クリスマスの午前中にKENちゃんは中村さんとバンドの打ち合わせの為に中村さんのアパートに向かった。
「今日はクリスマスだね。」と中村さんが切り出した。
「そうみたいですね。」KENちゃんがやる気なく答えた。
鳥取の田舎から15年以上前に上京してきた中村さんはずっと同じアパートに住み続け仙人のようだった。
「クリスマスを一緒に過ごす女の子はいるの?」中村さんが聞いた。
「いませんよ。午後からバイトです。」
「青木君は他のメンバーよりも若いんだから・・・、一番いい男なんだから、頑張りなさい。」
「頑張っても不倫相手しかいませんよ。」KENちゃんがやる気なく笑った。
「何々?それ、どういうこと?教えて。」中村さんが笑いながら聞いた。
KENちゃんは日に日に中村さんが好きになっていった。
純粋で飾らない人でアーティストっぽいと思った。気難しい面にももう慣れた。
「プロデューサーの沢田隆章の奥さん抱いてるだけですよ。彼女なんかいませんよ。」
「あ~、沢田さんってそういえば君が昔いたバンドのベースだったよね?」
「TAKAは昔、苗字が小室だったんだけど、少女漫画描いてる奥さんの婿養子になって苗字が変わったんだ。その奥さんと俺が昔3年同棲してて・・また女のほうから連絡とって来て・・・ずるずる・・と。」
「あの夫婦ちょっと前にTVで豪邸訪問の番組に出てたよ。青木君見た?」中村さんが苦笑しながら言った。
「俺、TV見ないから見てない。知らない。」
「訳わかんない豪邸に凄い車がガレージに停まっていたよ。奥さんかなり可愛いね。あと沢田隆章、可愛い子供とか自慢してた。あ~、女の子って怖いね。ああいう子が旦那さんを裏切るんだ。くわばら。くわばら。」
中村さんが面白そうに笑った。
「でも・・最近なんか、俺には重くなってきて・・。」KENちゃんがぼやいた。