元AV女優、出演作の販売停止を求めたが、大きな「壁」 | 世界メディア・ニュースとモバイル・マネー

世界メディア・ニュースとモバイル・マネー

VMTM(Virtual Matrix Time Machine)の制作を目的に、世界中のメディアから集めた情報から選んで紹介しています。

 

弁護士は「本人の同意なく半永久的に裸の映像を見られてしまうのは、重大な人権侵害」と指摘。

 

一方で、AV人権倫理機構は「最終的には権利者の判断」と回答。

 

ハフポスト(Huffpost)の日本語版は2019年05月26日に、元AV女優の大塚咲は2012年に引退して以来、写真家・アーティストとしての活動を続けている。

 

2017年に発売された自叙伝『よわむし』(双葉社)のなかで大塚咲は、15歳でレイプ被害に遭ったことを告白。

性犯罪被害者は恐怖心を飛び越えようと、性の世界に飛び込むことがある。

 

大塚咲も性が怖いからこそ、荒療治のつもりで性の世界に自分の身を投じたと報告した。

 

https://time-az.com/main/detail/68965 

 

私はAV業界が嫌いではありません。

たくさんの感謝もあるし、愛情もあります。

現場に関わる人たちへの思いは、特にそうです(『よわむし』より)

こんな言葉で、AV業界への愛情と感謝の気持ちを述べていた大塚咲。

 

しかし今、AV女優の過去と決別しようとしている。アーティスト活動の継続のために、名前を変えようというのだ。

一体、何が彼女をそうさせたのか。

 

「やっと私たちの肖像権が認められた。今までの奴隷のような状況から変わっていくんだと、販売停止は希望の持てる明るいニュースだと感じました。だからずっと前から、過去作品の販売停止申請をしようと考えていました。6月に個展を開く今が、そのタイミングだと思ったんです。」 

 

大塚咲が販売停止の申し立てをしたのは、2017年10月にAV業界の改善を目指して発足した、AV人権倫理機構だった。

 

著作権侵害や無修正など違法な作品を監視するNPO IPPA(Intellectual Property Promotion Association/法人知的財産振興協会)などが会員になっている。

 

同機構は発売後5年が経過した作品を対象に、出演女優やその関係者から申請があった場合、作品の販売停止をメーカーに依頼している。

 

2019年5月31日時点で259件・6339作品の申請があり、判断を経た211件中187件・5588作品の販売が停止された。

 

大塚咲も引退して7年経っていることから、申請さえすれば容易にネット上から作品を消せると思っていた。

 

しかしいざ着手してみたら、想像していたよりもはるかに煩雑だったと語る。

 

申請しても、すべてを販売停止できるわけではない

 

「権利者が機構側に『これはまだ売れるから販売停止したくない。残したい』と言われたものやAV人権倫理機構の会員となっている団体に加盟していなかったり、潰れてしまったメーカーの作品は販売停止ができないと聞きました。私はもう引退しているのに、新作を装った作品やオムニバス作品が未だに自分の知らないところで発売されています。それがもし今年発売されたとしたら、申請まであと5年待たなくてはならない。この先いつまで、申請を続ければいいんでしょうね?」という。

 

さらに、利権が転売されたものも多い。

 

例えば、ドイツのある都市に、無修正のビデオの利権を購入する会社があり、膨大な修正前のビデオが保存されている。

 

販売申請の判断についてAV人権倫理機構事務局に問い合わせると、「停止の依頼があればメーカーに伝えてはいるものの、最終的にはメーカーなど、作品の権利を持つ者の判断」という答えが返ってきた。

 

また2018年04月から加盟団体が使用しているAV出演契約書には撮影から5年6か月、販売から5年で停止申請ができることが盛り込まれているものの、それ以前の契約については期間が提示されていないケースが一般的だという。

 

また同機構の作品販売停止申請ページには、「当機構に賛同する枠組み内のAVメーカーやプロダクションを対象としております。それ以外のメーカーや無修正などのAV作品の場合、当機構では対応が出来ません」と記載されている。

 

AV人権倫理機構の会員で、出演強要問題を機にAV女優を守り、AV業界の改善を目的に設立された日本プロダクション協会は、2018年2月におこなわれた発足イベントでメディアに対し、「一人の女性が、様々な理由やきっかけでAV女優となり、そしていつか卒業していくわけですが、卒業後にこの業界にいたことを笑顔で思い出し、良い経験だったと思ってもらえるような働く環境作りが私たちの使命だと思っています。」と書かれた資料を配布した。

 

しかし、私がドイツで見た、膨大な無修正のビデオには、これらの意見は届かないだろう。