求職活動! | ごろつき中年ニートの怒りと弱音の日々

ごろつき中年ニートの怒りと弱音の日々

新宿歌舞伎町でホスト、ソープ、ポン引き、ボッタクリ、取立て屋、カジノ等の職につき、

一時はカジノ、麻雀荘、喫茶店等を経営していた男の、落ちぶれニート生活!!

ニートになってから一年が過ぎた。そろそろ、働かなければ……
そう思った私は求職モードに入った。


私の年齢では、ソープのボーイやホスト等の、表風俗ではもう雇ってもらえないだろう。


無許可の風俗や、賭博の仕事であれば、直ぐに見つかるだろうし

そこそこの金は得られるだろうが、私にその気は無い。


何故なら、私には前科があり、今度逮捕されると、罰金刑程度の罪でも
実刑は免れそうに無いからだ。


もし、私が逮捕されたら、愛犬のポリンキーはどうなってしまうのだろうと
考えると腰が引けてしまう。


逮捕された私は留置場の看守に頼み込み、自分の携帯アドレスに登録してある
知人に片っ端から電話を掛けまくってもらい、出所するまでの間、ポリンキーを
預かってくれる者を探すだろう。


しかし、引き取り手が見つかるまで、毎日、警察が私の自宅に餌をやりに行ってくれる
保証はもちろん無いし、第一、引き取り手が見つかる保証すら無い。


もし、引き取り手が現れなかった場合、警察が犬を放置することは無いだろうが

恐らく、ポリンキーは保健所行きになるだろう。

それではあまりにも、ポリンキーが哀れだし、そうなったら私だけ

生き残りたいとは決して思わない。


善し悪しは別として、今、ポリンキーが、裏の世界に戻ろうとする私の
ストッパーになっていることだけは間違いない。


合法的な仕事を探そう!そう考えた私は近所のコンビニのレジ前に置いてあった
三種類の求人フリーペーパーを部屋に持ち帰った。


私が求人誌を見るのは、実に二十数年ぶりで、当時は百円の

日刊アルバイトニュース、一誌しかなかった事を思うと感慨深い。


久しぶりに見る求人誌の資格の欄には昔と違い、年齢制限や性別が
書かれていない。ネットの求人を見ても、それは、やはり同じだった。


昨年、改正雇用対策法及び男女雇用機会均等法が実施され
求人の際に、年齢制限や性別の特定を出来なくなったということらしい。


こんな、罰則の無い法改正をしたところで、女を雇いたい企業が、男を雇う訳が無いし
若い者を雇いたい企業が、年寄りを雇うことは無いのだから、全く意味が無い。


これでは、二十代の女を募集したい企業に、五十代の男からの応募もあるだろう。
それは雇う側、雇われる側の双方にとって、時間の無駄で、煩わしさしかない。


そんな事を考えながら、私は求人誌でPC関係の仕事を探した。
何故、PC関係の仕事に的を絞ったかというと、肉体的に楽そうで、時給も、そこそこ良いからだ。


それに、私はマイクロソフトオフィスやドリームウィーバーも
そこそこ使いこなせる。


若い女性スタッフの写真ばかりを載せている企業は、暗に若い女性からの
応募を待っているというメッセージを発しているように見える。

かといって、写真を載せていない企業も、中年男を雇うというわけでは、もちろん無い


そう考えている内に、全ての企業が、私からの電話を迷惑がるのではと思えてきた。
電話をする気が失せた私はネットで応募する事にした。


ネットでの応募は住所、氏名、年齢、電話番号、メールアドレスを
入力して送信するだけだ。


中年男はいらない、という企業からは返事が来ないだけで、互いに
煩わしさは少ない。


十社ほどに応募して三日が過ぎ、その間、返事があったのは二社だけで

どちらも、履歴書持参で面接に来て欲しいという。


裏仕事に履歴書は不要なので、私は二十数年間、履歴書を書いたことが無いし
大体、本名を名乗って働いた事すら無い。


そうしていたのには、合理的な理由があり、私に限らず、裏仕事の人間は

そのほとんどが、偽名で働いていた。


それは、警察の摘発を受けた際に、現行犯逮捕は仕方ないが、その場に居なかった者まで
後日、追跡捜査で逮捕されるのを防ぐ為だ。


逮捕者が少なければ取調べで、口裏を合わせやすいし、影のオーナーにとっては
弁護士費用が少なくて済む。


私には裏仕事で知り合った二十年来の親友が数人居るが
お互い、未だに、本名は知らぬままで、通り名で呼び合っている。


話を元に戻そう。コンビニで買ってきた履歴書を見ると、
そこには「職務経歴」という嫌な文字があった。


自慢じゃないが、私には履歴書に書けるような職歴はほとんど無い。


架空の職歴を書くしかないが、面接で質問された時に、私が嘘を言っても
バレない職種は何だろうと考えた。


取りあえず、行きつけの飲食店数軒で、働いていた事にするとしても、それだけで二十数年を

埋めるのには無理があり、何かメインになる、長期間やっていた仕事が必要だ。


さんざん考えて、頭に浮かんだのは、遺跡の発掘助手だった。そんな仕事があるのかさえ

定かでは無いが、もし、質問されても、土を運んでいただけで、難しいことは判らないと
言えば何とかなりそうだ。


たかが、二通の履歴書を書くのに私は二時間を要した。


そして、面接の当日、あれだけ考え抜いた職歴についての質問は一切無く

少し拍子抜けしたが、色々な書類に記入させられて、結局一時間もかかった。


最後に担当者は


「生憎、今、ご希望のお仕事は空きが無くて、このお仕事の空きが出るか、

他のお仕事が入りましたら、又こちらから、ご連絡しますので」


と言い、交通費の千円を、私に手渡しながら、面接の終了を告げた。


なんの事は無い、結局、その会社は、私が希望した仕事の運営会社では無く
単なる派遣会社だったのだ。


私は


「だったら、何故、応募の時点でそう言わないんだ?
わざわざ、こんな所まで、来る必要無かったじゃないか!」


という言葉を飲み込んだ。


相手の返答次第では本格的に暴れなくてはならないが、それで逮捕されたら
何のために、合法的な仕事の面接に来たのかが判らなくなる。


同じ日、もう一社にも面接に行ったが、派遣会社である事と、交通費の千円と
担当者の言い訳も全て同じだった。


これでは、ありもしない魅力的な賃貸物件で、客引きをする悪徳不動産屋と全く同じだ。


たかが千円の交通費で、登録者を増やせるのだから、これなら年齢や職歴等

関係無いはずで、私のような中年男に、面接に来いと言った事にも合点がいく。


家路に着いた私の頭の中には怒りと同時に、それでも、取り敢えずは
仕事の依頼電話を、待つしかないという惨めな感情が芽生えた。


早く家に帰ろう。帰ればポリンキーが慰めてくれるはずだ。


やはり、私にはポリンキーが必要なのだ……


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