真帆はミシンの音を聞きながら昨日のお母さんとの会話を思い出した。
夫にも、仕事にも、金にも恵まれずに
ただ娘と二人で男気もなく生きてきた
お母さんの人生を思って
真帆は息がつまりそうになった。
「みんなそうやってただ生きているんだよ。仕事がキツイなら辞めてもいいし、お前には選択肢があるんだよ。選択肢がない女の気持ちを考えたことがあるかい?」
真帆がうなだれた。
「離婚する時ラクだからハワイのホテルの名義はTAKAちゃんだけのにしたら?って言ったそうだね。TAKAちゃんが悲しそうな顔で教えてくれたよ。」
お母さんが怒った顔で言った。
「旦那さんが奥さんが死にそうだから一所懸命喜ばせようとしてたんだよ。なし崩しにその言い草って・・アンタ。」
「ごめん。」
「あんたは側にある幸せを見ないでドブに一人で突っ込んで行くようなところがあるからね。」
ドブがすきなんじゃないかなぁ・・・と真帆は心の中で苦笑いした。
「何もない女なんかいっぱいいるんだよ。あんたはTAKAちゃんがいつまでも紐ベース弾きだと思って邪険にするけど、もう違うんだよ。」