それからしばらくして冬の初めに
KENちゃんは業界のパーティに出席する真帆とTAKAを道端で偶然見かけた。
二人に声をかけようとしたけれど
二人で赤いポルシェの中でキスをしていた。
だからKENちゃんは声をかけなかった。
街頭の明かりがぼんやりと赤いポルシェに反射していた。
二人のキスはしつこかった。
これ以上をやらかすのではないかと直視できないくらいだった。
暗い冬の夜空から粉雪が降ってきた。
奥さんが自殺してからKENちゃんの酒量がまた増えた。
昔TAKAと真帆の結婚式にKENちゃんと奥さんが二人で出席した時
スーツ代が1万5千円以下な事で夫婦喧嘩をした。
あの頃奥さんはマンションの頭金を必死に貯めていた。
死者に貯蓄なんか必要だったんだろうか・・・?
もうすぐ新春映画の第2弾が公開される真帆にとって1万5千円なんてもうどうでもいいのだろう。
TAKAの30歳に誕生日に本気で真帆が赤いポルシェをギフトとしてTAKAに渡したと聞いたとき、KENちゃんはひきつった。
KENちゃんが奥さんに真帆とTAKAへの結婚式の祝い金が少なすぎて恥ずかしいと文句を言った時
奥さんが鼻で笑いながら
「うるさいわね。真帆は金があるからいいんだよ。あんな棺桶に片足突っ込んでるような夫婦、おめでたくなんかないでしょ?二人の葬式の時にはいっぱい包んであげるけどね。」
と言った。
今では真帆夫婦が
少なくとも奥さんよりは
長生きした。
誰も
KENちゃんも
奥さんの葬式に
金を包まなかった。
その頃からKENちゃんが酒の飲みすぎで
歌詞を頻繁にド忘れするようになった。
KENちゃんがアル中になった。
昔ポン中になった真帆に「結婚したり自分の子供を産む人とは思えない。」と言ってKENちゃんは去っていったのに、気がついたらKENちゃんが一番最悪な人生を歩んでいた。
自殺した奥さんが
結婚したり
自分の子供を産む人だった。