博麗神社は、公式ゲームの設定では、人里から離れた山の上にあり、しかも、人里から歩いて来るには、見通しが悪く妖怪に襲われる危険もある獣道を通らなければならない、となっていました。
したがって、わざわざ博麗神社までやって来る命知らずな人間はいない、と。
だけど、公式漫画『東方酔蝶華』の第2話で、人里で酔いつぶれた魔理沙を霊夢が博麗神社まで連れていって、そのまま泊めてやっていましたが、このとき魔理沙は千鳥足ながら自分で歩いて神社まで無事にたどり着いていました。
このことから、公式ゲームの設定は、公式漫画では無視されているようです。
実際、他の公式漫画『東方茨歌仙』や『東方鈴奈庵』などでも、博麗神社の境内に人が多く集まっている描写がありますし。
では、守矢神社はどうでしょう?
守矢神社は妖怪の山の、おそらくは中腹あたりか、それより少し上あたりにあると思われます。
祭神・八坂神奈子の発案で、山のふもとから神社までを結ぶ索道(ロープウェイ)が設置され、里の人々が参拝に訪れることが可能になった。
当然、食料や生活必需品などはこの索道を使って神社まで運ばれているものと思われますが、索道が完成する前はどうしていたのでしょうか?
それはそうと、二次創作作品では、守矢神社では早苗が家事の一切をこなしていて、食事の用意も早苗が行っている、ということになっていることが多いようです。
そして神奈子と諏訪子は家事が一切できない、と。
しかし、前回も書いたように、幻想郷にはガスや電気はありません。だから早苗はかまどを使って調理をしなければならないが、外の世界から来た現代っ子の早苗がかまどの使い方を知っているはずがありません。
しかし神奈子なら知っているはず。彼女は人々が稲作をやるようになった後の大和の神ですから、かまどで米を炊いたり野菜を煮たりする方法を知っているはずです。
おそらく、早苗は外の世界にいたときは普通に台所でガスコンロや炊飯器を使って料理を作っていた。
だが幻想郷に来てからは、それらのものが使えなくなったので、かまどの使い方を神奈子から教わりながら炊事をするようになった。
守矢神社は歴史のある古い神社なので、その昔使われていた古いかまどが残っていたのかもしれません。
(参考画像)
【日本の標準的なかまど】
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240711/18/jiroumaru/63/a9/j/o1024068315461944360.jpg?caw=800)
(フリー画像:パブリックドメイン、撮影者不明)
ちなみに、時代劇画の巨匠・小島剛夕さん(2000年没)が、作品の中で、昔の人の家事の様子を見事に描いています。
(参考画像)
【昔の人の家事の様子(作画:小島剛夕)】
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240715/12/jiroumaru/47/90/j/o1403065915463341879.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240715/12/jiroumaru/d9/81/j/o1403099215463341955.jpg?caw=800)
↑上の画像は、『子連れ狼』(原作:小池一夫)のワンシーンで、ある武家屋敷に下女として奉公している少女が一生懸命に家事をしている場面。
火吹き竹でかまどの火に空気を送ったり、鉈で薪を割ったりと、かまどを使うのもなかなか大変です。
また、素足に下駄をはいて井戸から水を汲んでいるのにも注目。長靴が無かった時代には、足が濡れてもいいように下駄をはいて水を汲んでいたのですね。
もちろん、これらの仕事は、炊事だけでなくお風呂を沸かすときにも行われていました。
『東方』の二次創作漫画に『早苗さんは家出中!』というのがあります。作者は、あずまあやさん。
これは、守矢神社の家事を一人で引き受けてきた早苗が、ふとしたことで神奈子や諏訪子とケンカして家出してしまう、というもの。
神社を飛び出した早苗は、犬走椛と一緒に妖怪の山を警備したり、紅魔館へ行ってメイドや門番をやったり、弁当屋の看板娘になったりと、幻想郷中をあちこちと転職を繰り返します。
【二次創作漫画『早苗さんは家出中!』(作:あずまあや)】
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240715/18/jiroumaru/ef/51/j/o1652092915463468531.jpg?caw=800)
一方、神奈子と諏訪子は、この漫画では炊事がまったくできないという設定になっていて、早苗がいなくなって食事の準備をする者がいないために、仕方なく人間のふりをして人里へ行き、弁当を買ってしのぐのでした。
この弁当を買いに行く、というのは、いかにも現代人の発想だな、と思いました。
日本で今日のような弁当が完成したのは、江戸時代の後期のようです。庶民が豊かになって遠出をするようになったので、必然的に弁当が発達したのです。
しかし、幻想郷の人里の住民たちはどこへも遠出などしようがないので、果たして弁当屋という商売が成り立つや否や?
もっとも、それまで人間が寄り付かなかった妖怪の山に索道ができて、それに乗って守矢神社への参拝が可能になったのは、人里の住民たちにとっては紛れもなく「遠出」であり、新たな娯楽ができたと言えるでしょう。
それに合わせて、人里にも弁当屋が開業したのかもしれません。
ちなみに、江戸時代には弁当屋と似た商売で、煮売屋(にうりや)というものがありました。これはあらかじめ調理したおかずを売る店です。
やっぱり江戸時代の女性たちも、家事や育児をこなしながら食事の支度までするのは大変だったのでしょう、とりあえずご飯だけはかまどで炊いて、おかずは煮売屋で買って間に合わす、といったことも多かったようです。
この煮売屋ならば、間違いなく幻想郷の人里にもあるんじゃないかと、私はにらんでいます。
【『早苗さんは家出中!』イメージ画像】
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240715/17/jiroumaru/fd/31/j/o1403099215463452540.jpg?caw=800)
左から、八坂神奈子、東風谷早苗、洩矢諏訪子、魂魄妖夢。
(キャラクター素材:dairiさん、はるかさん)
(背景・青空:https://www.beiz.jp/からのフリー画像)
(花々の草むら:PNGTREEからの PNG 画像 ja.pngtree.com/)
(たくさんの花:aalmeidahによるPixabayからのフリー画像)
このテーマで、あと1回だけ書いてみたいと思います。
あずまあやさんのpixivのページ
https://www.pixiv.net/users/9853
dairiさんのpixivのページ
https://www.pixiv.net/users/4920496
はるかさんの「ニコニコ静画」のページ
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im3189645
上海アリス幻樂団
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fwww16.big.or.jp%2F%7Ezun%2Fimage%2Fbanner.gif)