第9話:イケブクロ~ニヒロ機構:5/5
★5/5話 ニヒロ機構へ★
>イケブクロからターミナルの転送機能を使い、ギンザへ。
>さらにギンザから徒歩で、近くにあるニヒロ機構へ向かった。
ピシャーチャ「…(ざわざわと首をかしげている)」
コダマ「どしたのー? ピシャーチャ」
ピシャーチャ「…(ざわざわと何かを言う)」
コダマ「そうなのー? でも今は、全然違うよねー?」
光介「…どうかしたのかい?」
コダマ「ピシャーチャがねー、前はここにオニたちなんかいなかったって言ってるんだよー」
光介「ああ、そのことか。確かに最初は、堕天使ベリスにすぐに追い出されちゃったもんなあ」
カハク「オニって、確か…マントラ軍の悪魔じゃなかった? イケブクロに入ってすぐ、戦った気がするわ」
ウィルオウィスプ「ソレ ウォレモ ウォモッタ。イバッテル ノニ ヨワッチィ ヤツダッタ!」
光介「そうだな。ここにいる悪魔たちは、マントラ軍に所属してる…ゴズテンノウの指示でここに攻め入って、襲撃成功に喜んでるんだろう」
コダマ「ふーん…」
>エントランスでは、マントラ軍の悪魔たちが騒いでいる。
オニ1「ガハハハハ……何が静寂な世界だ! 何が創世だ! ニヒロ機構など、あっけなく崩壊したぞ! ぐはははは!」
オニ2「ニヒロの中枢部なら、ブッたたいてやったぞ! もうニヒロは終わり。マントラの勝利だ!」
>それは、地下1階でも同じだった。
ヌエ「おお…オマエ、裁判に勝ったヤツだな。やっぱり来たか? 来たのか?」
光介「ええ、まあ…」
ヌエ「でも、一足遅かったな。襲撃だったら、あっけなく終わったぞ。グハグハグハ!」
カハク「…大騒ぎね」
光介「マントラ軍の宿敵だったらしいから、そこをつぶせたのがよほど嬉しいんだろうなあ」
コダマ「ねーねー、ヨモッちゃんが気になること言ってるよー」
光介「ヨモッちゃん?」
>フィフス・バベルが見ると、そこには妖鬼ヨモツイクサがいる。
ヨモツイクサ「……クソッ! 人間の総司令も、巫女も、見あたらねえよう」
カハク「ってことは、ユーコセンセーも無事ってことね」
光介「そうだね。予想通り…というか、わかっていたことであるけど、実際に教えてもらうとやっぱり安心するな」
ヨモツイクサ「……まあいい。お宝は全部頂いたからよう」
コダマ「えっ!? ヨモッちゃん、お宝全部取っちゃったの?」
ウィルオウィスプ「ヨモッチャン…?」
光介「ああ、ヨモツイクサもコダマも、日本に古くから伝わる悪魔だから知り合いなんだろうな」
コダマ「ひどいよー! ボクらの分も残しといてよー」
>コダマはプンプンしている。
光介「コダマ、とりあえず地下2階に行こう。ここの宝箱には、ヨモツイクサが言ったように何も入ってないから」
コダマ「ボク、ヨモッちゃんこらしめるっ! せっかく楽しみにここまで来たのに!」
>コダマは、やる気だ!
