正月にKENちゃんは実家に帰った。
若い時と違ってそんなに両親に歓迎されているような気はしなかった。
6歳の息子がKENちゃんをじっと見た。
昔19歳の真帆がKENちゃんの実家で正月におせちの「子孫繁栄」の数の子を恥ずかしそうに食べていた事を思い出した。
昔「子供が出来たら結婚する。」と真帆に言ったけれど、結局真帆が産んだのはTAKAの子供だった。
自分の息子を産んだ妻は自殺してしまった。
ずっと畳替えしていない黄ばんだ畳を見た。
バブルがはじけてKENちゃんのお父さんの自営業も怪しくなった。
KENちゃんが継いだらもうさらに潰れそうな気がした。
今更音楽をやめて何をやったらいいか分からなかった。
息子がいるのに無責任だとは分かっていた。
「お父さんの仕事を継いで・・・再婚してよ・・。」
お母さんがため息交じりにKENちゃんに言った。
「どうせもう音楽じゃ食べていけないんだろう?」
そう言った後KENちゃんのお母さんが怒った顔をした。
工務店をついで
また結婚するのか・・・
それはKENちゃんにとっては恐怖の提案だった。