第33回腎臓病教室のご報告-その2 | 腎臓内科医のつぶやき

腎臓内科医のつぶやき

気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

それでは、今回の冠にもなっていた腎臓移植のお話しをご報告します。
 
 
 
腎臓外科の安藤哲郎先生よりお話しいただきました。
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安藤先生は山形大学医学部を卒業後
東京女子医科大学病院の腎臓外科に入局し
透析用のアクセスや腎臓移植を専門に学ばれました。
 
その後実績を積まれ、2005年より日高病院に勤務され
 
2011年に日高病院での腎臓移植を開始されましたキラキラ
 
 
 
 
東京女子医大病院腎臓外科チームと一丸となり
今まで14例の腎臓移植を行い、抜群の成果を出しています
 
 
 
 
 
 
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この日のお話しでは
 
腎臓の役割や
腎臓だけが先に死んでしまう状態の腎不全について
腎臓の代替え療法である透析療法・移植療法について
とてもわかりやすくお話いただきました。
 
 
 
 
 
 
40年前は
移植してから10年後の腎臓が動いている割合は約50%でしたが、
その割合は、30年前には60%と上昇し
 
現在では80%以上が元気に動いている(生着している)そうです。
 
 
新しい免疫抑制剤などが次々開発され、手術の技術も日々向上しているからなんでしょうね!
 
 
 
 
 
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腎臓移植がなぜいいか
 
安藤先生が特に言っていたのは
『生命予後が延びる』という利点です。
 
 
 
 
透析療法は
治療が開始された40年前と比べると格段に内容は進歩しています。
 
 
でも
週3回休まず治療したとしても
もとの腎臓が行っていた仕事の数%しか働いてくれません。
 
そのため、色々な体の不調がでてしまいます。
 
 
 
 
 
 
腎臓移植は元気な腎臓がまた働いてくれますので
透析で取り切れていなかった毒素などが抜け
元気に生きられる時間が延びるというわけです。
 
 
 
 
不運にも移植した腎臓が動かなくなっても
透析をしないで済んだ時間(移植腎が動いていた時間)の
体の負担はだいぶ軽くなっていますので
リセットされた分元気に長く生活できるそうですよ。
 
 
 
 
 
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また、腎臓をくれるドナーの人の術後経過も気になりますよね。
腎臓機能が悪くなってしまったらと
とても心配になります。
 
 
 
 
2つあった腎臓を一つあげると
もともと100%だった腎機能は
直後に50%まで低下します。
 
 
 
でもここからが私達の体のすごいところで
少し時間が経つと腎機能は70%程度まで上昇してくるんです
 
腎臓はもともと予備力を残しているみたいですよ!
 
 
70%あれば問題ありません。
 
 
 
 
               
 
 
 
 
ちなみに海外のデータですが
腎臓を1つ提供した人と
一般の人の生命予後を比べたものがありました。
 
 
普通に考えると腎臓が一つない人のほうが
早く亡くなりそうですが、結果は真逆でした
 
 
 
なんと腎臓をあげた人のほうが
長生きだったんです
 
 
 
 
 
腎臓がないほうがいいというわけではなく
日々生活に気を付けたり、定期的に病院を受診することで管理意欲が高まるからと考えられています。
 
 
 
 
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他には
近年は血液型が一致しないで行うABO不適合移植の割合が増えてきています。
成績も大きく変わらないので、血液型が異なるからと
移植をあきらめる必要はまったくありませんよ。
 
 
 
 
 
 
とてもわかりやすいお話しをありがとうございました!!
 
 
 
 
 この日の会の模様です。
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今回も
沢山の方にご参加いただきました
 
 


 
 
 
次に、薬剤師から
腎臓移植で使用する薬についてお話ししました。
 
特殊な薬ばかりですので
ちんぷんかんぷんだったかもしれません
 
 
間近に移植を控えている人には
とてもわかりやすかったようですよ
 
 
 
 
 
               ぶーぶー
 
 
 
 
 
休憩をはさんで

 
実際に日高病院で腎臓移植を行い
現在元気に生活しているAさん(女性)が
貴重な体験をお話しくださいました。
 
 
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Aさんは
2011年にIgA腎症と診断され
他院でステロイドパルス療法などを施行されましたが
その時点ですでにクレアチニン値5.87mg/dlの末期腎不全状態でした。
 
 
 
 
透析するか、家族に迷惑をかけるから死んでしまおうかと
かなり深く悩んだそうです
 
 
 
でも、やっぱり生きていたいという気持ちがでてきたので、
透析をするため、当院受診しました。
 
 



 
 
2012年2月血液透析を開始し
新たな生活に慣れるよう日々努力していた時
 
お父さんから腎臓をあげるといわれたそうです。
 
 
 
 
その時の気持ちは
『本当にうれしかった!!!』と。
自分からは言えないから。。。と
 
 
 
 
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2012年9月にお父さんから腎臓をもらい
日高病院で生体腎移植を行いました。
 
 
 
手術前日は不安で寝れなそうだったので
睡眠薬をもらい熟睡できたそうです。
 
 
 
お父さんが手術室にはいって1時間半後
いよいよAさんも手術室に向かいました。
 
 
 
 



 
            
 
 
 
 



 
次に目が覚めた時はもう病室だったそうです。
 
 
思ったより大変じゃなく
手術後3日間腎臓が体に馴染むようじっとしているのが辛かったと仰っていました。
 
 
看護師や家族から
『お父さんの経過も良好で大丈夫』
と言われても
実際目でみないと心配で仕方なかったそうです。
 
 
 




 
 
翌日
お父さんは元気に歩いてAさんのお部屋に会いに来てくれました。
 
お父さんが元気に歩いて笑っている姿を見て
本当に安心したと
涙を流して話してくれました。
 
 



 
私も涙涙・・・・・・

 
ほっとした気持ちが痛いほど伝わってきましたハート
 
 




 
お二人とも経過はとても順調で
腎臓をくれたお父さんは
予定通り2週間で退院!
 
 
 
Aさんも経過はとっても順調!



ただ
200gの腎臓をもらったのに
それ以上に重さを感じたそうです。
 


 
退院後も立ったり歩いたりすると
腎臓が動くのがわかったそうです。
 


 
そんな違和感も3か月するとなくなり安定しました。
 
 
 




 
腎臓移植は補助がでるので
かかった費用は個室代と雑費のみ。
 
 
 




 
退院後の自宅での生活は
決まった時間に薬を服用することと、水分を1日2~2.5リットル飲むのになれることが一苦労だったとか。
 
 
透析をしていた期間は
水分制限が厳しいですものね。
 
 




 
あと
術後間もない時期は
免疫抑制剤の量が多いので、副作用でカリウム値が高くなりやすいため
果物や野菜の摂取を制限していました。
 


 
だんだん薬の量が減り
食べられるものも増え、生活のしばりも減ってきました。
 
 


 
3か月後には
3km歩いても疲れないほど体力は回復したそうです。
 
 
 






 
 
透析を開始した時仕事を辞めていましたが、
今は再就職に向けパソコン教室に毎日通っているとのこと。
 
 
 
外来診察も6週間に1回となり、負担も減ったそうです。
気持ちも楽になり、気楽に病院に来られるようになったと
笑ってらっしゃいました。
 
 
お父さんも元気で
日々家庭菜園に精を出しているそうですよ!!!
 
 



 
 
Aさん
貴重なお話しをありがとうございました!!
 
 
 
元気な姿を見れて、私達も感慨一入です
 
 
 



 
8月にはご希望の多かった
腎臓病食のバイキング形式食事会を予定しています。
次回ご案内を載せますね。