ライブが始まって真帆は本当に久しぶりにKENちゃんを見た。
何だか違う人を見ているようだった。
もともと事務所の社長と社長の愛人の美穂と、美穂を現在プロデュースしてぼろ儲けしているTAKAが拝金主義の3乗で、KENちゃんを追いやったのがKENちゃんの脱退劇だった。
美穂が不倫していたKENちゃんの奥さんが狂って美穂の腹を刺したのも、社長の逆鱗に触れてしまった。
真帆は自分が高校生くらいの時のKENちゃんの記憶が全くなかった。
TAKAに夢中で本当に昔のKENちゃんというのは真帆の記憶の中には存在していなかった。
そういえばKENちゃんが首になってアル中で入院した後、お見舞いに行ったのは乱人君としんちゃんだけという、しんちゃんの話しを思い出した。
解雇じゃなくて休業にしてあげようと言ったのはマネージャーの田畑さんと乱人君だけだった。
もう今のTAKAのバンドのマネージャーさんは違う人だし、TAKAの話ではどうやらゲイで2代目ボーカルの真琴君とデキてるらしい。
TAKAはもうバンドをやる気はないし、気がついたら長者番付に載る位にプロデューサー、コンポーザーとして成功していた。
昔売れないTAKAに5万円貸して、返ってくるんだろうか、このままTAKAに捨てられるんじゃないか?と悩んだ、駄目10代グルーピーの時代の自分を思い出した。
メジャデビュー記念ギグの次の日に、ガムのようにTAKAに捨てられた真帆を拾って、ちゃんと愛してくれたのがKENちゃんだった。
あれから橋の下の川の流れの様に何もかもが変わって、真帆にはもうどうしようもなくなった。
もう真帆にはどうにもならなかった。
時の流れの前には真帆は無力だった。