世にスペイン料理屋やスペインバルは増えたが、「なんちゃって系」の、なんと多いことか。
生ハムとチョリソとパエリャを出していれば、なんとか恰好がつくものだから、手っ取り早く始められるジャンルなのだろう。
数が多い割に、本場志向のガチな店はあまりないような気がする。
そんな中、信頼できる筋に薦められた「アルドアック」は、とても頑張っている方だろう。
行きやすいとはいえない立地で、ビルの2階。やや雑多な印象の店内ながら、ちゃんと固定客もついていて、繁盛の様子。
ワンオペながら、せっせと料理を出し、ワインを勧める姿は、とても好感が持てる。
突出しは、ハモンイベリコと、おいしいオリーブ、アンチョビ。
続いて、 バターナッツのスープ。ムール貝、チョリソ、洋ナシにクミンの風味を加えている。
味の構成が面白い。
サンマと焼きナスという和食材を使った一皿。ソプラサータ(マヨルカ島名物の腸に詰めないチョリソ)でパンチを加えて、一気にスペインっぽさを強調。ドライトマトと蜂蜜の甘さも独特。
真鯛の蒸し焼き。オマールベースのブイヤベースにローストナッツのピカーダを入れたソース。
凝った一皿。
生の鱈を詰めたピキージョ。テクスチャーはとても滑らか。シイタケの上にはトシーノを一かけら。
ソースの味わいを含め、本場感たっぷりの料理だ。
レオン・デ・カスティーリャのひよこ豆のコメ料理。生ハムの骨で取った出汁を使い、塩豚を細かくして入れる。
いたって素朴だが、しみじみうまい。これも本場的。
豪州産子羊のロースト。なぜか最後は、ごく普通のメイン。
「流行に乗って」と笑いながら出してきてバスク風チーズケーキ。
これが、実にうまい。
以上、結構食べ応えがある量ながら、スルリと食べてしまった。
行くまでが大変だが、それでも再訪したくなる店だ。