光介「落ち着きなって。おいしいものならまた俺が持ってきてやるから…」
コダマ「……ホント?」
カハク「もちろん、コダマの分だけじゃないわよね?」
光介「ああ。シブヤでチョコあげたっきりだから、また何か持ってくるよ。どんなのがいい?」
コダマ「やった♪ んーとねー…」
光介「さて、今のうちに、と…」
>フィフス・バベルは、機嫌を直したコダマを抱きかかえて地下2階へ向かった。
>エレベータを降りると、すぐに中枢フロアへ到着する。
広いフロアであり、中央に球体のような部屋があった。
カハク「おっきいわねー…」
ウィルオウィスプ「ココ チカ2カイ ナノニ ソトカラ ヒカリガ サシコンデ クルゾ」
光介「うん。ニヒロ機構の建物自体が円盤みたいになってて、中央に穴が開いてるんだ。そこから、世界中のマガツヒを吸い込むように集められる…そういうつくりになってるんだよ」
カハク「よくこんなでっかいの、作ったわね…確かにマガツヒはあたしたちにとって大事なものだけど、マントラ軍とは全然違うわ」
光介「そうだな。マントラ軍は人間が遺したビルを本営として使ってたけど、ニヒロは完全に自分たちでこんな施設を作り上げたんだ」
>その時、そばにいた妖鬼オニが話しかけてきた。
エントランスにいたオニとは、別の個体である。
オニ「この先の丸いヤツが、ニヒロ機構本部の心臓、中枢部……のはずだが、随分とあっけねえモンだな……」
カハク「そうね…ここから見てもまだ下がありそうなのに、ここが中枢っていうのもなんだか変な感じ…」
>フロアの下には、闇が広がっている。
どこまで深いのか、ここから知ることはできないほどの深さだ。
オニ「4つのキーラってのが、中枢部のロック解除に必要って情報も、ガセネタだったか?」
ウィルオウィスプ「キーラ?」
光介「ああ。そしてこの情報は、ガセじゃない」
ウィルオウィスプ「ソウナノカ!?」
光介「まあ、それは後で説明するよ」
オニ「……まあ、ニヒロのヤツらは、マントラに恐れをなして逃げ出した、ってのがオチだろう」
カハク「ここまでおっきなものを、自分たちだけで作り上げて…そう簡単に逃げ出したりするのかしら…?」
光介「まずは、この中枢に入ってみよう。俺たちの声は聞こえてないみたいだけど、それにしたってあまりおおっぴらに話せる内容じゃな…」
コダマ「決まったー!!」
ウィルオウィスプ「ウォ?」
コダマ「決まったよ、コースケ!」
>コダマは、小おどりしている!
光介「そっか。で、どんなのが欲しいんだい?」
コダマ「みたらしだんごー!」
カハク「みたらし?」
ウィルオウィスプ「ダンゴ?」
光介「今度は和菓子かあ。よし、次にターミナルで中断した時に持ってくるからね」
コダマ「ぃやったーい!」
>コダマは興奮状態だ!
カハク「コースケ、みたらしだんごってなんなの?」
光介「あれ? カハクは知らないのか?」
カハク「あたし中国の悪魔だもん。和菓子はそんなに詳しくないわ」
光介「これは意外だなあ。みたらし団子っていうのは、木の串に団子を刺して、それを焼いてタレをかけたものだよ」
カハク「ふーん…タレって、何の? 和菓子っていったら、普通はあんこよね?」
光介「しょうゆベースのタレなんだよ。俺も結構すきだな」
カハク「しょうゆベース!? しょうゆってしょっぱいものじゃないの?」
ウィルオウィスプ「ウォレモ ソウ ウォモッテタ」
光介「しょうゆに砂糖とかみりんとか加えて、甘辛くしたタレなんだよ。みんなの分も持ってくるから、食べてみるといい」
カハク「う、うん…」
ウィルオウィスプ「ワカッタ…」
>カハクとウィルオウィスプは、互いの顔を見合わせる。
カハク「甘辛いって、どういう感じなの…? 日本ので辛いっていったら、からしとかわさびとかでしょ? それと甘いのがくっついてるのかしら…」
ウィルオウィスプ「ウォレ ソウゾウモ ツカナイ!」
カハク「日本には、『くさや』っていう殺人的な臭いを放つ食べ物もあるくらいだし、なんだか怖いわね…」
ウィルオウィスプ「デモ コースケ ウマイ イッテルゾ? ウォレ ソノイミデハ チョット アンシン!」
カハク「でもあたしたち、この世界のマガツヒで生きてるから、今までコースケとごはん食べたことないじゃない? コースケの味覚がまともなのか、わかんないわ」
ウィルオウィスプ「ソーイワレレバ ソウカモ…!」
カハク「とにかく、注意して食べないといけないわね…」
ウィルオウィスプ「ソ ソウダナ…」
