CKD(慢性腎臓病)患者さんへの脂質降下療法は推奨されるか-CKDガイドライン2018から- | 腎臓内科医のつぶやき

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気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

今日は、慢性腎臓病患者さんの治療指針である”CKDガイドライン2018”から脂質管理についてご紹介します。

ガイドラインはあくまで”推奨”のため、その治療を患者さんごとに行うか、行わないかは担当医が決めていきます。
ご自身の治療がこれとは違っていても必ずしも間違いではないので、それを念頭にお読みくださいウインク




 
 脂質代謝異常は、慢性腎臓病患者さんでも冠動脈疾患の危険因子です。
また慢性腎臓病患者さんは、心血管疾患を発症しやすい状態にあると言えます。
そのため、脂質管理をしっかりしようとガイドラインができたわけです爆  笑




スタチンとエゼチミブを使用した患者さんを対象とした論文では、両剤を使用した方では死亡を抑える結果となったのは9編中2編のみでした。
死亡リスクを低下させましたが、有意差はみられませんでした。

心血管死の解析では、3編抑制できたという結果でしたが、いずれも有意差はみられませんでした。

ただ、心血管疾患の発症では、10編中7編で発症抑制効果が認められました。
このうち、心血管疾患の既往のない方を85%以上含む6編の論文では、治療を行ったことにより38%のリスク低下を認めました(平均LDL-C値:治療前 107~155 mg/dL,観察終了時55~125 mg/dL)。

同様に心血管疾患の既往のある方を対象とした 2 編 においても、リスク低下を 認 めまし た(平 均LDL-C値:治療前131~147 mg/dL,観察終了時92~99 mg/dL)。



というわけで

スタチンによる慢性腎臓病進行抑制効果は,12編中4編で認められた(平均LDL-C値:治療前134~198 mg/dL,観察終了時79~121 mg/dL)。
ただ、脂質低下療法がCKD進行抑制効果を認めなかった報告も複数あるので、ガイドラインでは脂質低下療法のCKD進行抑制効果については,可能性があるという表現にとどめておかれています。

可能性があるなら、副作用がないなら、やってみるのもいいですよね。

末期腎不全の解析では、3編いずれも有意差を認めませんでした。
尿蛋白/微量アルブミン尿抑制効果をみた解析では,5編中2編で、スタチンによる脂質低下療法により尿蛋白および微量アルブミン尿の抑制効果を認めましたが(平均LDL-C値:治療前182~198 mg/dL,観察終了時121 mg/dL)、有効性を認めなかった報告も複数あり、脂質低下療法の尿蛋白/微量アルブミン尿抑制効果については、可能性があるという表現にとどめておかれています。



  動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017では 慢性腎臓病患者さんは、狭心症や心筋梗塞発症の高リスク群に分類され、管理目標を冠動脈疾患の一次予防でLDL-C<120mg/dL,Non-HDL-C<150 mg/dLと設定しており、慢性腎臓病患者さんもこれに従っての治療が勧められています。


以上長々書きましたが

慢性腎臓病患者さんで脂質異常症を持っている方に対するスタチン,およびスタチンとエゼチミブ併用による脂質低下療法は、心血管疾患病発症ならびに再発と、尿蛋白増加および腎機能悪化を抑制する可能性があり,行うよう提案されていますグッ


ちなみに、糖尿病の持病があったり、すでに心血管疾患を発症している方は、より厳しい目標値になりますよ!!
LDLコレステロール<70mg/dlとされていますが、もっと低い方がいいという報告もでてきているので、主治医の先生によく聞いてみてくださいねハート



はじめましたハート
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