王道フレンチ モノリス 渋谷 | 御食事手帖

御食事手帖

主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

クラシックか、モダンか。

フレンチの世界で、前者には古さや重さのイメージが付きまとい、新たなネタを追い求めるフーディーどもにはウケない。

モダンは、斬新さや話題性が取り柄だが、その中で10年後も残る料理は、果たしていくつあるのやら。

限られた時間の中での、消費物、消耗品。パッと咲いて、パッと散るはかなさに、造る人たちは何を思うのやら。

 

クラシック・フレンチも、ただ漫然と歴史的な料理を造っているだけでは、決して生き残れない。目には見えなくても、全ての客が気づかなくても、日々細かな改良がたゆみなく続いていく。クラシックには時代の華こそないかもしれないが、軌道に乗ったら固定客がつき、息が長い店となる場合が多いように思う。

 

今回初めてうかがった「モノリス」。自粛期間中にテイクアウトを2度ほど頼み、中でもご自慢のパテ・アンクルートにとても感心した。

店での料理も期待に違わず、実直なものであった。

 

アミューズは、ゴボウとリエットのタルト、竹炭のマカロン、グジェール。手前のタルトが大変おいしく、20個食べたい衝動にかられる。

モノリスエッグ、と題した料理。クリームのフタにスプーンを入れると、中はのばした卵黄にざく切りのベーコン。子どもからおじいちゃん・おばあちゃんまで、嫌う理由のない味わいである。

徳之島のとうもろこしとニューカレドニアの天使の海老を入れたジュレ。特段、徳之島のアドバンテージは感じないが普通に甘く香ばしいトウモロコシと、味のつまったジュレが良い相性。夏バテ防止に最適な料理だが、残念ながら人生において一度も夏バテをしたことがない。

 

ついで、和歌山の稚鮎の料理が出てきて、しかもこの日一番「映える」皿だったのにもかかわらず、写真撮り忘れ。カリッと揚げた稚鮎に、ソース・ピスト―を緑の川のように皿に描いたもの。モダン寄りの料理で、季節感をコースに取り入れたという感じ。

能登半島の石鯛と北海道の大アサリとめとうイカのブイヤベース。私はこの種の日本式ブイヤベースは好んで食さないのだが、しかしこれはなかなか良いスープで悪くなかった。10何種かの雑魚を入れてドロドロにするマルセイユのそれとは別モノだが、軽やかで日本人好みに仕上がっている。アイヨリをドタッと付けたパンがもっと欲しいところ。

当店ご自慢の、三種の神器のパイ包み焼き。なぜか頭に「ネオ」がついているが、何がネオなのかの説明は、全く聞けず。

三種の神器とは、中の肉が3種類だからだそうなのだが、三種の神器とまで言うからには通年同じなのかと思いきや、内容はその時々で変わるそうな。三種の神器の何たるかを知らずに雰囲気で付けた料理名だけに、右翼団体などに知られないことを祈るばかりだ。

デザートは、アマゾンカカオのスフレ。横にはベリーのジャムの注入器付。

これも老若男女、みなが好む味だが、苦みが欠けるため、やや飽きる。

 

以上、12000円のコース。

料理としては値段に見合っているし、悪くはないと思うが、シェフは何ともとっつきにくい人柄。帰りも形ばかりは見送ってくれるのだが、話かけても生返事だけで、早く帰れと言わんばかり。SNSなどでシェフが毎回使っている決め台詞を借用するならば、「なんかなし」な幕切れであった。