第9話:イケブクロ~ニヒロ機構:5/5 | 魔人の記

第9話:イケブクロ~ニヒロ機構:5/5

★5/5話 ニヒロ機構へ★

>イケブクロからターミナルの転送機能を使い、ギンザへ。

>さらにギンザから徒歩で、近くにあるニヒロ機構へ向かった。

ピシャーチャ「…(ざわざわと首をかしげている)」

コダマ「どしたのー? ピシャーチャ」

ピシャーチャ「…(ざわざわと何かを言う)」

コダマ「そうなのー? でも今は、全然違うよねー?」

光介「…どうかしたのかい?」

コダマ「ピシャーチャがねー、前はここにオニたちなんかいなかったって言ってるんだよー」

光介「ああ、そのことか。確かに最初は、堕天使ベリスにすぐに追い出されちゃったもんなあ」

カハク「オニって、確か…マントラ軍の悪魔じゃなかった? イケブクロに入ってすぐ、戦った気がするわ」

ウィルオウィスプ「ソレ ウォレモ ウォモッタ。イバッテル ノニ ヨワッチィ ヤツダッタ!」

光介「そうだな。ここにいる悪魔たちは、マントラ軍に所属してる…ゴズテンノウの指示でここに攻め入って、襲撃成功に喜んでるんだろう」

コダマ「ふーん…」

>エントランスでは、マントラ軍の悪魔たちが騒いでいる。

オニ1「ガハハハハ……何が静寂な世界だ! 何が創世だ! ニヒロ機構など、あっけなく崩壊したぞ! ぐはははは!」

オニ2「ニヒロの中枢部なら、ブッたたいてやったぞ! もうニヒロは終わり。マントラの勝利だ!」

>それは、地下1階でも同じだった。

ヌエ「おお…オマエ、裁判に勝ったヤツだな。やっぱり来たか? 来たのか?」

光介「ええ、まあ…」

ヌエ「でも、一足遅かったな。襲撃だったら、あっけなく終わったぞ。グハグハグハ!」

カハク「…大騒ぎね」

光介「マントラ軍の宿敵だったらしいから、そこをつぶせたのがよほど嬉しいんだろうなあ」

コダマ「ねーねー、ヨモッちゃんが気になること言ってるよー」

光介「ヨモッちゃん?」

>フィフス・バベルが見ると、そこには妖鬼ヨモツイクサがいる。

ヨモツイクサ「……クソッ! 人間の総司令も、巫女も、見あたらねえよう」

カハク「ってことは、ユーコセンセーも無事ってことね」

光介「そうだね。予想通り…というか、わかっていたことであるけど、実際に教えてもらうとやっぱり安心するな」

ヨモツイクサ「……まあいい。お宝は全部頂いたからよう」

コダマ「えっ!? ヨモッちゃん、お宝全部取っちゃったの?」

ウィルオウィスプ「ヨモッチャン…?」

光介「ああ、ヨモツイクサもコダマも、日本に古くから伝わる悪魔だから知り合いなんだろうな」

コダマ「ひどいよー! ボクらの分も残しといてよー」

>コダマはプンプンしている。

光介「コダマ、とりあえず地下2階に行こう。ここの宝箱には、ヨモツイクサが言ったように何も入ってないから」

コダマ「ボク、ヨモッちゃんこらしめるっ! せっかく楽しみにここまで来たのに!」

>コダマは、やる気だ!

光介「落ち着きなって。おいしいものならまた俺が持ってきてやるから…」

コダマ「……ホント?」

カハク「もちろん、コダマの分だけじゃないわよね?」

光介「ああ。シブヤでチョコあげたっきりだから、また何か持ってくるよ。どんなのがいい?」

コダマ「やった♪ んーとねー…」

光介「さて、今のうちに、と…」

>フィフス・バベルは、機嫌を直したコダマを抱きかかえて地下2階へ向かった。

>エレベータを降りると、すぐに中枢フロアへ到着する。
広いフロアであり、中央に球体のような部屋があった。

カハク「おっきいわねー…」

ウィルオウィスプ「ココ チカ2カイ ナノニ ソトカラ ヒカリガ サシコンデ クルゾ」

光介「うん。ニヒロ機構の建物自体が円盤みたいになってて、中央に穴が開いてるんだ。そこから、世界中のマガツヒを吸い込むように集められる…そういうつくりになってるんだよ」

