宮沢賢治を愛し、用水路を掘り続けた中村哲さん。 | じろう丸の徒然日記

じろう丸の徒然日記

私こと、じろう丸が、日常の出来事、思うことなどを、気まぐれに書き綴ります。

さる12月4日、アフガニスタン医療活動を続けてきたNGO「ペシャワール会」中村哲さん同国東部を車で移動中、武装集団銃撃されて亡くなった。東部で進めている灌漑工事の現場に向かう途中だったそうだ
あれからもう10日が経とうとしている。
 
中村さん1984年パキスタンに赴任して現地の人々の医療にあたった後、86年にはアフガニスタンでも医療活動を開始した。
だが、2000年から始まったアフガニスタン大干ばつは凄まじく、アフガンの人々の生活を根底から突き崩してしまった。
そこで、「ペシャワール会」は、まず現地の人々の生活を元に戻すことが先決だと判断、活動方針を灌漑事業へと舵を切った。
実際、現地での病気の背景には食料不足栄養失調があるように思われた。
 
だから「ペシャワール会」は、2003年からアフガン東部用水路の建設井戸掘りなどに取り組んできた。
これまでに「ペシャワール会」が掘った井戸約1600本用水路約27キロが開通、福岡市の面積のほぼ半分に当たる1万6500ヘクタールの農地を蘇らせた。
そのおかげで15万人難民が故郷への帰還を果たし、さらには今、農民65万人の暮らしが支えられているという。
それだけではなく、中村さん国連機関国際協力機構(JICA)とも連携して、灌漑工事のノウハウアフガン全土に広めようと考えていた。
実際、工事に携わった現地の人たちは、現場で技術を習得することができ、その中からは熟練工も育った。
しかも、この大事業は、日本政府からは1円の援助も受けることなく、為されてきた。
 
12月7日、アフガン首都カブールの空港で中村さん追悼式が行われたが、何と、アシュラフ・ガニ大統領自ら軍兵士らと共にアフガン国旗に覆われた中村さんを担ぎ、長きにわたってアフガンの復興に尽力してくれた中村さんを偲んだ。
【BBC News】
Hero's farewell for Japanese doctor - BBC News


 
このことからも、中村さんがいかにアフガンの人たちから愛され慕われてきたかが分かるが、日本国内では例によって憲法9条を憎む百田尚樹らネトウヨ文化人たち鬼の首を取ったように騒いでいる。
曰く、「これで憲法9条など何の役にも立たないことがハッキリした!」
しかし、これに対しては、安田純平さんが最近配信したメールマガジンの中で述べている次の言葉が、絶妙な反論となる。
(以下、引用)
中村さんが活動を続けてきて類を見ないほどの大きな実績を残すことができたのは、非武装・平和主義をかかげる中村さんの哲学があったからであって、それがなければ活動自体がほとんどできていなかったことは、その他の国のNGOと比べてもその功績が圧倒的であることからも明らかです。
 
紛争地において100%の安全を確保することはできません。世界最強の軍隊を持っている米国は、アフガニスタン国内において米軍関係者だけでも2218人(2019年12月2日現在)の死者が出ています。軍隊があれば身を守れるなどというのは幻想というか妄想です。そもそも、武装していたら中村さんはあのような活動はできなかったわけで、本末転倒な話です。
(引用、ここまで)
 
安田さんは、中東における日本人の立場を、次のように説明している。
(別の日のメールマガジンより引用)
アフガニスタンでは米兵の死者が2300人を超え、米国関係の請負民間人も1700人以上が死亡しており、PMCはイラクでもアフガニスタンでも多数の死者が出ています。結局は武装していても狙われればどうにもならないということです。
 
自ら武装していて身を守れるのはせいぜいチンピラ相手くらいです。ペシャワール会のように長年活動している場合は別として、新たに現場に入ったジャーナリストや支援関係者が拘束される理由はほぼ例外なくスパイ容疑です。知らない人間はスパイと思え、というのが紛争地です。拘束されたときに武器を所持していたら処刑されます。自分が武装していなくても護衛や運転手はそれが仕事とはいえ危険にさらされますし、特に護衛は拘束されると処刑かひどい拷問を受ける危険性が本人以上に高いです。
 
知らない人間はスパイと思え、の紛争地にあっても、私の実感では日本人はスパイ容疑が晴れやすいです。第二次世界大戦後、自国の軍隊を外国に送って自ら武力行使をするということが行われておらず、「日本人ならスパイということはないかな」と思ってもらいやすい。実際、日本には外国に展開する諜報機関はないし、そういうイメージも持たれていない。
(引用、ここまで)

そして、海外で活動する日本人憲法9条は守れるのか? という問いに対する安田さん答えがこれである。
(再び引用)
言うまでもないですが、「憲法9条が守ってくれる」という考え方の意味は、憲法9条による制約があることによって日本政府が自衛隊を戦場に送ったとしても武力行使はできず、自衛隊が現地人を殺しているという印象を持たれていないことから日本人は恨まれにくく、スパイ容疑も晴れやすいことから、軍隊を送っている国の国民よりも結果として安全性が高いであろう、ということです。
 
つまり、日本政府の中には自衛隊を送って武力行使までしたい人々がいるとしても、憲法9条による制約でそれができないというのが「憲法9条が守ってくれている」という状態です。
(中略)
自国の軍隊によって人質が救出されるという事例は極めてまれであることからも分かる通り、特に紛争地に紛争の当事者として自国の軍隊が存在しても個人の安全性は大して高まりません。マイナスとプラスを相殺させてもほとんどマイナスばかりだろうと思います。
(引用、終わり)
 
中村哲さんは、やはり憲法9条に守られていたのだ。
ところで、中村さん宮沢賢治が好きだったそうだ。
中村さんと親交のあった絵本作家長野ヒデ子さん12月7日付け朝日新聞「論座」で述べているところによると、中村さん「いつも忙しくて、なかなかゆっくり読書する時間がないのだけれど、賢治の本はよく手にとる」、さらにアフガニスタンで、賢治物語を思いながら、星を見たり、風を感じたりする時「救われた気持ちになる」と言っていたとのこと。
たしかに、中村さん活動は、宮沢賢治生き方にも通じるものがあるように思える。
中村さん銃殺した者たちの目的動機の解明は、これからの捜査に任せるとして、改めて中村哲さん哀悼の意を捧げます。