介「罪だとは思っていない…もう、何度も周回する世界は終わる。お前を倒せば、全部終わる」
カグツチ「なるほど…」
>カグツチの光が止む。
今までは光る球体だったカグツチの姿が、よく見えるようになった。
カハク「あ、あれ…」
コダマ「ブロックー?」
ウィルオウィスプ「イッパイ クッツイテル ゾ…?」
>カグツチの表面には、いくつもの線が入っている。
球体にぴたりとブロックがはめ込まれたような姿だった。
カグツチ「…やはり、お前の創世を許すわけにはいかぬ」
>球体から声が響いてくる。
それは厳かにこの空間全体に響く。
カグツチ「ただ共に進むという…そのような不確かな世界を、許容するわけにはいかぬ」
光介「…ああ、わかってるさ」
カグツチ「やはりお前はただの悪魔! 世界の姿を、お前のような者に決めさせるわけにはいかぬ!」
>カグツチの怒声が響く。
仲魔たちは、思わず耳を両手でふさいだ。
カグツチ「お前の心を見た…もし、世界の姿がその心に全て確定していたなら、我も考えたであろう。しかし」
光介「…」
カグツチ「お前の中に、世界を定める決定的なものは何も無い! やはりお前こそが破戒の使者であったか!」
>カグツチは、自らの体から2本の角を突き出させる。
その間を、雷のようなプラズマが走った。
カグツチ「我が怒りの光を受けよ!悪魔よ! そしてその存在を全て抹消されるがよい!」
光介「残念だがカグツチ…俺は破戒の使者じゃない!」
>フィフス・バベルは、背中にある「混沌の翼」を広げる。
光介「俺たちこそが破戒! 俺たちは、使者じゃなくてその王だ!」
カグツチ「笑止! 思い上がりしその翼、我が怒りにて焼き尽くしてくれようぞ!」
>カグツチは戦闘態勢に入る!
それと同時に、周囲の空間が青白く色を変えた!
光介「さあ、最後の戦いだぞ、お前たち!」
カハク「え、ええ…! やってやるわ!」
コダマ「ボク、最後までマイペースでがんばっちゃうぞー★」
ウィルオウィスプ「コレデ キメル ゾ!」
ピシャーチャ「…(ざわざわと心配そうにしている)」
ゴウト「ここで我らが手を出すのは野暮の極み…不測の事態に備え、少し下がるとするか、ライドウ」
ライドウ「…(静かにうなずいた)」
カグツチ「破戒の者たちよ、今ここでその命を終えよ!」
>無尽光カグツチと戦闘開始!
光介「…なんだか、こうやってまともに戦闘をスタートさせるのも久しぶりな気がするね」
コダマ「それは言わない約束だよー。だって、バアル・アバターの時はコースケが勝手に突っ込んじゃったんだからー」
ウィルオウィスプ「チットモ ハンセイ シテ ナイナ」
光介「ごめんごめん。でも、これで最後だ…! みんな、気合い入れて頼むぞっ!」
カハク「ちょ、ちょっと待って!」
>カハクが突然大声をあげた。
手に持っている小さなグングニルを指差す。
カハク「最後の戦いだっていうのに…グングニル、全然大きくならないんだけど!?」
光介「まだカグツチは第1形態だ…ダメージを与えていくと第2形態になる。だから、まだグングニルが大きくならないからって慌てることはないよ」
カハク「そ、そうなの? それだったらいいけど…じゃ、あたしはこれ持ったまま戦うわね」
コダマ「んでさー、作戦はどうするのー?」
光介「カグツチに妙な耐性とかは全くないよ。だから、久しぶりに『いつものように』やっちゃっていい!」
コダマ「うひょー★ んじゃボクはしんくうはーだねー♪」
ウィルオウィスプ「ウォレハ キアイ ツキ ツクモバリ ダナ!」
カハク「あたしはプロミネンスね!」
光介「ああ! 俺はフォッグブレスを限界までかけて、それから気合いを込めてアイアンクロウをぶちかましてやる!」
カグツチ「相談は終わったか…では、行くぞ!」
>カグツチは光を放ち、コダマを狙う!
