情報を全てオープンにすると、メンバーは全体と自分との関係が分り、
動向・状況に応じた動きがとりやすくなるので、やる気も湧いてくる。
透明で隠し立てがないと、リーダーに対する信頼が生まれ、相互理解
も深まるので一体感やチームワークが醸成されやすいという話は分かり
やすく、これはその通りなのだと思います。
が、昨日会ったある学校の教頭は、「子供に夢がないのは、情報が
オープンになりすぎて、全てを知ってしまっているからだ。」と言います。
勉強していい大学に入っても、大学なんて大した面白いところでもなけ
れば、就職も簡単ではないし、会社で偉くなっても大して儲かるわけでは
ない。
今の大人の実態は、どうやらうらやましがるような、尊敬できるような、
楽しそうな、そんなものではないようである。
そういうことが分るような情報を、色々なルートから知るようになったら
夢も希望も持つわけがないというお話です。
昔の子供たちは知らなかったから、漠然とはしていたけれども夢や希望
を持つことができた、というのは当たっている面はあるでしょう。
子供たちが知ってしまうようになったことは、もはや引き返せないので、
別の手立てを考えなければならないわけですが、マネジメントにおいて
「情報をオープンにすること」がほんとにいいのかは、考えなければなら
ないポイントでしょう。
情報をオープンにしたばっかりに、この組織には未来の楽しみがない、
あの人はこの程度のことしかかんがえてないんだ、ここにいてもあれくらい
にしかなれない、といった不安や絶望を与えてしまってはいけません。
冒頭のようなオープンにするメリットが生まれるためには前提があるのだと
思います。
一つは、当たり前ですが、リーダーが後ろ指を指されないような組織運営、
行動をしていること。
二つ目は、組織のビジョンが明確になっていること。
三つ目は、価値観や感性に相互にシンパシーを覚えるような仲間であること、
ではないかと思います。
公開する情報が全て、いい内容のものであるはずがありません。
それでも皆が前向きにそれらを捉え、一緒になってやっていこうという気持ち
でいられるには、このような前提を先に作ることが必要なのではないか。
逆に、「皆に情報をオープンにする訳にはいかない」と考える組織は、
このような点に問題を抱えているのではないかと考えます。