カハク「よくこんなでっかいの、作ったわね…確かにマガツヒはあたしたちにとって大事なものだけど、マントラ軍とは全然違うわ」

光介「そうだな。マントラ軍は人間が遺したビルを本営として使ってたけど、ニヒロは完全に自分たちでこんな施設を作り上げたんだ」

>その時、そばにいた妖鬼オニが話しかけてきた。
エントランスにいたオニとは、別の個体である。

オニ「この先の丸いヤツが、ニヒロ機構本部の心臓、中枢部……のはずだが、随分とあっけねえモンだな……」

カハク「そうね…ここから見てもまだ下がありそうなのに、ここが中枢っていうのもなんだか変な感じ…」

>フロアの下には、闇が広がっている。
どこまで深いのか、ここから知ることはできないほどの深さだ。

オニ「4つのキーラってのが、中枢部のロック解除に必要って情報も、ガセネタだったか?」

ウィルオウィスプ「キーラ?」

光介「ああ。そしてこの情報は、ガセじゃない」

ウィルオウィスプ「ソウナノカ!?」

光介「まあ、それは後で説明するよ」

オニ「……まあ、ニヒロのヤツらは、マントラに恐れをなして逃げ出した、ってのがオチだろう」

カハク「ここまでおっきなものを、自分たちだけで作り上げて…そう簡単に逃げ出したりするのかしら…?」

光介「まずは、この中枢に入ってみよう。俺たちの声は聞こえてないみたいだけど、それにしたってあまりおおっぴらに話せる内容じゃな…」

コダマ「決まったー!!」

ウィルオウィスプ「ウォ?」

コダマ「決まったよ、コースケ!」

>コダマは、小おどりしている!

光介「そっか。で、どんなのが欲しいんだい?」

コダマ「みたらしだんごー!」

カハク「みたらし?」

ウィルオウィスプ「ダンゴ?」

光介「今度は和菓子かあ。よし、次にターミナルで中断した時に持ってくるからね」

コダマ「ぃやったーい!」

>コダマは興奮状態だ!

