とびきりの魚を気前よく出してくれて、しかも器がまたピカイチ。
荒木町の店としては決して安くないが、行く価値はある店である。
訪れたのは、いまだ緊急事態宣言も発出される前の、春先のこと。
六本木時代から通っているこの店で、ドでかい河豚の唐揚げを食わないと、冬が終わった気がしない。
相変わらず品数も多く、量もたっぷり。
どれもシンプルな調理で、素材ファーストの姿勢は変わらない。
テレビにも良く出ているので、もう少し客入りが良くてもおかしくないのだが、料理が質実剛健すぎるのだろう。
その辺のヘンチクリンな店のように、何にでもキャビア・トリュフ・ウニをぶっかければ、インスタグラマー女子も寄ってくるだろうが、そういうことをしないのが店主の良いところ。
湯葉豆腐。生湯葉をきれいにまとめて、出汁に浸しただけのもの・・・、ではあるが、これがしみじみ美味い。
定番の前菜。卵フライと子持ち昆布には、子孫繁栄への思いが込められているのだろうか。最近凝っているらしい蛸のやわらか煮がいい塩梅。
モロコとふきのとうの天ぷら。ややそっけない揚げ方と出し方。
あさりとアオサの茶わん蒸し。旨み×2で滋味深い。
河豚白子のお椀。ここの吸い地はやや濃すぎるきらいがある。
なぜか凝っているマグロ。買い続けているせいで質も良くなっているようだが、無くてもいい。
とても上質の鯖。こういうのでいいですよ、造りは。
甘じょっぱく漬けてあるホタルイカ。酒よりご飯がすすみそう。
白甘鯛のカマの酒蒸し。なかなか食えるものではないので、これはありがたい。首の肉はシコシコとして、目や口の周りはゼラチンがドレドレ。誠に結構。
鰆の塩焼き。いつもよりは脂乗りが悪いような気が。
名物・河豚のドでか揚げ。他店の河豚唐揚げがつまらなく感じてしまう食いごたえ。
魚の出汁色々の雑炊でフィニッシュ。
世の中が落ち着いたら、またゆっくりと料理を味わいに行きたい。