光介「おーい、お前たち、何をこそこそ話してるんだよ?」
カハク「あ! な、なんでもないわよ。で、どこ行くんだっけ?」
光介「中枢に入るんだよ。中で説明しなきゃいけないこともあるし…」
コダマ「中枢って、こっちー?」
>コダマは、逆方向のドアを指差している。
光介「おいおいコダマ、どこまで興奮しちゃってるんだよ。それは逆…中枢はこの丸いヤツだよ」
コダマ「テヘっ♪ ボクって大ボケさん★」
カハク「コダマのテンション、ハンパないわね…そんなにおいしいのかしら、みたらし団子」
ウィルオウィスプ「ウォレ ナンダカ キタイ デキソウナ キガスル!」
カハク「そうね、いつもはマイペースでのんびり屋さんなのに、あそこまでテンションおかしいってないわよね」
光介「なんだかみんな、今回はいつもと違うなあ…まあいい」
>フィフス・バベルは、中枢とは逆の扉へ近付く。
カハク「コースケ? そっちは中枢じゃないでしょ?」
光介「ああ。でも、一応見せておいてあげるよ。この先がどうなってるのか」
>扉の向こうから、何やら音が聞こえる…
光介「ここを開けると…こうなってるんだ」
>扉の先は、通路が安定しておらず、進めない…
通路を中心として、壁が回転している。
カハク「な、なにこれ…!」
ウィルオウィスプ「グ グールグル! ウォレ メ マワリソウ!」
コダマ「見てると酔っちゃうよ、これー」
光介「…というわけで、進めないんだよ」
>フィフス・バベルは扉を閉めた。
光介「だから、結局俺たちは先に中枢に入らなきゃならないんだ。というわけで…もう入ってもいいかな?」
コダマ「おっけー★」
カハク「わかったわ」
ウィルオウィスプ「ウォレ グルグル イヤ!」
ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずいた)」
光介「よし、それじゃ…」
>中枢の扉の向こうからも、物音が聞こえる。
だがそれは、先ほどの通路から聞こえる音とは違っていた。
光介「開けるぞ」
>フィフス・バベルは、扉を開けた。
カハク「わ…」
>中枢部。
中央にはターミナルのようなものが宙に浮いており、ゆっくりと横に回転している。
ウィルオウィスプ「ア!」
光介「どうした?ウィル」
ウィルオウィスプ「アソコニ ダレカイルゾ!」
>ウィルオウィスプの視線の先。
そこには、ヒジリが立っていた。
ヒジリ「……なんだよ、お前か」
カハク「また出たわね、うさんくさいヤツ!」
光介「おいおい、それはひどいぞ…確かにシブヤからギンザまで行く時に、転送失敗してアマラ経路に落ちちゃったけど、あれは事故なんだから」
カハク「そんなのわかんないわ。コイツはなんだか信用できないのよ!」
ウィルオウィスプ「ウォレモ オナジ イケンダゾ」
光介「まずは落ち着いて。そしてヒジリさんの話を聞こう…あの人だって、ここに遊びに来たわけじゃないんだから」
カハク「…コースケがそう言うんだったら、大人しくしてるわよ…」
ウィルオウィスプ「ウォレモ…」
コダマ「ボクは最初っから、いい子にしてるもーん♪」
ヒジリ「脅かすなよ。待ち伏せされたのかと思ったぜ」
光介「よし、それじゃ…ヒジリさんに話を聞くか」
>フィフス・バベルは、ヒジリの話を聞いた。
ヒジリ「……なんとか無事らしいな」
光介「ええ、まあ」
ヒジリ「この前は、済まなかった。事故らせちまって……」
カハク「あれはアンタがワザと…!」
光介「カハク、証拠がないんだぞ」
カハク「わかったわよ、静かにしてるわ」
ヒジリ「だが結果的には、幸運だった」
コダマ「ラッキーだったのー?」
ヒジリ「まさか、こんなドデカい拠点があるとは……成功してたら、たった1人でここへ放り込んじまう所だった」
カハク「あ」
光介「ん?」
カハク「そっか…じゃあ、いきなり成功しなくてよかったのかも…」
光介「もし、の話だから、どうなってたかはわからないけどね」
コダマ「コースケ1人じゃないよ! ボクたちだっていっしょだい!」
光介「ありがとうな、コダマ。でも今は、ちょっと静かにしとこうか」
コダマ「はーい」
ヒジリ「……だいたいの事情は把握してる」
光介「……」
ヒジリ「マントラ軍……いい時に襲撃してくれたもんだ。おかげで俺も目立たずに来られた」
>そう言った後、ヒジリは意味ありげにフィフス・バベルを見た。
ヒジリ「………………」
光介「どうか、しましたか?」
ヒジリ「なあ、まさかとは思うが……お前がマントラ軍に付いたって話は本当か?」
