シェフ自ら猟銃を持ち、あちこちで獲物をしとめるほど、ジビエにこだわる店。
冬に真価を発揮するけれど、春夏も決して劣るところはない。
山や海から何かしら獣っぽさを持つ食材を入手しては、通年、美味しく料理してくれる。
何度通っても発見があるので、飽きが来ない店だ。
鹿の血のチュイルにパン・デピス、ブーダン、がまの実を挟んだアミューズ。凝り性な料理人たちの、名刺代わりの一品。
自家製海苔塩チップスに牡蠣とジャガイモのピュレを挟んだもの。食感、風味、共によく考えられている。
1ヵ月熟成させた国産野ウサギのコンソメ。鹿のアキレス腱と筍、そして花山椒を浮かべている。このコンソメの香りがまたすごいこと。キジのブイヨンもすごかったが、これもある種、ジビエの真髄を伝えるスープである。
こちらは海亀のタルタル。年間何匹か採ることを許されている海亀を分けてもらっているのだとか。これがまた、肉とも魚ともつかない味わいで、つまりは海の爬虫類の肉なのである。
ツキノワグマ、穴熊、猪のパテアンクルート。サクサクのパイ生地と、濃厚な野獣ミンチの風味が、好きな人にはたまらない。
真鯛のポアレ。ここで突如、フランス料理の教本のような料理が出てきて、ギャップに驚く。が、基本に忠実で、修行で磨かれた腕は本物と気づかせてくれる。
この日の真打。野ウサギのロワイヤル。見事に熟成した野ウサギの香りをフルに活かし、クラシックの技法を駆使しながら、本場と全く遜色ない伝統料理に仕上げている。東京でこれだけうまい野ウサギが食えるなんて、神仏に感謝せねばならない。
この秋以降も、コロナの第2波が来ないで、安心して食べに行けたらなあ、と願わずにはいられない。






