腎炎、IgA腎症について考えてみましょう | 腎臓内科医のつぶやき

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気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

腎臓が悪くなる病気について、あまり触れたことはなかったですね。
以前は腎炎など腎臓固有の病気による腎不全が多かったですが
ここ最近は糖尿病による糖尿病性腎症が増えてきています。
 


 
糖尿病性腎症については
腎臓病教室でも、このブログでも何度かお話しましたね。
 
 
 
 
今日は、腎炎(腎炎症候群)について一緒に考えてみましょう。
 
 
 
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以前腎臓の細かい構造について、お話しました。
思い出してみてください。
 



糸球体って、なんでしたっけ?
 
 


 
毛細血管の塊です。
糸球体を包む膜とあわせて腎小体といいます。
 

腎小体で産生された尿には、必要な物質がまだたくさん残っているので
次に通過する尿細管で吸収・分泌を行い
必要のないものだけを尿として、排出しています。
 
 



ちなみに
これからでてくるメサンギウム細胞は
糸球体の毛細血管の間を埋めるようにして
毛細血管を支えてくれている細胞です。
 


 
この細胞のおかげで
毛細血管が固定されて血管が正常に働くことができ
尿を作る濾過作業がスムーズに行われるんですよ。
 
 




 
腎炎症候群とは

糸球体に炎症が起こって
タンパク尿、血尿、高血圧、むくみなどの症状が現れる病気の総称です。
 


 
この腎炎には
突然発症する急性腎炎症候群
徐々に進行する慢性腎炎症候群があります。


 
 
急性腎炎症候群
治る確率が高く比較的良好な経過を辿ることが多いです。
 
 


一方
慢性腎炎症候群
悪化すると腎不全になってしまうこともあり
進行したら完全に治すことは困難です。
 
 





 
腎炎症候群では

糸球体のろ過膜と毛細血管と毛細血管の間にあるメサンギウム細胞が障害されることで
血尿やタンパク尿などさまざまな症状が現れ
腎機能が徐々に低下していきます。
 



 
 
慢性腎炎症候群の中で一番多いのが
IgA腎症です。


 
ここからはIgA腎症についてお話します。
 
 
 



 
まず、IgAってなんでしょう?
 
 
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人間の粘膜を外的や異物から守ってくれているのが
免疫グロブリン(IgA)です。
 
 


この私たちの味方であるはずのIgAが
糸球体の毛細血管と
毛細血管の間にあるメサンギウム細胞領域に
異常に付着(沈着といいます)してしまい
糸球体のろ過機能が低下するのが
IgA腎症です。
 



 
原因は今のところ不明です。
 
 
 
 


 
症状がないのが困りものです
 

健康診断などでタンパク尿や血尿を認めて
偶然発見されることが多いです。
 
 

が、
 


 
気付いた時には腎不全になってしまっている(!)ことも少なくありません。
 
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IgA腎症にかかっている人では
 
風邪をひいたあとの数日間
目で見てわかるくらいの血尿(尿が赤い、コーラ色などになる)が続くことがあります。

 
発症してから20年経過すると、30~40%の人が腎不全で透析が必要になるといわれています。
 


 
 
 
タンパク尿、血尿がでる病気は沢山あり、治療も異なるので
きちんとIgA腎症と診断するためには
腎生検が必要です。
 
 


腎生検については
腎臓病教室の基礎編でお話していますね。
 


 
腎臓に針を刺して、腎臓の組織を少し取って調べる検査です。

血管の塊である腎臓に針を刺すので、数日間入院し
出血がないか確認する必要があります。
 

当院では、3泊4日入院が基本です。
 


 
この腎生検を行い、IgA腎症であると判明したら
きちんと治すべく治療が開始されます。
 
 
 
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治療の内容は
生活習慣の改善、食事療法、薬物療法です。
 
 
 
 


 
薬物療法では
 
副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)、抗血小板薬などが使用されます。
 

高血圧がある人は
血圧を下げる薬の中でもACE阻害薬やARBといった薬を優先して使用し
ます。

 
喉の奥にある扁桃腺も取ってしまいます(扁桃摘出術)。
 
 


 
さきほど
発症して20年経過すると30~40%の人が腎不全で透析が必要になる
とお話しました。
 
 


 
この統計は
今から20~30年前に診断され治療を受けた人などのデータです。
 

 
現在は治療法もかわり、完治を目指せるところまで進歩していますので、
ここ数年で診断され治療を開始された人が腎不全になる確率は低下してくると思います。
 
 
 
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腎臓病は治せるものと治せないものがあります。
IgA腎症は早期に発見し適切な治療を開始すれば治る可能性がある病気です。
 

 
 
日本人に多いIgA腎症。

 
自分は大丈夫と思わず、
必ず検診を受けて、尿の異常がないか、腎機能が低下してきていないか
確認してくださいね!