1988年11月に北公次さんが上梓した『光GENJIへ・元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』は、ベストセラーとなり、以後、続編が次々と刊行された。
版元は、いずれもデータハウス。
最初の『禁断の半生記』は、再起をかけて自分の半生を公開するという内容だったが、次の『光GENJIへ・再び』からは、完全に性被害問題に特化した内容となった。
(1)『光GENJIへ・元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』(1988年11月)
(2)『光GENJIへ・再び』 (1989年2月)
(3)『光GENJIへ3・みんなで考えようジャニーズ問題』 (1989年4月)
(4)『光GENJIへ・最後の警告』 (1989年6月)
(5)『さらば !! 光GENJIへ 』(1989年9月)
(6)『光GENJIファンから北公次へ』 (1989年12月)
1989年には、ドキュメンタリービデオ『映像版 光GENJIへ』も発売された。当時はまだDVDなど無かったから、VHSのビデオテープだったはずである。
最近になってこのビデオが発掘され、テレビのニュース番組で紹介された。
【TBS NEWS DIG Powered by JNN】
【ジャニーズ】「騙すのはよくねえっつんだよ!」34年前“怒りの”告白ビデオ、複数の当時Jr.も証言、米国での訴訟も視野【報道特集】
(公開日:2023年9月10日、再生時間:20分24秒)
上の動画の中でも北公次さんは言っているが、これらの本やビデオが出た当時、新聞やテレビはほとんど取り上げようとはしなかった。
ビデオは売れなかったそうだが、本はいずれも話題を呼び、一大ムーブメントとなっていたにも関わらず、である。
当時、北公次さんの協力者で、上の動画にも登場している作家の本橋信宏さんは、日刊ゲンダイの取材に答えて、こう述べている。
(以下、引用)
それでも、ヤク中の妄想だとか、心ない言葉を投げかけられ、完全なゴシップ扱いでした。テレビ局や新聞社にかけあっても鼻で笑われ、どこも取り上げてくれない。完全になかったことにされていました。扱ってくれたのは、一部の夕刊紙や実話誌だけです。当時から、ジャニーズに対する忖度やタブーは存在していたんです。命を懸けた告白なのに、どこも扱ってくれないことに公ちゃんは苛立ち、絶望感を抱いていましたね。
(引用、ここまで)
しかし、このたびのイギリス公共放送BBCの報道によって、日本国内の多くのメディアがこの問題を取り上げるようになった。
いや、正確には、BBCの報道に勇気づけられた被害者の一人、カウアン・オカモトさんが覚悟を決めて告発に踏み切ったことで、ようやくマスメディアが動いたのだ。
これがきっかけとなって次々と被害者が名乗りを上げ、平本淳也さんを代表とした「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が発足するに至った。
BBCの番組が放送された時点では、まだ国内のマスメディアの動きは鈍かったのだ。
このたびのジャニーズ性加害問題の展開で、カウアンさんは実に大きな役割を果たしたと言える。
では、どうして北公次さんのときはマスメディアは動かなかったのか?
上の本橋信宏さんの談話にある通り、一部の夕刊紙や実話誌ぐらいしか扱ってはくれなかった。あと、ゲリラ雑誌の「噂の真相」ぐらいか。
次に貼るのは、上の動画のダイジェスト版である。
北公次さんのビデオの場面をよく見ていただきたい。
「製作・著作 村西とおる事務所」と表示されているのに注目して欲しい。
村西とおるといえば、アダルトビデオの制作プロダクション「クリスタル映像」、「ダイヤモンド映像」で名をはせたAV監督ではないか。
【TBS NEWS DIG Powered by JNN】
ジャニー喜多川氏による性加害 フォーリーブスの北公次氏 34年前の“告白ビデオ”
(公開日:2023年9月5日、再生時間:2分08秒)
そう、北公次さんの一連の告発本の仕掛け人は、村西とおる氏だったのだ。
どうしてAV監督ごときが北公次さんと結びついたのか?
実はその動機が、けっこうくだらなかったりする。
村西とおる氏が制作したアダルトビデオに出演していたAV女優が、そのビデオの中で、あるジャニーズ・タレントと寝たことがあると、そのタレントの実名を出して発言したことで、ジャニーズ事務所が激怒。トラブルとなった。
それで村西とおる氏はジャニーズ側に一泡吹かせようと、ジャニー喜多川と暮らしていたことがあるという北公次さんを探し出し、接近してきたのである。
もちろんその目的は、ジャニー喜多川に関する何らかの情報を聞き出すためである。
しかし、この村西とおる氏も、未成年者をアダルトビデオに出演させて何度も逮捕されたり、ビデオの制作現場で男優と女優を実際に性交させたりするなど、かなりいかがわしい人物なのである。
北公次さんの告白の際にも、やはり少なくない人数の同じ被害者が名乗り出たのだが、大手マスメディアはことごとく無視した。
それは、ジャニーズ事務所への忖度もあったかもしれないが、それ以上に北公次さんらのバックにいる村西とおる氏の存在がネックになっていたのではあるまいか。
下手にジャニーズ事務所を批判すると、それと対立している村西とおる氏を利することになってしまいかねない‥‥。
ただ、村西とおる氏は、本気で北公次さんを再起させようともしていたらしい。
その点だけは評価してあげてもいいかもしれない。
【ビデオ撮影するカメラマンのイメージ画像】
(注:この男性は村西とおる氏ではありません)
(無料の写真素材「ぱくたそ」 からのフリー画像)
(モデル:瀧野恵太さん https://www.pakutaso.com/battletencho.html)
(続きます。次で終わりにします。)