カハク「コースケ、みたらしだんごってなんなの?」

光介「あれ? カハクは知らないのか?」

カハク「あたし中国の悪魔だもん。和菓子はそんなに詳しくないわ」

光介「これは意外だなあ。みたらし団子っていうのは、木の串に団子を刺して、それを焼いてタレをかけたものだよ」

カハク「ふーん…タレって、何の? 和菓子っていったら、普通はあんこよね?」

光介「しょうゆベースのタレなんだよ。俺も結構すきだな」

カハク「しょうゆベース!? しょうゆってしょっぱいものじゃないの?」

ウィルオウィスプ「ウォレモ ソウ ウォモッテタ」

光介「しょうゆに砂糖とかみりんとか加えて、甘辛くしたタレなんだよ。みんなの分も持ってくるから、食べてみるといい」

カハク「う、うん…」

ウィルオウィスプ「ワカッタ…」

>カハクとウィルオウィスプは、互いの顔を見合わせる。

カハク「甘辛いって、どういう感じなの…? 日本ので辛いっていったら、からしとかわさびとかでしょ? それと甘いのがくっついてるのかしら…」

ウィルオウィスプ「ウォレ ソウゾウモ ツカナイ!」

カハク「日本には、『くさや』っていう殺人的な臭いを放つ食べ物もあるくらいだし、なんだか怖いわね…」

ウィルオウィスプ「デモ コースケ ウマイ イッテルゾ? ウォレ ソノイミデハ チョット アンシン!」

カハク「でもあたしたち、この世界のマガツヒで生きてるから、今までコースケとごはん食べたことないじゃない? コースケの味覚がまともなのか、わかんないわ」

ウィルオウィスプ「ソーイワレレバ ソウカモ…!」

カハク「とにかく、注意して食べないといけないわね…」

ウィルオウィスプ「ソ ソウダナ…」

光介「おーい、お前たち、何をこそこそ話してるんだよ?」

カハク「あ! な、なんでもないわよ。で、どこ行くんだっけ?」

光介「中枢に入るんだよ。中で説明しなきゃいけないこともあるし…」

コダマ「中枢って、こっちー?」

>コダマは、逆方向のドアを指差している。

光介「おいおいコダマ、どこまで興奮しちゃってるんだよ。それは逆…中枢はこの丸いヤツだよ」

コダマ「テヘっ♪ ボクって大ボケさん★」

カハク「コダマのテンション、ハンパないわね…そんなにおいしいのかしら、みたらし団子」

ウィルオウィスプ「ウォレ ナンダカ キタイ デキソウナ キガスル!」

カハク「そうね、いつもはマイペースでのんびり屋さんなのに、あそこまでテンションおかしいってないわよね」

光介「なんだかみんな、今回はいつもと違うなあ…まあいい」

>フィフス・バベルは、中枢とは逆の扉へ近付く。

カハク「コースケ? そっちは中枢じゃないでしょ?」

光介「ああ。でも、一応見せておいてあげるよ。この先がどうなってるのか」

>扉の向こうから、何やら音が聞こえる…

光介「ここを開けると…こうなってるんだ」

>扉の先は、通路が安定しておらず、進めない…
通路を中心として、壁が回転している。

カハク「な、なにこれ…!」

ウィルオウィスプ「グ グールグル! ウォレ メ マワリソウ!」

コダマ「見てると酔っちゃうよ、これー」

光介「…というわけで、進めないんだよ」

>フィフス・バベルは扉を閉めた。

光介「だから、結局俺たちは先に中枢に入らなきゃならないんだ。というわけで…もう入ってもいいかな?」

コダマ「おっけー★」

カハク「わかったわ」

ウィルオウィスプ「ウォレ グルグル イヤ!」

ピシャーチャ「…(ざわざわとうなずいた)」

光介「よし、それじゃ…」

>中枢の扉の向こうからも、物音が聞こえる。
だがそれは、先ほどの通路から聞こえる音とは違っていた。

光介「開けるぞ」

>フィフス・バベルは、扉を開けた。

カハク「わ…」

>中枢部。
中央にはターミナルのようなものが宙に浮いており、ゆっくりと横に回転している。

ウィルオウィスプ「ア!」

光介「どうした?ウィル」

ウィルオウィスプ「アソコニ ダレカイルゾ!」

>ウィルオウィスプの視線の先。
そこには、ヒジリが立っていた。

ヒジリ「……なんだよ、お前か」

カハク「また出たわね、うさんくさいヤツ!」

光介「おいおい、それはひどいぞ…確かにシブヤからギンザまで行く時に、転送失敗してアマラ経路に落ちちゃったけど、あれは事故なんだから」

カハク「そんなのわかんないわ。コイツはなんだか信用できないのよ!」

ウィルオウィスプ「ウォレモ オナジ イケンダゾ」

光介「まずは落ち着いて。そしてヒジリさんの話を聞こう…あの人だって、ここに遊びに来たわけじゃないんだから」

カハク「…コースケがそう言うんだったら、大人しくしてるわよ…」

ウィルオウィスプ「ウォレモ…」

コダマ「ボクは最初っから、いい子にしてるもーん♪」

ヒジリ「脅かすなよ。待ち伏せされたのかと思ったぜ」

光介「よし、それじゃ…ヒジリさんに話を聞くか」

>フィフス・バベルは、ヒジリの話を聞いた。

ヒジリ「……なんとか無事らしいな」

光介「ええ、まあ」

ヒジリ「この前は、済まなかった。事故らせちまって……」

カハク「あれはアンタがワザと…!」

光介「カハク、証拠がないんだぞ」

カハク「わかったわよ、静かにしてるわ」

ヒジリ「だが結果的には、幸運だった」

コダマ「ラッキーだったのー?」

ヒジリ「まさか、こんなドデカい拠点があるとは……成功してたら、たった1人でここへ放り込んじまう所だった」

カハク「あ」

光介「ん?」

カハク「そっか…じゃあ、いきなり成功しなくてよかったのかも…」

光介「もし、の話だから、どうなってたかはわからないけどね」

コダマ「コースケ1人じゃないよ! ボクたちだっていっしょだい!」

光介「ありがとうな、コダマ。でも今は、ちょっと静かにしとこうか」

コダマ「はーい」

ヒジリ「……だいたいの事情は把握してる」

光介「……」

ヒジリ「マントラ軍……いい時に襲撃してくれたもんだ。おかげで俺も目立たずに来られた」

>そう言った後、ヒジリは意味ありげにフィフス・バベルを見た。

ヒジリ「………………」

光介「どうか、しましたか?」

ヒジリ「なあ、まさかとは思うが……お前がマントラ軍に付いたって話は本当か?」

光介「そのことですか。ええ、本当です」

ヒジリ「……そうか」

ウィルオウィスプ「ミンナガ タノシイ セカイ ツクルタメ ダゾ」

ヒジリ「まあ、お前が決めたことだ。俺がどうこう言う事じゃないことはわかってるよ……」

>そう言った後、ヒジリは少しだけ、フィフス・バベルに近付いた。

ヒジリ「この部屋は、全体がマガツヒを集める装置なんだ」

光介「……」

ヒジリ「外から見える大穴の正体はこいつさ」

カハク「確かコースケも、さっきそんなこと言ってたわね」

光介「ああ。俺は何度もこの世界を周回してるからもう知ってるけど、初めて教わるのはここでなんだ」

カハク「ふーん…ただのうさんくさいヤツでも、ないってわけね」

>ヒジリは下を見る。

ヒジリ「もっとも襲撃で壊されちまって、今はもう死んでる」

ウィルオウィスプ「デモ マダ マワッテルゾ?」

光介「ただ動いてるだけで、マガツヒを集める装置としては機能してないんだろうね」

ヒジリ「だが現に、さっきまでここは大量のマガツヒで満ちてたんだ」

コダマ「へー…この人、そんなことまでわかるんだねー」

ヒジリ「マントラ軍は、寄ってたかってここを叩いた。無理もねえ……傍目にゃ、どっからどう見てもここがニヒロの中枢だ」

カハク「…? なんか、引っかかる言い方ね…?」

ヒジリ「連中、今しがた意気揚々と帰ってったぜ……」

>ヒジリはこちらを見る。

ヒジリ「……氷川にハメられたとも知らずにな」

カハク「え!?」

光介「………」

>フィフス・バベルたちの旅は、第10話へと続く…


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