血圧降下薬と痛みどめを一緒に飲むと腎臓が悪くなる!? | 腎臓内科医のつぶやき

腎臓内科医のつぶやき

気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

『腰が痛いから、痛みどめください。』
『膝が痛いから、薬局で痛みどめ買ってるんだよ』
 
痛みって本当につらいですよね。
和らげる方法があるならすがってしまうのは、当たり前です。
 
 
 

 
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今まで腎臓病教室では
 
痛みどめが腎臓を悪くすることがあるので、
薬の種類や、服用方法に注意が必要
 
とお話ししてきました。
 
 
 


 
 
 
今回は
 
『血圧を下げる薬を2剤と痛みどめを服用すると
急激に腎臓が悪くなる危険性が高くなる』
 
という研究結果が発表されたので
ご報告します。
 
 
 
 
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今回でてくる薬は
 
尿蛋白を減らしたり、糸球体にかかる圧力を減らすことで
腎臓を保護しつつ血圧を下げるといわれている
『ACE阻害薬とアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)』
 
 
体液量を減らし血圧をさげる『利尿剤』
 
 
痛みどめの一種である非ステロイド性炎症薬(NSAIDS)
 
 
です。
 
 
 


 
 
 
この研究は
イギリスの
Clinical Practice Resesrch Datalink、Hospital Episodes Statistics
のデータを使用しています。
 
血圧降下薬を服用している患者さん48万7372人を対象に
調査を行いました。
 
 


 
 
 
ヒヨコone pointヒヨコ
急激に腎機能が低下することを
『急性腎不全』、この頃は『急性腎障害』
といいます。
 
 


 
 
 
平均5.9年の観察期間中に
2215人(1万人あたり7人の計算)の人が
急性腎障害を発症しました。
 
 
桜利尿剤だけ服用している人と比べて
利尿剤とNSAIDS(痛みどめ)を一緒に服用している人の
急性腎障害発症リスク比は1.02
 
 
桜ACE阻害薬もしくはARBだけ服用している場合に比べて
NSAIDS(痛みどめ)も一緒に服用している人の
急性腎障害発症リスク比は0.89
 
でした。
 
 
2剤を一緒に使用することでは
急性腎障害の危険因子とはなりませんでした。
 
(リスク比が1より大きいと、その危険性が高い
というイメージをもってください)
 
 
 



 
 
その一方で
ブーケ1利尿薬とACE阻害薬
または
ブーケ1利尿薬とARBの2剤服用している人が
 
NSAIDS(痛みどめ)も服用した場合の
急性腎障害発症リスク比は1.31
 
でした。
 
 


 
 
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ややこしいですね・・・・・・。


 
どういうことかと申しますと
 
 
 
①血圧降下薬のACE阻害薬またはARB
②利尿剤
 
①と②を服用している人が、
痛みどめの一種であるNSAIDSも服用すると
 
一気に急性腎障害を発症しやすくなる
 
ってことです。
 
 
 


 
 
 
 
①を使用すると
尿を作る工場である糸球体の血圧が下がります。
 
 
そこに
②を使用すると
糸球体の中の血圧がよりさがり、
容易に糸球体が脱水状態となります。
 
 
そんな不安定なところに
 
腎臓に負担をかける痛みどめの成分がど~~んとくるので
あっという間に腎臓が悪くなってしまう
 
と考えられているんですよ。
 
 
 


 
 
また
この3種類の薬を使用して発症する急性腎障害は
特に
利用を開始した直後に起こることが多い
 
というのも今回の結果でわかりました。
 
 
 


 
 
①②の薬を服用している方や
腎機能が低下している方は
 
簡単に痛みどめを服用するのは控えたほうがいいでしょう。
 
 


 
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『ところで、NSAIDSって具体的になんて薬なの?』
 

と聞かれそうですが、
一般的な痛みどめは、ほぼNSAIDSです。
 
病院で処方されるものも、薬局で売ってるものもNSAIDSが多いです。
 



 
『薬局で買う薬なら強くなさそうだから、まず飲んでみよう』
 
というのは
 
まちがい
 
かならず、薬剤師さんに確認してくださいね
 
 

 
今回の論文は
BMJ誌1月12日号より引用しました。
(Lapi F,et al.BMJ.2013;346:e8525)
 
 


 
                         
 
 


 
また
ご高齢の方は薬の副作用がでやすいので注意が必要です。
 
 
 
 
利尿剤はとってもいい薬ですが
食事摂取量が減ったり、
水分摂取がいつもより少なかったりするだけで
簡単に脱水状態となり、腎機能障害が出現します。
 
 
手の甲の皮をひっぱって
いつもより戻りが悪い時は
脱水かもしれません。


 
主治医の先生に相談することをお勧めしますラブラブ
 
 
 

チューリップ赤     チューリップ赤     チューリップ赤     チューリップ赤     チューリップ赤
 
 
 
 
ちなみに・・・・・・
2010年に和泉智先生が報告した
薬剤性腎障害(薬の服用で引き起こされる腎障害)
を引き起こした原因の薬のNo.1
 
NSAIDS(痛みどめ)
でした。