しかしコダマは避けた!
コダマ「あっぶなー! いきなりなんてびっくりしちゃうぞー★」
光介「だが、お前が避けてくれたことでスキが生まれた! 今のうちに攻めるっ!」
カハク「がっつり燃やしてやるわっ!」
>カハクのプロミネンス!
カグツチの表面がブロック状にはがれる!
カハク「あれ? 弱い…?」
>しかし、はがれた表面はパズルのピースが収まるように元の位置へ戻った。
カハク「…やっぱそんなに甘くないか! 次いっちゃって!」
コダマ「ヒーホー! 今度はボクのしんくうはーだいっ★」
>コダマの真空刃!
またもカグツチの表面がブロック状にはがれ、そして元に戻った。
コダマ「…なんだか、ダメージ与えてる気がしないねー?」
光介「大丈夫だ! 俺たちはここまでずっと強くなり続けてきたんだ…もっと自信を持っていい!」
ウィルオウィスプ「ナラ ウォレ ジシン モッテ キアイ イレルゥゥゥ!!」
>ウィルオウィスプの気合い!
その体に力がみなぎる!
光介「それじゃ俺はフォッグブレスかけさせてもらうぞっ!」
カグツチ「…む」
>フィフス・バベルから吐き出されたフォッグブレスが、カグツチの視界をぼやけさせる!
命中&回避力が下がった!
カグツチ「小癪な!」
>カグツチは大量の炎を呼ぶ!
その全てがフィフス・バベルたちに向けて襲い掛かってきた!
光介「マハラギダイン程度で、俺たちが沈むと思うか!」
カハク「甘いわね!」
コダマ「ドツク名物まんじゅうより甘いぞー★」
ウィルオウィスプ「ドツク ジャナクテ ツクド ダゾ」
>フィフス・バベルたちは余裕をもってそれを避ける!
だが、炎の衝撃で足場が崩れた!
光介「うおっ!?」
>フィフス・バベルは慌てて「混沌の翼」を使い、その場に浮かぶ。
その後で後ろを振り返った。
光介「ピシャーチャ!」
ゴウト「無事だ! 後ろを見ている場合か!」
>ピシャーチャは、ライドウたちに守られてリフト付近に戻っている。
それを確認したフィフス・バベルは仲魔たちに言った。
光介「ここじゃ、ライドウたちも巻き添えになる! カグツチの後ろに回るぞ!」
カハク「りょーかい!」
コダマ「ピシャーチャたち、飛べないもんねー」
ウィルオウィスプ「ワカッタゾ! ダガ…」
>ウィルオウィスプは、カグツチをじっと見ながら旋回している。
ウィルオウィスプ「カグツチ サッキヨリ アカルク ナッテルゾ!」
光介「ああ、なんといってもカグツチはこの世界の光! 自分の都合で勝手に輝きを『進めて』るんだ! 煌天になる前に、第1形態を終わらせたい!」
カハク「コーテンって、月で言ったら満月状態ってことよね? やっぱり一番輝いてる時ってヤバいわけ?」
光介「ヤツだけが使えるスキル、無尽光を放ってくる! 俺たちはここから出られないからな…避けることはできないぞ!」
コダマ「そりゃ大変だー! それじゃ、もっと力込めないとねー!」
>移動していきながら、コダマは真空刃を放つ!
カグツチの表面がまたはがれ、元の位置に戻ろうとする。
ウィルオウィスプ「イマ ダ!」
>そこを逃さず、九十九針を撃った!
表面の奥へと数多の針が入り込む!
カグツチ「ぬぅっ!?」
>さすがにこれにはカグツチも面食らったようだ。
上部に伸びつつあった2本の角が、動きを止める。
カハク「ウィル、ナイス! 今のはいいわ!」
>そう言いながら、彼女も時を逃さない。
力いっぱいプロミネンスを叩き込んだ!