光介「そのことですか。ええ、本当です」
ヒジリ「……そうか」
ウィルオウィスプ「ミンナガ タノシイ セカイ ツクルタメ ダゾ」
ヒジリ「まあ、お前が決めたことだ。俺がどうこう言う事じゃないことはわかってるよ……」
>そう言った後、ヒジリは少しだけ、フィフス・バベルに近付いた。
ヒジリ「この部屋は、全体がマガツヒを集める装置なんだ」
光介「……」
ヒジリ「外から見える大穴の正体はこいつさ」
カハク「確かコースケも、さっきそんなこと言ってたわね」
光介「ああ。俺は何度もこの世界を周回してるからもう知ってるけど、初めて教わるのはここでなんだ」
カハク「ふーん…ただのうさんくさいヤツでも、ないってわけね」
>ヒジリは下を見る。
ヒジリ「もっとも襲撃で壊されちまって、今はもう死んでる」
ウィルオウィスプ「デモ マダ マワッテルゾ?」
光介「ただ動いてるだけで、マガツヒを集める装置としては機能してないんだろうね」
ヒジリ「だが現に、さっきまでここは大量のマガツヒで満ちてたんだ」
コダマ「へー…この人、そんなことまでわかるんだねー」
ヒジリ「マントラ軍は、寄ってたかってここを叩いた。無理もねえ……傍目にゃ、どっからどう見てもここがニヒロの中枢だ」
カハク「…? なんか、引っかかる言い方ね…?」
ヒジリ「連中、今しがた意気揚々と帰ってったぜ……」
>ヒジリはこちらを見る。
ヒジリ「……氷川にハメられたとも知らずにな」
カハク「え!?」
光介「………」
>フィフス・バベルたちの旅は、第10話へと続く…
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>イケブクロからターミナルの転送機能を使い、ギンザへ。
>さらにギンザから徒歩で、近くにあるニヒロ機構へ向かった。
ピシャーチャ「…(ざわざわと首をかしげている)」
コダマ「どしたのー? ピシャーチャ」
ピシャーチャ「…(ざわざわと何かを言う)」
コダマ「そうなのー? でも今は、全然違うよねー?」
光介「…どうかしたのかい?」
コダマ「ピシャーチャがねー、前はここにオニたちなんかいなかったって言ってるんだよー」
光介「ああ、そのことか。確かに最初は、堕天使ベリスにすぐに追い出されちゃったもんなあ」
カハク「オニって、確か…マントラ軍の悪魔じゃなかった? イケブクロに入ってすぐ、戦った気がするわ」
ウィルオウィスプ「ソレ ウォレモ ウォモッタ。イバッテル ノニ ヨワッチィ ヤツダッタ!」
光介「そうだな。ここにいる悪魔たちは、マントラ軍に所属してる…ゴズテンノウの指示でここに攻め入って、襲撃成功に喜んでるんだろう」
コダマ「ふーん…」
>エントランスでは、マントラ軍の悪魔たちが騒いでいる。
オニ1「ガハハハハ……何が静寂な世界だ! 何が創世だ! ニヒロ機構など、あっけなく崩壊したぞ! ぐはははは!」
オニ2「ニヒロの中枢部なら、ブッたたいてやったぞ! もうニヒロは終わり。マントラの勝利だ!」
>それは、地下1階でも同じだった。
ヌエ「おお…オマエ、裁判に勝ったヤツだな。やっぱり来たか? 来たのか?」
光介「ええ、まあ…」
ヌエ「でも、一足遅かったな。襲撃だったら、あっけなく終わったぞ。グハグハグハ!」
カハク「…大騒ぎね」
光介「マントラ軍の宿敵だったらしいから、そこをつぶせたのがよほど嬉しいんだろうなあ」
コダマ「ねーねー、ヨモッちゃんが気になること言ってるよー」
光介「ヨモッちゃん?」
>フィフス・バベルが見ると、そこには妖鬼ヨモツイクサがいる。
ヨモツイクサ「……クソッ! 人間の総司令も、巫女も、見あたらねえよう」
カハク「ってことは、ユーコセンセーも無事ってことね」
光介「そうだね。予想通り…というか、わかっていたことであるけど、実際に教えてもらうとやっぱり安心するな」
ヨモツイクサ「……まあいい。お宝は全部頂いたからよう」
コダマ「えっ!? ヨモッちゃん、お宝全部取っちゃったの?」
ウィルオウィスプ「ヨモッチャン…?」
光介「ああ、ヨモツイクサもコダマも、日本に古くから伝わる悪魔だから知り合いなんだろうな」
コダマ「ひどいよー! ボクらの分も残しといてよー」
>コダマはプンプンしている。
光介「コダマ、とりあえず地下2階に行こう。ここの宝箱には、ヨモツイクサが言ったように何も入ってないから」
コダマ「ボク、ヨモッちゃんこらしめるっ! せっかく楽しみにここまで来たのに!」
>コダマは、やる気だ!
