高級食材の連打 小熊飯店 千駄ヶ谷 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

飲食店も二極化が、コロナでより鮮明になってきたように思う。

経済がどう傾こうと、ほんの一握りの金持ちは、変わらず高級店に出向く。

支払いが高ければ高いほど、その自尊心は満たされ、もっと上へ、もっと突き抜けて、とせがむかのよう。

店側もその欲求にこたえるため、キャビア、トリュフ、松茸、フカヒレ・・・、と高級食材へ走っていく。

 

経済の視点で考えれば、まあそうなるんだろうな、と思うしかない。

が、社会における食文化の健全な発展について考えるとなると、どうなのだろうか。

まあ、さしたる影響がないようにも思わぬでもない。

 

さて、成功者?たちがこぞって集い、秋冬は凄まじい量の上海蟹を食べることで知られる、「小熊飯店」。

夏の時期外れに行ってみたが、噂通りの高級食材オンパレード。

美味いかどうかはともかく、結構圧倒された。

 

初手は静かだが、しかしこの後の料理を想像させる一口前菜。白エビとキャビア。

イランとロシアで一生分のキャビアを食いまくった身としては、繊細な白エビに乗せなくてもよいのでは、と思ってしまう。

クラゲとピータン。本質は細部に宿るというが、このささやかな前菜がまさにそう。どちらも不味くはないが、気が抜けた皿のように感じる。

2種のウニの紹興酒漬け。料理というか、素材である。

大量のゴールドラッシュと干し貝柱を蒸して、その蒸し汁を集めたスープ。何も足さない、何も引かない、という一杯は、ナチュラルな甘さと貝柱のほのかな旨みが伝わってきて、とてもおいしい。が、大量の残骸が出るわけで、普通の店ではやらないよな。みんなで持ち帰ったけど。

贅沢の極みではあるが、どこか一抹の虚しさが心にしこる。

松茸の春巻き。岩手の早松を巻き上げたもの。

隠元のゴマ和え。なぜに、このようなシンプルな物が1品として出てくるのか?他の料理とのギャップが大きすぎて不可解。

おそらくは、「京味」の菜っ葉と揚げさんの煮びたし的なものなのだろう、と勝手に解釈。

野生のホタテ貝に、セミ海老(どでかかった)の味噌を乗せたもの。これまた、まさに素材である。

ボケているが、こちらはセミ海老の揚げ物。店の人は「海老フライ」と言っていたが、その通り。これも、素材そのまま。何もつけずに食す。

ここから料理は一変。3種のフカヒレの食べ比べ。ヨシキリ鮫、青鮫、毛鹿鮫の3種類。ご丁寧に松茸を入れて香りをつけている。ヨシキリが割とサラリとした食感で、毛鹿が最もゼラチン質が濃厚。貴重な体験となった。

どデカく分厚いアワビのステーキ・肝ソース。これは、今まで食べたこの種の料理の中でもトップクラス。文句なしの旨さ。

そのアワビに合わせたのが、このワイン。これが意外にも結構合った。

続いて、すっぽんとナマコの煮込み。これまたゼラチンがデロデロで、精力絶倫が保証されたような料理。私には全く無用な効果であるが、しかし食って美味いので文句なし。

名古屋コーチンで作った乞食鶏。とてもしっとりと仕上がっているが、コーチンのような鶏よりも、老鶏の方が向いているような。しかし、この店ではコーチンでないと、客は納得しないのだろうな。

2種のウニとアワビとマツタケがこれでもかというくらいに入っている超豪華土鍋ご飯。

参りました、という言葉しか浮かばない。

最後は汁なし担担麺。なぜかここで、急に庶民的なトドメ。

 

お支払のことなど全く考えず、のびのびと食べて飲んで帰れる人だけが行く店だろう。

私は該当者ではない。