1992年の正月が明けて3日経った。
真帆は自分がもう30歳だと信じられなかった。
娘の絵里奈も3歳で、今度4歳になるので真帆の母親がいっぱい有名私立幼稚園のパンフレットを集めていた。
昔自分がこういう人生を送るとは思えなかった。
若い時のあの、いつもギリギリの、おどおどとした気持ちは何だったんだろう・・・と不思議な気持ちがした。
お母さんが料亭から特注したおせちの残りをTAKAが美味しそうに食べていた。
お母さんが「ほら、真帆、二人目の子供が出来るように!」と数の子をいっぱい真帆のお取り皿に取った。
遠い昔10代の時KENちゃんの実家で正月に数の子を恥ずかしそうに食べた事を急に思い出した。
あの時は本当にKENちゃんをハメて子供を作ってもいいから、KENちゃんのお嫁さんになりたかった。
KENちゃんの実家の和風の大きな家が貧しく育った真帆には別の世界の様に思えた。
真帆はふと自分の夫を見た。
TAKAは高校生の時愛したままのルックスで
少し老けたおじさんになって
そこに座っていた。
この人は私に幸せをくれた。
真帆の目から涙がこぼれた。
TAKAが心配そうに「な・・何で泣くんだ?子供二人目とか気にしなくていいいんだぞ・・。プレッシャーを与えたくないよ・・・。」と言い、お母さんのほうをチラっと見た。
「違うの、嬉しくて・・。幸せだなあ・・と思って泣いてるの。」
お母さんが幸せそうな顔をして真帆を見た。
「あんたは良くやったよ。真帆、本当に良くやった。男運がなくて底辺で生きていたあたしと違うよ。TAKAちゃんに感謝しなさいよ。」
お母さんの目にも涙が光っていた。