光介「落ち着きなって。おいしいものならまた俺が持ってきてやるから…」
コダマ「……ホント?」
カハク「もちろん、コダマの分だけじゃないわよね?」
光介「ああ。シブヤでチョコあげたっきりだから、また何か持ってくるよ。どんなのがいい?」
コダマ「やった♪ んーとねー…」
光介「さて、今のうちに、と…」
>フィフス・バベルは、機嫌を直したコダマを抱きかかえて地下2階へ向かった。
>エレベータを降りると、すぐに中枢フロアへ到着する。
広いフロアであり、中央に球体のような部屋があった。
カハク「おっきいわねー…」
ウィルオウィスプ「ココ チカ2カイ ナノニ ソトカラ ヒカリガ サシコンデ クルゾ」
光介「うん。ニヒロ機構の建物自体が円盤みたいになってて、中央に穴が開いてるんだ。そこから、世界中のマガツヒを吸い込むように集められる…そういうつくりになってるんだよ」
カハク「よくこんなでっかいの、作ったわね…確かにマガツヒはあたしたちにとって大事なものだけど、マントラ軍とは全然違うわ」
光介「そうだな。マントラ軍は人間が遺したビルを本営として使ってたけど、ニヒロは完全に自分たちでこんな施設を作り上げたんだ」
>その時、そばにいた妖鬼オニが話しかけてきた。
エントランスにいたオニとは、別の個体である。
オニ「この先の丸いヤツが、ニヒロ機構本部の心臓、中枢部……のはずだが、随分とあっけねえモンだな……」
カハク「そうね…ここから見てもまだ下がありそうなのに、ここが中枢っていうのもなんだか変な感じ…」
>フロアの下には、闇が広がっている。
どこまで深いのか、ここから知ることはできないほどの深さだ。
オニ「4つのキーラってのが、中枢部のロック解除に必要って情報も、ガセネタだったか?」
ウィルオウィスプ「キーラ?」
光介「ああ。そしてこの情報は、ガセじゃない」
ウィルオウィスプ「ソウナノカ!?」
光介「まあ、それは後で説明するよ」
オニ「……まあ、ニヒロのヤツらは、マントラに恐れをなして逃げ出した、ってのがオチだろう」
カハク「ここまでおっきなものを、自分たちだけで作り上げて…そう簡単に逃げ出したりするのかしら…?」
光介「まずは、この中枢に入ってみよう。俺たちの声は聞こえてないみたいだけど、それにしたってあまりおおっぴらに話せる内容じゃな…」
コダマ「決まったー!!」
ウィルオウィスプ「ウォ?」
コダマ「決まったよ、コースケ!」
>コダマは、小おどりしている!
光介「そっか。で、どんなのが欲しいんだい?」
コダマ「みたらしだんごー!」
カハク「みたらし?」
ウィルオウィスプ「ダンゴ?」
光介「今度は和菓子かあ。よし、次にターミナルで中断した時に持ってくるからね」
コダマ「ぃやったーい!」
>コダマは興奮状態だ!