カグツチ「なんだと!」
>カグツチの表面は、さらに大きくはがれる。
それはまた戻ろうとしていたが、そこに…
光介「ウィルが見出したこのチャンス、無駄にはしない!」
>フィフス・バベルがスピードを上げて突っ込んだ!
戻ろうとする表面組織を殴り飛ばし、むき出しになった部分へアイアンクロウを叩き込む!
カグツチ「ぐぅお!」
光介「よし! いい感じだぞ…この調子で、一気に押し切るっ!」
>フィフス・バベルは、仲魔たちのそばへと戻る。
その頃には、ピシャーチャたちの反対側へ移動し終わっていた。
光介「今まではただ単に殴ったり魔法で攻撃するだけだったけど…今は違う! 破戒の力のおかげで、みんなで連携して攻撃することができる!」
カグツチ「おのれ…!」
光介「原初の光、カグツチよ…俺たちは、お前すらも超えるっ!」
コダマ「ボクらの気分、ノッちゃってるよー★」
カハク「一気に決めてやるわ!」
ウィルオウィスプ「ソレナラ アレシカ ナイ ナ!」
カグツチ「破戒の力を使うか…! そうはさせぬ!」
>カグツチは、突如として強く光る。
あまりに強い光が、フィフス・バベルたちの視界を完全なる白へと変えた!
光介「うぐっ!?」
コダマ「まぶしー??」
カハク「こ、これじゃ見えないわ!」
ウィルオウィスプ「マズイ!」
カグツチ「我が光にて、浄化されよ! 忌まわしき悪魔めェェェェ!!」
>視界を奪うだけの光に紛れ、何かが飛んでくる。
それは的確にフィフス・バベルたちをとらえ、その体を吹き飛ばした!
光介「うおおおおっ!」
>空間の外壁に、体を叩きつけられる!
仲魔たちも散りぢりに飛ばされてしまった。
光介「く、くそ…無尽光、か!」
>光はまだ強く、目を開けることすらできない。
カハク「ちょ、こんなのアリなの!?」
コダマ「全然見えないよー!」
ウィルオウィスプ「ウロタエル ナ! コエト ニオイデ イバショ ワカル ゾ!」
>ウィルオウィスプは叫び、一番近いコダマのそばへと飛んでいく。
ウィルオウィスプ「ダイジョウブ カ?」
コダマ「あー、ウィルだー★ 見つけてくれて、ありがとちゃーん♪」
カグツチ「お前たちのような者に、創世をさせるわけにはいかぬ…このボルテクスはまだ存続させねばならん! 我が意に足るコトワリを持つ者が現れるまで!」
>全てを真っ白にする光の中、カグツチはさらに何かを飛ばしてくる!
フィフス・バベルたちは、外壁とその何かにはさまれて動けなくなった!
光介「な、なんだこれは…! 光、なのか!?」
>思わずフィフス・バベルは、自分を押さえつけているものに手を伸ばす。
しかしそれに触れることはできない。
光介「俺に触れている感触はちゃんとある! なのに、俺がどんなに手を伸ばしても触れない! くそ、目で見ることさえできれば、これが何なのかわかるっていうのに…!」
カグツチ「我は光…! 全てを照らし、影を滅する光なり!」
>カグツチは叫び、フィフス・バベルたちにさらなる光を放つ!
カグツチ「受けよ! 無辺無尽光!!」
光介「なに! 第1形態で放ってくるってのか!」
>カグツチの無辺無尽光!
外壁に押し付けられたフィフス・バベルたちに向けて、カグツチを中心とした光の衝撃波が襲い掛かる!
光介「ぐううぅぅう!!」
カハク「くぅぅ…!」
コダマ「うわーぁぁ?!」
ウィルオウィスプ「ヌグゥゥゥ!」
>カグツチのいる空間全てに、無辺無尽光が襲い掛かった!
それは、リフト前にいたライドウたちにも向かう!
