前回は「自然免疫」と「獲得免疫」についてお伝えしました。
今回は『抗体』について。専門用語が多くて恐縮ですが、理解で
きるとワクチンへの理解も深まりますのでご容赦を。
前回触れましたが、「抗体」は形質細胞によって量産される、
特定のウイルスを攻撃するための“飛び道具“です。
抗体の素材はたんぱく質で、免疫グロブリンと呼ばれています。
基本的な構造はY字形で、複数の結合部が存在しています。
ウイルスなど抗原に結合するのは「抗原結合部」で、
ここはウイルスの形状に合わせて形を変えて結合する能力があります。
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抗体の役割としては、抗原と結合してウイルスを無力化したり(中和抗体)、貪食細胞に食べやすくしたり(オプソニン化)、
免疫のサポート的存在の補体と結合して活性化させ病原体の細胞膜を破壊したりする働きをします。
抗体には5種類あり、このうち感染症で活躍するのは「IgM」「IgA」「IgG」です。
感染時、最初に増えるのはIgMで、続いてIgAやIgGに交代します。
IgAは呼吸器や消化器などの粘膜上が主戦場で、体内侵入を防ぎます。
それでも体内侵入してきたら、血中に最も多いIgGの出番となります。
IgGは「液性免疫」の主力であり、体内IgG量が最大になった時が、その人が持つ免疫の最高レベルとなります。
ただし、IgGが最大値になるのには時間を要し、感染後数日は必要です。
それを表したのが下のグラフです。
COVID-19 Serological Tests: How Well Do They Actually Perform? https://www.mdpi.com/2075-4418/10/7/453/htm
ウイルス感染後のウイルス量とそれぞれの抗体量の変化が分かりやすいですね。
いわゆる「抗体検査」ではこの流れを参考に判断されます。
新型コロナで言えば、抗体検査はIgMとIgGを確認することが多いようです。
この両者が存在するか、すればどちらが多いか、確認し感染状況の目安とします。
例)IgM多い⇒感染初期、IgG⇒数日経過
いかがでしたでしょうか。抗体について少しでも理解していただけたのなら幸いです。
前回を含め免疫について解説しました。私たちは重層的に守られていることをわかって頂けたのではないでしょうか。
今回もワクチン等で注目されているIgG抗体ではありますが、これは免疫の一部であり感染数日後からしか働きません。
実際には自然免疫の段階でほとんどの病原体はやっつけられており、それでも突破してきたものは、免疫細胞の6,7割が存在していると言う粘膜上でやっつけられているようです。次回は「ワクチン」について解説します。 くろしん