「君は何だかんだと沢田隆章の奥さんが好きなんだろう?」
中村さんが茶化すように言った。
しばらくKENちゃんが考え込んだような表情をした。
「俺の離婚した嫁さんって自殺しちゃったんです。何かそういう心に暗いものがある女が好きなのかな・・・?嫁さんの両親が子供の面倒を見てるんだけど、高齢でもう具合悪いから俺の実家で面倒見てくれないか?って嫁さんのお父さんから最近連絡があって。」
中村さんがちょっとびっくりした顔をした。
「子供の事好きだからすごく嬉しくて。俺、全然金ないけど息子がまた自分の人生に帰ってくるんだっていうだけで嬉しくて・・・・。」
「何か俺の人生にはギターしかないから、ちょっと羨ましいなぁ。」
中村さんがため息をつきながら言った。
「真帆が俺の息子の母親になるのは嫌だ。」
「何で?」
「無理だって分かるよ。本当に家庭的な女じゃない。料理は最悪だし。あれはTAKAの仲間でアーティストだよ。普通の女を嫁さんにしたい。」
「TVの豪邸訪問ですごい料理を見せていたよ。」
「真帆はおかあさんと同居で、おかあさんが料理上手いって言ってた。それ、おかあさんの作品だよ。インチキだなぁ。」
KENちゃんが笑った。
「あと俺と別れてTAKAと同棲し始めた後、LSDのODで死にかけて、俺の死んだ嫁さんの叔父さんの医院にTAKAと運んだこともあるよ。その前はTAKAの母親が作って蒸発したレディースローンの借金を、どっかの高級クラブの裏売春の仕事で返してあげていたりした。まあ、結婚してその100倍くらいはTAKAがまた真帆に献上した訳だから、無駄に貢いだわけでもないんだろうけど・・。」
「なんだかんだと夫婦仲はいいんじゃねえか?かなりバカバカしいけどまあ愛は感じるなぁ。」
「でも真帆は一番好きだったのは俺で、覚せい剤中毒になってKENちゃんをがっかりさせてごめんなさい・・とか、本当にKENちゃんと結婚したかったとか、KENちゃんの赤ちゃんを産みたかったとか28にもなって言うんだよ。」
「市井の人だったらやっていけないから、そこで結婚にとどまるんだけど、あの人ってすんごい売れてる少女漫画家だよね。だから思い切って離婚は可能だけどね。」
「いや、俺パス。だってTAKAの娘なんか俺、愛せないもん。」
「沢田隆章の娘って、TVで見たけどお父さんにそっくりだった。あのプロデューサーってなんか不気味に美形だよね。」
「色々変な話があってもTAKAには真帆は全然OKみたい。でも俺はもう普通の女がいいよ。」
「じゃあ、会うのやめろよ。」
「そうなんだけど、一緒にいると何か昔を思い出して。真帆は付き合ったときは10代でフツーの仕事をしていた。ドラッキーでもなかった。若いからあの頃は暇さえあれば二人でやってた・・。なんか懐かしくなって情も多少移ってきて・・。」
「駄目だよ。別れなきゃ。」