KENちゃんの家に真帆が引っ越してきた日、真帆はよく眠れなかった。
今年の春にTAKAと出会ってから色んなことがありすぎた。
色んな事を思い出した。
一応お母さんに勘当されて駆け落ちという事なのだろうけど、KENちゃんの家と真帆の家は距離的に近かった。
真帆はこんな近所のロックのおにーさんの家に引っ越す事になるとは夢にも思わなかった。
高校生の時からB・Bのライブでステージ上のKENちゃんの顔は知っていた。お互い面識はゼロだったけど・・・・・・。
まあ、KENちゃんと布団を畳みの部屋で2つくっ付けた状態で毎日眠る事になるとはやはりこれも夢にも思わなかった。
しばらくKENちゃんと暮らして分かったけれど、KENちゃんは本当に真帆にマメだった。
あんまり人生で誰かに優しくされたことがなかったような気がするので、それは凄くうれしかった。
KENちゃんの両親は仕事であまりいなかった。
KENちゃんの弟も美容師であまり家にいなかった。
KENちゃんはずっと家にお金を入れていて、何故か真帆の分もKENちゃんが払ってくれた。
何となくお嫁さんになったようでもあった。
真帆はちょっとだけKENちゃんと結婚してる自分というものを想像した。
そう言えば昔の人は結婚するなら2番目に好きな人と結婚しなさいとか言っていた。
一番好きな人と結婚すると・・・
期待しすぎて辛くなって・・・壊れちゃうんだそうだ・・。
そういえばKENちゃんと喧嘩したことは一度もなかった。
23日の朝にKENちゃんと家を出た。
KENちゃんが真帆のボストンバックを持ってくれた。
冬の遅い朝日が青い空に輝いていた。
ずっとずっと待っていた愛が来た。
何で真帆のお母さんがKENちゃんを憎むのか真帆には分からなかった。
一度スーパーにKENちゃんと出かけたら、近所だから真帆とKENちゃんは真帆のお母さんと遭遇してしまった。
お母さんが怒った顔をしてやって来て
「早くこんな男と別れなさい。目を覚ましなさい・・・。いつでも家に戻ってきなさい。」と真帆に言った。
ある意味KENちゃんのごやっかいになっているのに・・・。
会社を辞めて漫画家になったこともお母さんは喜んではくれなかった・・・。
真帆は悲しくなった。
家族もいなくなってKENちゃんだけになってしまった。
冬の澄んだ青い空に白い綿アメのような雲がほわほわ浮かんでいた。
KENちゃんが立ち止まってキスしてくれた。
真帆はKENちゃんが大好きになっていた。
真帆が19歳でKENちゃんが22歳だった。