バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) | 中迫剛オフィシャルブログ「語れり尽くせり。」Powered by Ameba

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(無知がもたらす予期せぬ奇跡)とは一体何なのか?

《簡単にあらすじ》
かつて『バードマン』というヒーロー映画で一躍ハリウッドスターになった主人公リーガン
しかし続編を降板してからはヒット作には恵まれず
「かつてバードマンを演じた俳優」として落ちぶれて60代になり
そんな落ちぶれ俳優から脱却しようと、無謀にも芝居の本場ブロードウェイに進出する
もちろん業界関係者は失笑



やっぱり劇中"Crazy"は流れませんでしたね



いまでこそヒーロー映画に出演すれば一躍スターダムですが
昔は二流役者のレッテルを貼られた
それは日本でも同じです


劇中、N.Yタイムズの演劇批評家ダビサの台詞はほんと痛烈で痛快でした

この台詞を聞いて胸が痛くなる沢山の草鞋を履いた役者達がいるのではないでしょうか?

それにすら気づかない鈍感な人に
あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)が起こるんでしょうかね?

だとしたら、ほんと世知辛い世の中です



他にも本作には語りたくなる要素が沢山あります

劇中ほぼワンカットに見えるように作られた撮影技術もスゴいです

ですが、僕的にはこの映画が一番絶妙だと思ったのはキャスティングです

主人公リーガンを演じるマイケル・キートンは昔、ティム・バートン監督のバットマンを演じるも、後に続編を降板
それ以降はこれといったヒット作に恵まれずに60代に突入した
まさにリーガンそのもの

散々本命視された挙げ句オスカーを獲れなかったことも
この映画の結末のようで、ほんと皮肉すぎます


身勝手で我儘なブロードウェイ俳優マイクを演じるエドワード・ノートンは
かつてマーベルヒーローの「インクレディブル・ハルク」で主演を務めたけど続編を降板
その後アベンジャーズが大ヒット
スター俳優になり損ね
演技派俳優にはヒーロー映画は必要ないと負け惜しみじみたことを語った


主人公の娘、サムを演じるエマ・ストーンは、快進撃を続けるマーベル作品でいまひとつ波に乗れなかった
「アメージング・スパイダーマン」でヒロインを演じた女優

2でいなくなるとはいえ続編の3は結局頓挫

その後スパイダーマンの再リブートが決定

アメスパはなかったことのように...


そんなヒーロー映画に因縁のある役者達が出演してることに、なにか意地悪なキャスティングを感じます(笑)



そしてここからはネタバレになります

この映画の主人公リーガンは
常に自分にとって都合のよい妄想と
それをダメ出しするのは決して自分自信ではなく、バードマンの幻聴
その二面性で成り立っています


そして、多くの人が語っているように、僕もラストの病室はすでに亡くなっているんだと思いました


最後の最期、死後の世界で遂に幻聴バードマンを葬り去り、自分に都合のよい妄想だけで羽ばたいていく

現実世界は、、、おそらく質は違えど失笑のままでしょう
世間の評判、評価に追い込まれ舞台で自殺した憐れな俳優
そうやって人々の記憶の片隅に残り
彼を思い出すときに開かれるページは
ブリーフ一丁でタイムズスクエアを歩く姿

(無知がもたらす予期せぬ奇跡)とは
決して素晴らしい奇跡なんかではない

哀しいけど、これが現実

そういう映画だったのかなと思いました

ただ
人によって捉え方の変わる映画であることは間違いないです


そして、決して万人受けする作品ではないとも思います

でもそれは一見、主人公が俳優ってことで感情移入しづらいだけで、主人公リーガンは決して他人ではありません

普段、自分に都合のよいばかり考えてませんか?

過去の自分を否定し、今をなんとかしようとしてませんか?

自分で気づいていることから逃避して、他者の言葉にしていませんか?

自分には才能がある、仕事ができると勘違いしてませんか?

最初は表現者の苦悩だけを描いた作品だと思っていましたが、決してそうではないことに気づきました

これはは身近にあるお話なのです


ちなみに「セッション」よりも遥かにドラムが印象的な映画でした