no title_2 | GIN@V6〜since20xx〜

GIN@V6〜since20xx〜

You've got the best choice!!

前話はこちら ➡️  no title_1  



 
「ねぇ」

 
背中で声がして唇を離した

 
 「あんた、厄介なモン押し付けられたんじゃないの?」
 

まだ居たのかよ…

女が出てってなかった事を思い出す

「お前に関係ねーだろ。早く行けよ」
顎で玄関を指した


ヒールを指にぶら下げながら出て来た女が
不意に俺らの横にしゃがみこんで

「この子、何なの?」
俺の腕の中を覗き込む

顔を覆ってるフードに伸びてきた女の手を追い払って

怯えたようにすり寄ってくる健を
自分の胸に引き寄せて隠した
 

「この事、誰にも言うんじゃねーぞ」

女の腕を掴んで強く握る
 
「痛い…離して」
 
顔を歪めた女が、俺の手を振りほどいて

フンって鼻で笑うと
雨音の中に消えて行った
 
 
 
 
バタン
 
 
 
ドアがまた、デカイ音をたてて閉まる


健の肩が少し揺れたけど
さっき程は怯えて無いように見えて

俺自身がホッとしていた

 
「健…」
 
腕の中に踞る顔を覗き込むと
少し顔を上げた健の唇が僅かに動いた

「……井ノ原くん…は…」

フッ…

開口一番、井ノ原さんの心配かよ
てめぇの心配しろよ…バカが…青い顔しやがって

「あの人なら大丈夫だって。世渡り上手が服着て歩いてるようなもんだから」 


さも何でもない事のように言ったけど…
大丈夫な補償なんてどこにもねぇ

それでも俺は、健の不安を少しでも取り除いてやりたくて…

フッ……バカは俺も同じか

 
 
「剛…ごめ…ん」
 
そう言って俯いた健の声は弱々しくて
今にも消えてしまいそうで
 
「バーカ。別に…謝ることなんかねぇだろ」
 
健の頭を軽く胸に引き寄せた


健…何に対して謝ってんだよ

さっきキスしたからか?
俺の気持ちには応えらんねぇって?
……ンな事は…百も承知だ

だから…謝るなよ

それとも…なにか他に
謝んなきゃいけない事でもあんのか


健は俺の胸に顔を埋めたままジッとしていて
1ミリ程の希望が俺の中で頭を擡げる
 

 

「ここ…寒ぃな」

 

自分の気持ちをはぐらかすように

健を抱き上げて部屋に戻った





ベッドに腰掛けさせて
濡れたフードを下ろす
健の前にしゃがんで、顔を見上げた

顔色のせいだけじゃない
少し…痩せたか?

手を伸ばして頬に触れたら、そのまま抱き締めてしまいそうで

「服、着替えないとな。濡れたもん脱げ」

 

気持ちを振り払って立ち上がった




タオルを持って戻ると


濡れた服を脱ごうとしてた健の手が止まって

黙って俯いていて

 

 

「ほら。風邪引くぞ」

たまりかねて、健の服に手を掛けた




引っ張り上げた服の内側に見えた


痣と傷


 


今度は俺の手が止まる


 

見てないふりして服を引っ張り上げて

自分が羽織ってたシャツを脱いで健の肩にかけた

 


「タオル、置いとくから。頭拭け」


立ち上がって健に背を向ける




 

堪らなく苛ついた


 

…なんなんだよ、それ

 

お前、大事にされてたんじゃねーのかよ


いい車乗って、いい服着て、美味いもん食って


アイツの隣で笑ってんじゃなかったのかよ

 

 


「剛…」

 

立ち上がった健の肩から、羽織らせたシャツが滑り落ちた

 

俺にギュッと抱きついてきた健の肌が、直に背中に触れる

 

冷てぇよ…バカ…



「着替え取ってくる」

そう言おうとした俺の耳に、健の声が滑り込む


 

「剛…俺……逢いたかった…剛に……ずっと…」

 
 
……何言ってんだ?…だってお前…… 
 
 
 
「剛…」
 
 
背中を振り向いた俺を、健の潤んだ瞳が見つめる

その瞳が、俺を求めてるように思えて

 
そんなハズ…ねぇ…だろ
 
 
「着替え…持って来るから…」

 
勝手な思い込みを、健の手と一緒に振り払った
 
なのに、腕を掴んだ手が俺を引き止める
 
 

「ごぉ……

震える声
お前…なんで…泣いてんだよ

振り返って健と正面に向き合う
頰を伝う涙を指で拭った
 
 
「剛…本当に…逢いたかった…」

俺の首に腕を回して、抱きついてきた健の口から溢れ落ちたのは、否定し続けてきた想い
 
 
「剛…愛してる…」



 
俺はもう

自分の中で押さえつけてた感情と欲望を

上手くコントロール出来なくて

 
 
健を抱き締めて


ベッドに沈めて


貪るように口付けた
 
 
 
 
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