ライドウ「!」
>目を閉じたまま、とっさに霊刀・明星暁を抜き、ピシャーチャの前に出て守る構えを取る!
ライドウの前に光の盾が現れ、無辺無尽光を周囲へと受け流した!
ゴウト「全く何も見えぬが、どうやらライドウに助けられたか! しかし、フィフス・バベルたちは…」
光介「ぐううぅ!」
>体を押しつぶそうとする衝撃波。
それに彼らは何とか耐えている。
カグツチ「むぅぅ…! まだ足りぬか!」
>忌々しそうに言うカグツチだったが、どうやらこれ以上光を保っていられないらしい。
無辺無尽光は、やがてゆっくりと収まってきた。
光介「く…!」
カハク「あぐっ…」
コダマ「うぅー…」
ウィルオウィスプ「ク クソ…!」
>自分たちを押しつぶそうとする光が止む。
だが彼らは、滞空しているのがやっとの状態にまで追い込まれていた。
光介「く、くそ…! 一気にいけるどころか、こっちが一気にピンチになってしまった…! やはり最後の相手、油断はできないってところか…!」
カハク「じょ、冗談じゃないわよ…! なんなの、あの光!」
コダマ「ボク、ぺちゃんこになりそうだったよー」
ウィルオウィスプ「トニカク タイセイヲ タテナオス ゾ!」
>ウィルオウィスプは、そばにいるコダマを連れてカハクのそばへと行く。
ウィルオウィスプ「カハク ダイジョウブ カ?」
カハク「目、閉じてたっていうのにチカチカしてるわ…」
コダマ「ボクもチカチカー★ お星さん飛んでるっぽいよー♪」
ウィルオウィスプ「ハカイノマジン ツカウニハ ミンナ アツマラナイト ムリ。 コースケノ トコ イクゾ!」
カハク「そうね! もう一発食らう前に、さっさと終わらせないと…これはヤバいわ!」
>仲魔たちは、少し離れたフィフス・バベルがいる場所へと飛んでいく。
だが、光によって視力がおかしくなったらしく、いつものようには飛べない。
カハク「く、くそ…目が」
ウィルオウィスプ「シンパイ スルナ! コースケノ ニオイ ウォレ チャント ワカルゾ!」
コダマ「さすがウィルだねー♪」
>コダマは嬉しそうに言いながら、ちらりとウィルオウィスプを見る。
コダマ「…?」
>チカチカする目をこすって、もう一度見た。
コダマ「あれー?」
ウィルオウィスプ「コダマ ドウシタ?」
コダマ「ボク、いよいよ目がおかしくなっちゃったみたいだよー? ウィルの体が、半分見えなくなってるー」
カハク「え?」
ウィルオウィスプ「!」
>ウィルオウィスプはそう言われ、思わず自分の体を見る。
彼もまた視力がおかしくなってはいたが、別の感覚でそれをはっきりと悟った。
ウィルオウィスプ「(ウォレノ ニオイ… ウォレノ オト… カンジラレ ナイゾ!)」
>自分を形作っているもの。
それが大幅になくなっていることに、彼は今やっと気付いたのだ。
カハク「ウィルの体がなくなってるって、どういうことよ?」
コダマ「ボクにもよくわかんないー」
ウィルオウィスプ「ソ ソンナ コトヨリ サッサト コースケノ トコ イクゾ!」
コダマ「そだねー★ 早くカグツチ倒しちゃわないとねー!」
カハク「そうよ、ウィルの体がなくなるとか、そんなことあるわけないじゃない。とにかく今は、カグツチを倒さないと!」
>コダマとカハクは、また気持ちを戦闘へと切り替える。
その様子を見て、ウィルオウィスプはほっと胸をなでおろした。
カグツチ「…かくなる上は…!」
>一方、カグツチはその体を怒りに震わせている。
カグツチ「我が真の姿を、そして真の力をもってお前たちを滅ぼしてくれる!」
>カグツチの体が、一気に分解される!
