日本経済新聞 電子版は2020年10月26日に、中国がDigital Yuan(Digital CNY/Digital China Yuan/Digital RMB/Digital RrenMinBi Yuan/デジタル人民元)の発行に向けた取り組みを加速していると報告した。
内容はまだ貧弱であるが、実証実験を国内28都市に広げつつ、個人どうしでやり取りする機能など必要な技術の確立を急いでいるという。
特に、国際決済を巡る米国の覇権に挑む姿勢も見えてきた。
日米欧は中国がデジタル通貨の技術や制度づくりで主導権を握ることに警戒感を強めている。
https://time-az.com/main/detail/73011
中国人民銀行(中央銀行)デジタル通貨研究所の穆長春所長は2020年10月25日に、上海市で開かれた金融関連のイベントで、デジタル人民元について、「財布機能は統一的なものをつくる」と、語った。
もちろん、デジタル通貨も偽造対策が重要な課題になる。
人民銀行はそれぞれの人が持つ財布機能を共通の規格で揃え、ブロックチェーンで正しい通貨だけが出入りするようにして、偽造通貨の流通を防ぐ考えのようだ。
デジタル人民元は中央銀行が管理するCBDC(Central Bank Digital Currency/デジタル通貨)の中国版である。
中国は2022年02月に開く北京冬季オリンピックまでの発行をめざし、技術の検証や制度設計のピッチを上げている。
もちろん、それをクラックする犯罪集団も動いていることだろう。
これは表裏一体である。
相手は、世界2位の経済大国である。
中国は実験を北京の市内や天津市、上海市、広州市、重慶市など主要都市を網羅する28地域に広げる。
穆長春所長は2020年10月22日の講演では「今後の実験は決済以外の新たな機能も発表していく」と語った。
例として挙げたのが、スマートフォンどうしを近づけるだけで受け渡しする仕組みだという。
紙幣や硬貨を手渡しする感覚でやり取りする。穆長春所長は「機能の開発はすでに完了した」と明らかにした。
しかし、機能より大変なセキュリティ問題が背景にある。
人民銀行は配車アプリの滴滴出行などとも提携し、インターネット決済で使うことを想定した実験も進めていくという。
深圳の実験では、デジタル人民元が誰の手にあるかの情報管理に携帯電話の番号を使った。
これは2008年にケニアのサファリコム(Safaricom)がモバイル・マネー「m-PESA」のために開発した技術で、現在でも携帯電話や仮想通貨のやり取りで採用されているが、開発されて12年以上も前の技術である。
安全だと信じられているが、実際は事故も起こっている。
正式な発行時には携帯や銀行口座の番号を登録しなくても使えるようにするという。
中国の携帯や口座、身分証がない外国人の利用も想定しているもようで、どのような管理手法を試すかも注目される。
制度設計では人民銀行が2020年10月23日に、デジタル人民元を法定通貨に加える法改正案を公表した。
日米欧が発行するかどうかすら決めていない段階で、法整備でも先手を打った。
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