車が真帆のマンションの前に着いた時、真帆が口を手で押さえながら急いで車から飛び出した。
そのままアスファルトの上に真帆が吐いた。
橘君はげんなりした。
義務的に「大丈夫ですか?」と言って真帆を真帆の部屋まで送った。
真帆が鍵を開けた時点で真帆がふらっとして倒れた。
真帆が玄関のたたきの所に落ちる前に橘君が真帆を自分の体で受け止めた。
何か変なクスリの当たりで倒れたのかと橘君が不安になった。
そのまま橘君が真帆を引きずるように運び、リビングのソファーに寝かせた。
すぐに真帆が目を開けた。
「あー、貧血にまたなっちゃった。」と真帆が言った。
「レバー食べてくださいよ。」と橘君が面倒くさそうに言った。
ろれつが回らない口調で真帆が自分の腕をまくって
「貧血だから鉄剤注射してるんだ。レバーじゃもう効かないよ。」と言った。
白い細い腕にいっぱい注射の跡があった。
鉄剤注射・・・?
誰がそんな話しを買うんだよ・・・。
さっきクスリが入ってるからやりたいって言ってたのは・・コレか???
橘君が「ぼくもう帰ります。」と言った。
「ねえ、わたしとやりたくないの?」
真帆が聞いた。
「やりたくないです。」
「なんでやりたくないの?」
「すみません。僕の好みではないです・・。」
「付き合うわけじゃないのにね。」
「すみません感覚が違いすぎます。」
「また、倉庫番に逆戻りだねー。」
橘君がぎょっとした。
真帆がへらへら笑いながら留守電のテープを聞き始めた。
TAKAの声で・・・・
「真帆、ごめんね。昨日の女はただのファンだからね。誤解しないでね。酒で吹っ飛んでた・・・。浮気してないからね。また電話するからね」
とメッセージが入っていた。
しんとした深夜のマンションの部屋にテープのメッセージが響いた。
「婚約者の方ですか?」
橘君がげんなりした感じで聞いた。
「そう。」
「僕、この人に恨まれたくないです。」
「言わなきゃ分からないよ。」
TVの上にTAKUTO君人形が2体あった。
このまんまの姿の婚約者だという。
橘君にとっては絶対に関わりたくない人種だった。