腎臓移植は透析を開始する前に行うべきか? | 腎臓内科医のつぶやき

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気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

今日は
生体腎移植がありました。

今年12例目です。
みなさんとても経過が良く、とってもうれしいです
 
 
 
 
 
せっかくの機会なので
今日は腎臓移植についてお話ししましょう。
 
 
 
以前は
透析をしている患者さんを対象に腎臓移植が行われていましたが
この頃は透析を開始する前に移植をする方が増えてきました。
 
 
 
どうしてでしょうか
 
 
 
 
透析を開始する前に腎移植をすると
移植した腎臓が元気に活動する確率が上昇したり
移植をされた患者さんの生存率も上昇するとわかってきました。
 
 
 
拒絶反応も少なく、『透析』という生活スタイルの変化もしなくて済むなど
色々利点があることも、透析開始前の移植が増えてきた理由と考えられます。
 
 
 
 
          
 
 
 
 
そんなわけで
腎臓病教室や私の外来でも
移植を考えていらっしゃる方には
透析開始前の移植をお勧めしています
 
 
 
その際は
腎臓外科の外来を受診していただき
ご本人の状態と腎臓を提供してくださる方の状態を調べます。
 
手術に耐えうるか、腎臓が適合するか
 
問題なければ
お互いが積極的に望んでいるか・迷いがないかを
精神科の先生との面談で調べたりします。
 
 
 
 
色々検査を行い問題ないと判断されると
いよいよ手術へと進んでいきます
 
 
 
私のよく知る透析患者さんや、透析前の外来に通っていた患者さんも
いまは元気に移植外来に通院されています晴れ
 
 
にこにこ笑顔ニコニコを拝見すると
私もとっても幸せになります
 
 





ヒヨコ        ヒヨコ        ヒヨコ






 
透析と腎移植の関係をみてみましょう。
 
 
 

 
 
文献から
 
 
Mangeらの報告です。
1994年1月~1997年6月の生体腎移植を受けた8481人の方を対象としたものです。
移植後4年の観察から、移植前の透析療法が腎臓喪失の危険因子となることを示しました。
 
*ちなみに腎臓喪失とは、移植した腎臓が機能しなくなる(腎不全になる)ことを意味します*
 
 
 
 
 
 
Kasiskeらは
1995年~1998年に初めて腎移植を行った38836人の方を、移植後5年観察しました。
透析前に腎臓移植をした人のほうが、腎臓喪失の危険性と死亡の危険性が、生体腎移植・献腎移植を問わず良好だったと報告しています。
 
 
 
Meier-Kriescheらは
1988年10月~1997年6月に初めて腎移植をした73103人の方を、移植後8年間観察しました。
6か月でも透析を行うと、腎臓喪失・死亡の危険性が高まる可能性があると報告しました。
 
 
 
 
透析前に腎臓移植を行うと生存率が改善するというのは
すなわち
心血管系疾患による死亡を減少できるからなんです。
 
慢性腎臓病は心血管系疾患を発症する危険因子ということは
ご存じと思います。
 
腎臓病のステージがすすむと、心血管系疾患はより増加するので
その期間を短くすることが大切なんですニコニコ
 
 
 
 
日本腎臓学会でも
『透析導入前の腎移植(先行的腎移植)は
透析療法を経てからの腎移植に比べ
生命予後を改善する可能性があるため推奨する。』
としています。
 






 
 
腎臓移植を検討されている方は
一度早めに専門機関を受診し、相談してみてくださいね!!