それは小さなブロック状となり、それが組み合わさることで別の姿へと作りかえられていく!
光介「…こ、ここで第2形態か…!」
>おかしくなった視力で、どうにかカグツチの姿を見るフィフス・バベル。
その目にはぼんやりと、その姿が見えていた。
カグツチ「…さあ、破戒の悪魔たちよ…これで終わりにしよう!」
>カグツチの姿は、球体から老人の顔へと変化する。
鈍く光を放ちながら、自分の正面にいるフィフス・バベルへと叫んだ。
カグツチ「我が光は広大無辺、どのような場所にでも届く…無尽の光に照らされ、滅びるがいい!」
>カグツチは自らの体に光をまとい始める。
光介「く…!」
>フィフス・バベルは、カグツチがさらに無辺無尽光を放つつもりであることを悟る。
だが、その表情は沈んではいない。
光介「カグツチ…わかっているのか! 俺を破戒の者だと言ったが…お前もまた破戒を犯している! 無辺無尽光は第1形態では放てないものだ!」
カグツチ「我が力が破戒による歪みだとでも言うのか…フフ」
>カグツチは笑いながら言う。
カグツチ「そのようなこと、とうの昔に承知しておるわ。だがその反動など、我には届かぬ!」
>カグツチはさらに光を増す。
やっと視力が戻りつつあったフィフス・バベルは、思わず目を閉じた。
光介「くそ…! このままじゃまずい! どうにかしてみんなと合流しないと!」
>薄目を開けて仲魔たちの居場所を確認する。
だがまだ彼からは離れており、破戒の魔刃を使えるような状況ではない。
光介「!」
>その時、彼は2つのことに気付いた。
両手で影を作り、痛む目を無理に開ける。
光介「どういうことだ…? ウィルの体がおかしい! それに…カハクが持っているはずのグングニルが…」
>カハクの手の中にあるグングニル。
それは、元の大きさに戻ってはいなかった。
カハク「どうしてよ…!」
>フィフス・バベルのもとに飛んでいきながら、彼女は悔しそうに言う。
カハク「これが最後の戦いのはずでしょ…! あたしたちを助けてくれたってことは、性悪な槍ってわけじゃないんでしょ、グングニル!」
>手のひらの中にあるグングニルに向かって叫ぶ。
だが、小さな槍はその大きさを変えることはない。
カハク「どうして戻らないのよ! 今こそ最後の戦いでしょ! 別に助けて欲しいってわけじゃないわ…でも、約束は守りなさいよ!」
光介「まさか…カグツチが最後の相手じゃないってことなのか? まだ戦うヤツがいるってことなのか?」
カグツチ「…我が力…! 邪悪なる悪魔を滅するため、我が体を満たせ…!」
>フィフス・バベルたちが驚愕している中、カグツチの光はさらに増す。
光介「く、くそっ!」
>彼は、今やっと思い出したかのように仲魔たちのもとへと飛ぶ。
視力をやられたことで平衡感覚も少しおかしいのか、素早く飛ぶことはできない。
光介「破戒の力はもう、この中で起きてる…充満してると言ってもいい! その反動がウィルの体に出てきてるってことなのかもしれない…!」
ウィルオウィスプ「ハヤク…! ミンナデ カツンダ!」
コダマ「もうちょっとだよー!」
カハク「くそっ、くそおっ!」
光介「だが、とにかく今はみんなのところへ…! そして、破戒の魔刃でケリをつけなければ!」
>フィフス・バベルたちは懸命に飛び、集まろうとする。
その時、声が聞こえた。
カグツチ「我が光は満ちた!」
>まだ、仲魔たちと手が届くような距離にはきていない。
カグツチは彼らの合流を待たずに叫ぶ。
カグツチ「お前たちの存在を消す! 無辺無尽光!!」
>カグツチから、全方位に強烈な光が放たれる。
フィフス・バベルたちは合流する直前まで来ていながら、その全てを光に包まれてしまった……
>3/5話へ続く…
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