碧いラフレシアの花 その618 KENちゃんの旅立ち | 連載性春小説  碧いラフレシアの花

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好きじゃない人と天国へ行くよりは


好きな人と地獄に行きたい


ある女の子の80年代


アメリカツアーの前日は日が昇る前に起きた。


マネージャーが経費を浮かす為に直行便を使わなかったので、アメリカに着くまでに長時間かかった。





考えて見れば、KENちゃんは31歳まで海外に出たことはなかった。


旅行も真帆と温泉に行ったりした位だった。




乱人君が、TAKAがバンドを解散して事務所を辞めた事や、個人事務所を設立して2代目ボーカル真琴をピンで歌わせてプロデューサーとしてぼろ儲けしている事を教えてくれた。





あの時KENちゃんに辞めてもらわないと今の俺はなかった・・・というTAKAの言い草を思い出してKENちゃんは苦笑した。



美穂はやはり元ソープ嬢で、枕芸で社長の愛人をやって、社長にプロモーションして貰って大成したという噂は本当らしい。





そう考えるとソープ嬢の美穂に本気で嫉妬して

刃物をふりまわして

事件を起こして

恥じるように首を吊って死んだ俺の妻の人生は何だったんだろう・・・?



飛行機が離陸した時に

碧い空に早朝の太陽が眩しく輝いていた。





遠い昔

TAKAのバンドにオーディションに出かけた事を思い出した。



あの時はTAKAがこうなるとは思わなかったし

自分もこうなるとは思わなかった。




「KENちゃん、あの時首になってよかったんだよ。どうせTAKAはもう一生バンドはやらないんだから。」

乱人君の言葉をKENちゃんは思い出した。




機内で酒を飲みながらKENちゃんは昔赤いポルシェの中でディープキスをしていた真帆とTAKAの夫婦を思い出した。




真帆だって高校生の時TAKAがこうなるとは思わなかったろうし

真帆も真帆自身が今こうなっているとは思わなかっただろう。




いまだにコンビニで不気味な美しさを発していたTAKAをKENちゃんは思い出した。



TAKAと絡むと人生が変わるらしい・・・。














2週間後にKENちゃんのバンドのクラブツアーバスが乾燥した平原の道の真ん中で


痩せた黒い犬を轢いた。




暑い夏の日だった。



KENちゃんが心配そうに窓を開けて犬を見た。

誰もそんなのは気にかけずに

寝ている奴がほとんどだった。



そのうち犬が後方に小さく消えて

バスは何もなかったように走っていた。





あのまま砂漠の真ん中で餓死するのと

車で轢かれるのと


どっちも同じような気がした。






それから急に真帆が19歳の時お財布を開いて買ってくれた

温泉マーク布巾と踏み竹を思い出した。


あの時真帆は仕事も金もなかったが

本当にいい子だった。





本当に愛していた。