カハク「コースケ、みたらしだんごってなんなの?」
光介「あれ? カハクは知らないのか?」
カハク「あたし中国の悪魔だもん。和菓子はそんなに詳しくないわ」
光介「これは意外だなあ。みたらし団子っていうのは、木の串に団子を刺して、それを焼いてタレをかけたものだよ」
カハク「ふーん…タレって、何の? 和菓子っていったら、普通はあんこよね?」
光介「しょうゆベースのタレなんだよ。俺も結構すきだな」
カハク「しょうゆベース!? しょうゆってしょっぱいものじゃないの?」
ウィルオウィスプ「ウォレモ ソウ ウォモッテタ」
光介「しょうゆに砂糖とかみりんとか加えて、甘辛くしたタレなんだよ。みんなの分も持ってくるから、食べてみるといい」
カハク「う、うん…」
ウィルオウィスプ「ワカッタ…」
>カハクとウィルオウィスプは、互いの顔を見合わせる。
カハク「甘辛いって、どういう感じなの…? 日本ので辛いっていったら、からしとかわさびとかでしょ? それと甘いのがくっついてるのかしら…」
ウィルオウィスプ「ウォレ ソウゾウモ ツカナイ!」
カハク「日本には、『くさや』っていう殺人的な臭いを放つ食べ物もあるくらいだし、なんだか怖いわね…」
ウィルオウィスプ「デモ コースケ ウマイ イッテルゾ? ウォレ ソノイミデハ チョット アンシン!」
カハク「でもあたしたち、この世界のマガツヒで生きてるから、今までコースケとごはん食べたことないじゃない? コースケの味覚がまともなのか、わかんないわ」
ウィルオウィスプ「ソーイワレレバ ソウカモ…!」
カハク「とにかく、注意して食べないといけないわね…」
ウィルオウィスプ「ソ ソウダナ…」
光介「おーい、お前たち、何をこそこそ話してるんだよ?」
カハク「あ! な、なんでもないわよ。で、どこ行くんだっけ?」
光介「中枢に入るんだよ。中で説明しなきゃいけないこともあるし…」
コダマ「中枢って、こっちー?」
>コダマは、逆方向のドアを指差している。
光介「おいおいコダマ、どこまで興奮しちゃってるんだよ。それは逆…中枢はこの丸いヤツだよ」
コダマ「テヘっ♪ ボクって大ボケさん★」
カハク「コダマのテンション、ハンパないわね…そんなにおいしいのかしら、みたらし団子」
ウィルオウィスプ「ウォレ ナンダカ キタイ デキソウナ キガスル!」
カハク「そうね、いつもはマイペースでのんびり屋さんなのに、あそこまでテンションおかしいってないわよね」
光介「なんだかみんな、今回はいつもと違うなあ…まあいい」
>フィフス・バベルは、中枢とは逆の扉へ近付く。
カハク「コースケ? そっちは中枢じゃないでしょ?」
光介「ああ。でも、一応見せておいてあげるよ。この先がどうなってるのか」
>扉の向こうから、何やら音が聞こえる…
光介「ここを開けると…こうなってるんだ」
>扉の先は、通路が安定しておらず、進めない…
通路を中心として、壁が回転している。
カハク「な、なにこれ…!」
ウィルオウィスプ「グ グールグル! ウォレ メ マワリソウ!」
コダマ「見てると酔っちゃうよ、これー」
光介「…というわけで、進めないんだよ」
>フィフス・バベルは扉を閉めた。
光介「だから、結局俺たちは先に中枢に入らなきゃならないんだ。というわけで…もう入ってもいいかな?」
コダマ「おっけー★」
カハク「わかったわ」
ウィルオウィスプ「ウォレ グルグル イヤ!」
ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずいた)」
光介「よし、それじゃ…」
>中枢の扉の向こうからも、物音が聞こえる。
だがそれは、先ほどの通路から聞こえる音とは違っていた。
光介「開けるぞ」
>フィフス・バベルは、扉を開けた。
カハク「わ…」
>中枢部。
中央にはターミナルのようなものが宙に浮いており、ゆっくりと横に回転している。
ウィルオウィスプ「ア!」
