これぞ日常フレンチ ターブル・モトオ 六本木 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

はっきり言って、高級感は全くない。

発展途上の男女のデートや接待には全然向かないが、しかし肩ひじ張らずに美味い物を頬張りたい向きには、実に良い頃合いの店だ。

おまけに、安い。

地下に降ると、やや雑然とした店内。

流れる音楽は、フレンチとは無縁のロックやポップス(しかもやや音量がデカい)。

テーブルは、喫茶店仕様?のもので、小さいがために、向かい合って座ると距離が近い。

 

そんなこんなが眼や耳につくけれど、サービスも料理も実にフレンドリーで心温まる。

ビストロ風の料理なのだが、しかしどこかにきちんとオリジナリティーが潜んでいる。

フランス修行歴がないからか、かえって型にとらわれない自由さがある。

 

普段使いにぴったりの店である。が、しかし、8月一杯で店を閉めるとのこと。残念至極である。

 

イワシのマリネ。松の実やクミンが入ったスムールに、香菜のソース。

脂の乗ったイワシの質がとてもよく、マリネの加減も強すぎないのがいい。変なBGMと安普請のテーブル・椅子に気分ダダ下がりだったのが、この一皿で一気に回復。

ホロホロ鳥、鴨、フォアグラのパテ・アンクルート。国内修行先でしっかり学んだ技術が、この一品からひしひしと伝わってくる。各素材の配合がしっくりきているのは、数えきれないほど焼いてきた経歴ゆえだろう。

茄子とフォアグラ。マデラソースの甘じょっぱさがフォアグラを引き立て、こんがり火を入れた茄子の香ばしさが後から追いかけていく。

フォアグラの火通しが、ビストロ以上の腕前。

仔羊のロースト。鼻腔にマグレブ(北アフリカ)の香りが一気に流れ込む。スパイス使いは、かなり挑戦的。このあたり、フレンチの枠を飛び出していきそうなところがいい。スマしたフレンチだと、仔羊は毎度ジュのソースかなんかに落ち着くが、そんなものに飽きた人にこそおススメ。

桃のコンポートとフィナンシェのような焼き菓子を合わせたデザート。

なんでもシェフの奥さんが、葛飾あたりでお菓子屋をやっているそうなのだが、これは全部シェフが作ったそうな。

 

食前酒、店の白ワイン1本、持ち込み赤ワイン1に、食後コニャックを飲んで、1人ジャスト1万円。

六本木でこの料金は、仏心を感じる安さではないだろうか。

 

再訪間違いなし。