日本の旅館は、客が連泊することをあまり想定していないように思う。
みんな1泊で帰ってくれれば、料理は楽だ。時期ごとに同じものを毎夜作っていればいいのだから、ロスも少ないし、考える手間も省ける。
フランスのオーベルジュなどとは、そのあたりが決定的に違うところだ。
さて、2月の美山荘。食材が限られる時期ながら、連泊の客も飽きさせないよう、あの手この手を繰り出してくれる。
まず、食べる場所。
1夜目は、座敷の個室だったが、2夜目は花板さんをコの字で囲むカウンターでの提供に。
調理法や食材について、あれこれ聞けて、しかも親切丁寧に答えてくれるから、これまた楽しい。
他の宿泊客と一緒になるが、それもまたよし。
まずは、岩魚の卵の味噌漬けをのせた自然薯。卵の皮は結構硬く、ブチッっとした食感。
葛で寄せたかぶらの白味噌椀。京都ならではのお椀だ。
造りは、岩魚。これもどこそで採ったものを、宿の前の小川で肥育したもの。
のびるの葉っぱを混ぜたおろしが、良いアクセント。
重箱に入れた前菜。トチ餅こんにゃくが素晴らしく、梅干しと炊いたイワシも渋い味わい。鹿の叩きやくわい、豆の炊いたんなど。
胡麻豆腐に小浜で採れたモクズガニ、筍、きくらげを鯛のアラの出汁で蒸し上げたもの。
モクズガニは、ご存じの通り、上海蟹の同属異種。風味は異なるが、やはり味噌がうまい。
熊とこごみ、お麩をすき焼風に煮たもの。熊は、このような甘じょっぱい味の方が合うような。
季節もののお稲荷さん。
焼き物は、鯉。これがまた、全然臭みがなく、なかなかいける。
猪は鍋で。丸大根と京菜と共に。猪もやっぱり脂が命。若い雌のバラ肉はうまい。
白菜と小さい芝海老を炊いたもの。
締めは猪鍋の雑炊。
可愛いらしい水菓子で、終了。
2夜目も満足しきった夕餉であった。