光介「どうした?ウィル」
ウィルオウィスプ「アソコニ ダレカイルゾ!」
>ウィルオウィスプの視線の先。
そこには、ヒジリが立っていた。
ヒジリ「……なんだよ、お前か」
カハク「また出たわね、うさんくさいヤツ!」
光介「おいおい、それはひどいぞ…確かにシブヤからギンザまで行く時に、転送失敗してアマラ経路に落ちちゃったけど、あれは事故なんだから」
カハク「そんなのわかんないわ。コイツはなんだか信用できないのよ!」
ウィルオウィスプ「ウォレモ オナジ イケンダゾ」
光介「まずは落ち着いて。そしてヒジリさんの話を聞こう…あの人だって、ここに遊びに来たわけじゃないんだから」
カハク「…コースケがそう言うんだったら、大人しくしてるわよ…」
ウィルオウィスプ「ウォレモ…」
コダマ「ボクは最初っから、いい子にしてるもーん♪」
ヒジリ「脅かすなよ。待ち伏せされたのかと思ったぜ」
光介「よし、それじゃ…ヒジリさんに話を聞くか」
>フィフス・バベルは、ヒジリの話を聞いた。
ヒジリ「……なんとか無事らしいな」
光介「ええ、まあ」
ヒジリ「この前は、済まなかった。事故らせちまって……」
カハク「あれはアンタがワザと…!」
光介「カハク、証拠がないんだぞ」
カハク「わかったわよ、静かにしてるわ」
ヒジリ「だが結果的には、幸運だった」
コダマ「ラッキーだったのー?」
ヒジリ「まさか、こんなドデカい拠点があるとは……成功してたら、たった1人でここへ放り込んじまう所だった」
カハク「あ」
光介「ん?」
カハク「そっか…じゃあ、いきなり成功しなくてよかったのかも…」
光介「もし、の話だから、どうなってたかはわからないけどね」
コダマ「コースケ1人じゃないよ! ボクたちだっていっしょだい!」
光介「ありがとうな、コダマ。でも今は、ちょっと静かにしとこうか」
コダマ「はーい」
ヒジリ「……だいたいの事情は把握してる」
光介「……」
ヒジリ「マントラ軍……いい時に襲撃してくれたもんだ。おかげで俺も目立たずに来られた」
>そう言った後、ヒジリは意味ありげにフィフス・バベルを見た。
ヒジリ「………………」
光介「どうか、しましたか?」
ヒジリ「なあ、まさかとは思うが……お前がマントラ軍に付いたって話は本当か?」
光介「そのことですか。ええ、本当です」
ヒジリ「……そうか」
ウィルオウィスプ「ミンナガ タノシイ セカイ ツクルタメ ダゾ」
ヒジリ「まあ、お前が決めたことだ。俺がどうこう言う事じゃないことはわかってるよ……」
>そう言った後、ヒジリは少しだけ、フィフス・バベルに近付いた。
ヒジリ「この部屋は、全体がマガツヒを集める装置なんだ」
光介「……」
ヒジリ「外から見える大穴の正体はこいつさ」
カハク「確かコースケも、さっきそんなこと言ってたわね」
光介「ああ。俺は何度もこの世界を周回してるからもう知ってるけど、初めて教わるのはここでなんだ」
カハク「ふーん…ただのうさんくさいヤツでも、ないってわけね」
>ヒジリは下を見る。
ヒジリ「もっとも襲撃で壊されちまって、今はもう死んでる」
ウィルオウィスプ「デモ マダ マワッテルゾ?」
光介「ただ動いてるだけで、マガツヒを集める装置としては機能してないんだろうね」
ヒジリ「だが現に、さっきまでここは大量のマガツヒで満ちてたんだ」
コダマ「へー…この人、そんなことまでわかるんだねー」
ヒジリ「マントラ軍は、寄ってたかってここを叩いた。無理もねえ……傍目にゃ、どっからどう見てもここがニヒロの中枢だ」
カハク「…? なんか、引っかかる言い方ね…?」
ヒジリ「連中、今しがた意気揚々と帰ってったぜ……」
>ヒジリはこちらを見る。
ヒジリ「……氷川にハメられたとも知らずにな」
カハク「え!?」
光介「………」
>フィフス・バベルたちの旅は、第10話へと続く…
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