ジーラさん、またまた、母たん爆弾、食らっちまいました。
「父、ジーラさん、もう、駄目かも。力が無くなったみたい。
ジーラさん、甘かったかなぁ。母たん引き受けて、父は、如何する。」
お経を、読みながら、弱音を、吐いて、しまいました。
お経を読むのは、父が、せん妄状態の時、ジーラさんに、言いました。
「ジラ、お経を、読んだら、救われるような、気がする。」
父は、日頃、無心論者でしたのに。
「分った、ジーさん、今日から、お経の、お勉強する。
そうして、父の変わりに、毎日、お経を、読んであげる。」
父は、安心した顔で、眠ってしまいました。
ジーラさん、父と、約束しました。 {その時は、父、ちゃんと,治りました。}
それから、ジーラさん、娘ちゃんに、言わせると、
「世界で、一番、有り難くないお経」を、毎日、読み続けています。
父と娘ちゃん、ジーラさんと旦那ちゃん、
その時も、母たんの、攻撃を随分、受け続けました。
ジーラさん、昼の12時から、夜の10時位まで、父の介護をしました。
土、日は、娘ちゃんが、行ってくれます。
父の左側が、麻痺していたので、肉体労働でしたけど、
頭は、しっかりしていたので、それなり、楽しい毎日でした。
父は、何でも、したがります。
なるべく、起きてて、普通の生活を、したがります。
パジャマの生活を、嫌がります。
おしめじゃなく、トイレの生活を、したがります。
食事の後、少し、のんびり、テレビを、見たがります。
食後、歯磨きも、したいのです。
お散歩も、お昼寝は、音楽を、聴きながらが、良いのです。等々。・・・・・。
そんな、ささやかな、希望は、母たんに、否定され、
最初のうちは、母たんと喧嘩をして、頑張りました。
でも、母たんは、五体満足、父は、勝てません。
父に出来る事は、諦める事。
父は、ある日、ジーラさんに、言いました。
「ジラが、来た時、父は、楽しいから、つい、笑ってたらしいんだ。
母たんに、昨日、叱られた。」
「父は、ジラと娘ちゃんにだけ、楽しそうに、笑うのね。
自分たちには、何時も、仏頂面。」
「だから、ジラ、ジラが、母たんに、当たられたら、困るから、
父は、今日から、心で笑う事にした。」
「ジラが、来た時、父は、何時も、笑ってる、忘れるな。
娘ちゃんにも、言っといてくれ、寂しがらせたら、可哀想だから。」
「うん、分った」
父の最後の希望、ご飯を、自分のスピードで食べる事すら。
母たんは、食事に、時間が掛かって、
ポロポロ,こぼしてしまう,父を待てませんでした。
それから、父の手は、段々震えるようになり、スプンも、上手く持てなくなって、
病院で,相談しても,別に,悪い所は見付かりません。
今、考えるに、あれは、ストレスのせいだったと、思うのです。
母たんに、意見を言うと、凄い剣幕で、叱られます。
父に、当たられます。父が、もっと、辛くなります。
ジーラさんと娘ちゃんに、出来る事は、我慢して、母たんの機嫌をとって、
自分の出来る範囲で、思いっきり、父の希望どうりに、してあげる事。
父の我慢の数が増え、
父とジーラさんは、母たんに頼みました。
「このままだと、先が,無い。
一日、一時間で、良いから、ヘルパーさんを、雇ってほしい。
老老介護は、母たんにも、大変だから。」
「そんな、お金、どこに在るの。父が、死んだ後、母たんの分が、無くなるでしょう。
父は、何時も、母たんの事、考えてくれない。勝手、過ぎる。」
母たんは、怒り出し、取り合ってくれません。
曲がりなりにも、父は、社長です。
母たん、不自由した事なんて、有りません。
お金も、自由に、使えなくなった、父。
ボッソリ、「父の財産は、金時計だけだな。」
ジーラさんは、金時計を、貰いました。
父の写真の前で、金時計は、今も、動いています。
父が、一度、母たんに、勝った事が有ります。
娘ちゃんの、お年玉の事です。
母たんは、娘ちゃんは、大学生だから、お年玉は、要らない
でも、父は、最期まで、頑張りました。
娘ちゃんが、行くと、
「娘ちゃん、そこに、お年玉が、置いてある」
父は、ニッコリ、悪戯っぽく、言いました
「ごめんね、母たんと、喧嘩したんだって、ありがとう。」
「父は、娘ちゃんが、お給料を、貰うようになるまでは、
お年玉、挙げるって、決めてた。
他の孫に、遣って、娘ちゃんに遣らないなんて、そんな、不公平は、出来ん。」
何時もの、父の笑い顔。
久しぶりの笑い顔。
今も、娘ちゃんの机の引き出しに、
ポチ袋に入った、1万円が、お守りの様に、大事に、仕舞われています。
母たんは、親戚中に、4人の悪口を、言い続けました。
妹達は、時々来て、父に、お説教をして、行きます。
「あっ、」と言うだけで、ジーラさんに、口も、利いてくれません。
ジーラさんも、段々、無口に、なって、しまいました。
ある時、父は、ジーラさんが、行っても、挨拶も、してくれません。
ずうっと、壁の方を、向いていて、待っても、待っても、振り向いて、くれません。
何だか、父、泣いているよう。
「父、ご機嫌いかが? 今日は、曇っているから、ご機嫌悪い。」
「ジーラさん、来てるの、知ってた」
「あーあ」
それっきり、静かな父。
「何か、考えてる?」
ただ背中を,なぜている、ジーラさん。
「何か、嫌な事あった?
良かったら、話してみて、
聞かれたくない事なら,すぐ忘れちゃうから。」
「我慢ばかりで、父、辛いよね。」
背中を、なぜ続ける事しか、脳の無い、ジーラさん。
父が、ボツりと、寂しそうに、言い出しました。」
「子供なんて、・・・・・・・・。」
しばらく、間があって、「一所懸命、育てたんだけどなあ・・・・・・・・。」
「うん、知ってるよ。」
「どっかで、間違えたのかな・・・・・・・・・・」
二人の沈黙が続いて、
「ごめんね、父。」
ジーラさん、気の利いた、励ましも出来ず、だだ、背中を、撫でているだけです。
気を、取り直して、ジーラさん、父に、言ってやりました。
「今、皆、忙しいけど、暇になったら、すぐ来てくれるよ、
それまで、一番、不器用な、ジーラさんで、我慢して。」
「ジラ、子供には、義務がある。」父は、強い口調で、振り返ります。
「うん」
「「自分が、忙しくて、介護が出来ないなら、それで、良いんだ。
出来ない事は、仕方が無いことだ。
親は、そんな事は、望まない。
義務と言うのは、自分の目で、親の状態を見て、
ヘルパーを、雇うとか、施設を、探すとか、
親が、便利な様、生活を整えて、やる事が,子供の義務だ。
後は、自分の暇な時、ちょこっと、顔を、見せてくれたら、それで良いだ。」
ジーラさん、長い長い、愚痴のような、思い出話を、してしまいました。
お陰で、母たんの事は、忘れました。
父とジーラさんの間に、流れた素敵な、時間の事を、思い出しました。
懐かしい父、ありがとう。
読んでしまった人には、ごめんなさい。