寺島さんは、78年前、ポーランドのワルシャワがナチスによって徹底的に破壊され、兵士と市民合わせておよそ20万人もの犠牲が出たことを紹介した上で、次のように述べている。
(以下、引用)
78年後の現在、ウクライナで同じことが起ころうとしている。人はなぜ歴史を学ぼうとしないのだろう。歴史を学ぶとは戦争の歴史を学ぶということであり、戦争をなくすために歴史を学ぶのである。
ロシアに立ち向かった勇気と決断は大したものだと思う。しかし、その決断は残念ながら間違っていたと言わざるを得ない。
私がゼレンスキー大統領だったら開戦しない。それは民主主義が大事なのはわかる。しかし人命の方がさらに貴重ではないか。民主主義はいずれ帰ってくるだろう。そういう可能性を秘めている。しかし失われた人命は二度と再び戻ってはこない。
(引用、ここまで)
途中は少し略するが、さらに寺島さんは次のように言う。
(再び引用)
今からでも遅くはない。ゼレンスキー大統領、停戦しなさい。思い切って白旗を揚げなさい。相手は、言ってみれば狂人である。強大な刃物を持った狂人にどう抵抗しようと勝ち目はない。国土の半分を失ったっていいではないか。国土の半分と何十万人の人命のどちらが大切なのか。第二次世界大戦後のポーランドが国民の手に戻ったようにウクライナにも幸せが訪れるだろう。
(引用、終わり)
私はこれを読んで、ウーンと唸ってしまった。
寺島さんの言っていることは、考え方としては正しいと思う。
だが、ウクライナのドンバス地域の反ロシア派の人々が、NATOから供与された武器を使って、同地域の親ロシア派の人々を攻撃していたという事実がある。
その親ロシア派の人々を保護するというのが、このたびのロシア軍のウクライナ侵攻の表向きの理由となっている。
もちろん、名目上はそうでも、反ロシア派への報復という裏の目的もあるだろう。
果たして、ゼレンスキー大統領が停戦を申し出たとして、ロシア側がどう出るか。それもまた危険な賭けかもしれない。
ちなみに、ドンバス地域における親ロシア派の人々への迫害、及びNATOからの武器供与は、ゼレンスキー氏が大統領に就任する以前からのことであったことは、一応述べておきたい。
もっとも、ゼレンスキー政権もそうした以前からの方針を引き継いでいるのだが。
ところで、このウクライナの現大統領、ウォロディミル・ゼレンスキーほど、どう評価したらいいのか、私が頭を悩ませた人物はいない。
無論、必死に祖国と国民のために行動している善人であってほしい、と思っているのだが。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20220420/19/jiroumaru/64/aa/j/o0560074715105787955.jpg?caw=800)
(ウォロディミル・ゼレンスキーの公式肖像:President.gov.ua, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)
国際紛争調停のプロ、伊勢崎賢治さんが、『紙の爆弾』5月号で、次のようにゼレンスキー大統領を厳しく批判している。
(以下、引用)
「国民に武器を与え、火炎瓶の作り方まで教えて『徹底抗戦』を呼びかけたことは、市民をロシア軍に立ち向かわせるということで、これは一番やってはいけないこと。市民に呼び掛けるのなら、非暴力の抵抗運動だ」
(引用、ここまで)
さらに伊勢崎さんは、ロシア側の言い分にも着目する。
(再び引用)
「ロシアはウクライナからの独立を主張する『ドネツク人民共和国』『ルガンスク人民共和国』の要請に応じ、ウクライナの攻撃からこれらの政権を守るために武力を行使した、と言っている。侵略ではなく、国連憲章が認めた集団的自衛権の行使だ、という理屈は成り立ち得る。今の国際法ではそういう枠組みになっている」
(引用、終わり)
上の伊勢崎さんの主張に対し、国際紛争調停の専門家のくせに、ロシアの味方をするのか、と言って非難してくる人も多いらしい。
そうではない。伊勢崎さんは国際紛争調停のプロだからこそ、どちらか一方(この場合はウクライナ)に肩入れすることなく、両者の言い分を公平かつ冷静に分析して、解決策を模索しているのだ。
実際、今の報道は、ウクライナ側に一方的に肩入れしたものがほとんどだ。
イギリスのBBC放送によるゼレンスキー大統領のインタビュー動画。↓
【BBC News Japan】
ゼレンスキー大統領をBBCが単独インタビュー 和平交渉や武器供与について語る
(公開日:2022年4月15日、再生時間:5分01秒)
ゼレンスキー氏、ロシア産エネルギーめぐりドイツとハンガリー批判 BBCインタビュー
(公開日:2022年4月15日、再生時間:1分09秒)
上の動画のゼレンスキー大統領の発言に対してどう思うかは、人それぞれの判断に任せたい。
このたびのロシアのウクライナ侵攻の原因の一つが、NATOの東方拡大がある。
1990年の東西ドイツ統一の際、ソ連のゴルバチョフ大統領(当時)は、その統一を認める代わりに、NATOは東方へ1インチも拡大しない、という約束を取り付けた‥‥はずだった。
この約束がなされた会議の内容が、米ジョージワシントン大学のアーカイブに記録として残されているという。
しかし、この約束は、文書化されておらず、あくまで口約束なのである。
この約束を正式な文書にしなかったのは、ゴルバチョフ氏の大失態といえる。
本来なら、ソ連崩壊と共に、NATO(北大西洋条約機構)に対抗するワルシャワ条約機構が解体されたのだから、NATOも同じく解体されなければならないはずだった。
が、当時はまだまだ西側諸国に対する強硬派も多かったので、ゴルバチョフ氏が潰されないよう、睨みを利かせる必要があった。それでNATOはそのまま残されたのだ。
それが今、ロシアとウクライナの戦争の原因の一つとなってしまった。
【KyodoNews】
【速報】ロシア軍、東部制圧へ本格攻勢 ウクライナ侵攻
(公開日:2022年4月19日、再生時間:0分13秒)
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(おまけの動画)
【時事通信映像センター】
ウクライナ避難民がチェロ演奏
(公開日:2022年4月18日、再生時間:1分06秒)
(この動画の公開ページより引用)
東京都杉並区役所で18日、日本フィルハーモニー交響楽団によるコンサートが開かれ、ウクライナ避難民のテチアナ・ラヴロワさん(53)と娘のヤーナさん(30)が特別ゲストとして参加した。2人はウクライナでプロチェリストとして活躍しており、日本の音楽仲間の援助で4月から区内で暮らしているという。
この日のコンサートでは、親子でチェロの二重奏曲を披露したほか、日本フィルハーモニーとコラボして唱歌「故郷」を演奏。会場は拍手に包まれた。
(引用、終わり)