no title_1 | GIN@V6〜since20xx〜

GIN@V6〜since20xx〜

You've got the best choice!!



ザーーーッ  



 
……ん……雨…か…

…っるせぇ……


 
明け方、屋根を打つ雨音に起こされて

苛立って

隣で寝てる裸の女にむしゃぶり付く


「…ん……ぁん…」

芝居がかったような女の喘ぎ声にシラケながら
それでも手は湿った場所を弄るのを止めずにいた



 
ドンドンドンドン
 


土砂降りの音に紛れて
誰かがボロアパートのドアを叩いてる

……っるせ…

音を無視して
俺はまた行為にふける

 
 
ドンドンドンドン

 
「森田ぁ、居るんだろ。開けろ」
 
え?…井ノ原さん?……やべっ
 

慌てて布団めくって起き上がる

「おい、早く服着ろ」
床の上で丸まってた服をベッドの女に投げつけた

 
自分もパンツとジャージ引っ掛けて
取り敢えず手の届くトコにあったシャツを羽織る
 
 
「お前、奥の窓から出てけよ」
玄関の上がりに脱ぎ散らかしてたヒールを放ると
 
「は?ヒドくない?」
不機嫌な声を出しながら、女が奥の部屋に引っ込んだ



バンッ

乱暴に閉まる扉の音を背中で聞いて玄関へ急ぐ

「今開けます」

カチャッ

鍵を捻る音と同時に、ガッとドアごと引っ張られて
よろけた俺を押し戻すように井ノ原さんが入ってきた


傘持ってなかったのか
コートも頭もぐしょ濡れで
 
何時になく慌てた様子の井ノ原さんに少し戸惑う
 
 
「暫く預っといて」
 

ぐしょ濡れのコートの中に、隠すように抱えてた何かを押し付けられた

受け止めきれずに、それごと玄関に尻餅をつく
 

何これ…人間?

…女か…ガキ?
 

ずぶ濡れの井ノ原さんよりはまだマシだったけど
深く被ったフードから少しだけ覗かせた頰は青白くて、俺に凭れたままグッタリしてる


生きて…る…よな?
 
 
「どう…したんすか?これ」

恐る恐る尋ねる
 


少し開けたドアの隙間から外の様子を伺ってた井ノ原さんが、ドアを締めて目の前にしゃがんだ



「時間無ぇ…説明は後だ」
 
「でも…暫くって…一体どれ位….」

 
羽織っただけのシャツの胸元をいきなり掴まれて

「暫くは暫くだよ」


グッと井ノ原さんに引き寄せられる


「いいか?絶対誰にも見つかるなよ。もちろん組のやつらにも」
 
 
訳が分からずポカンとしてる俺に

 
「お前もあんま外出るな。窓…カーテンも閉めとけ」

まだ薄暗い部屋の、開けっ放しになってるカーテンを顎で指した
 

 
「当座の生活費」
俺のシャツの胸ポケットに万札押し込んで

 
「後で連絡する」
 
それだけ言うと
井ノ原さんは、また少しドアを開けて外を確認してから

「じゃあな」

軽く手を上げて、また土砂降りの中に出てった
 
 
 
バタン


風のせいで乱暴に閉まったドアの音に小さく肩が震えて

腕の中のヤツが、生きてる事を証明した
 

良かった…取り敢えず生きてはいる
でも、ちゃんと息…してんだよな

そう不安になる程、俺の胸に触れたそいつの頰は冷たくて


恐る恐るフードの中の顔を覗き込んだ
 
 
 
え?

お前……


 
見知った顔だった

同時に湧き上がる不安

井ノ原さん、俺に…どうしろって…
 

 
 
雨音が強くなってきて

 
ドスン

 
風に飛ばされた何かが、ドアにぶつかる音がした
 
 
 
ビクッと身体が跳ねて
腕ん中のそいつが、また小さくなって踞まる
 
胸に触れた手は、頰と同じくらい冷たくて
小刻みに震えてる
 

「…寒いか?……健」


ハッとして顔を上げたそいつから
答えは返ってこなかったけど


ただ、温めてやりたくて



手を握って、抱き締めて


口づけた




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