碧いラフレシアの花 その97 | 連載性春小説  碧いラフレシアの花

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好きじゃない人と天国へ行くよりは


好きな人と地獄に行きたい


ある女の子の80年代

KENちゃんと真帆が雪の中を歩いて行った。

KENちゃんは青いチェックの傘を差して、真帆がKENちゃんのお母さんから借りたピーチ色の傘を差した。

雪が結構積もって道路にKENちゃんがロングブーツで着けた足跡がくっきり残った。


真帆はこれからお母さんに怒られるんだと思うと気弱になった。



真帆の家は賃貸のアパートだった。

「家はお父さんいないから。」と真帆が恥ずかしそうに言った。

KENちゃんはヤンキー化はしたけれど、お父さんが工務店をやっていて、お母さんも知り合いのレストランで長時間働いていたから、そこそこ裕福だった。和風のまあまあの家に住んでいた。KENちゃんには2つ年下の美容師をしている弟がいた。

真帆はきょうだいもいないと言った。考えてみれば真帆の事は何も知らなかった。

まだ真帆のお母さんは給食場の仕事から帰ってきていなかった。

真帆が不安そうにKENちゃんに説明しだした。

真帆の父親は真帆が小さい時に死んだので真帆は全然父親を覚えていないのだそうだ。

父親は胃がんで死んだけれどもその前に既に精神的にかなりおかしくてよく入院したりしていた。

だからそういう情況でギリギリで母親が真帆を育てたので、真帆の母は厳しくて気難しいのだそうだ。

だからあんまり歓迎されないかもしれないけど許して欲しい・・という事だった。



真帆のものらしき机にいっぱい漫画の原稿のようなものがあった。

KENちゃんが真帆に聞いたら、少女漫画を描くのが好きなのだと言う。

高校生の時応募したらデビュー一歩前の佳作の賞を取った。

でも今は仕事で忙しくてこういうのはなかなか描けないとのことだった。


KENちゃんがちらっと真帆の作品を見た。

少女漫画は良く分からないが凄く上手いのではないかと思った。

さらによく見たら何となくTAKAに似ているロッカーの男の子の絵が描いてあった。

真帆が恥ずかしそうに「これは・・高校生の時に描いたものだから・・。」と言った。

ああ、これはTAKAの模倣キャラなんだな・・とKENちゃんは気がついた。


ずっとKENちゃんは真帆はもっとぼおっとしてバカなのかと思っていた。

こういう才能があるとは知らなかった。

意外にこういう創造的な所とか、家庭に影がある所とか・・・そういうのがTAKAとかみあったのだろう。


KENちゃんは真帆が可愛そうになった。

内気でただチケットを買ってTAKAのライブを観に来ていて・・・

全然コアなファンのサークルにも入らず・・・

ただTAKAそっくりの男の子の少女漫画なんか描いていて・・・

ヘンに顔が可愛かったばかりに電話番号を渡したTAKAに処女なのに喰われて・・・

雑巾みたいに捨てられて・・・


可愛そうに・・と思った。


「また、応募してみたら?」とKENちゃんが言った。

「うん・・実は昔の作品を違う雑誌の賞に応募して・・結果待ってるんだよ・・。」と真帆が恥ずかしそうに言った。