経緯は端折るが、四谷の「北島亭」を辞めたスー・シェフが、銀座で構えた新店。
L字のカウンターは12席くらいだろうか。
店主は客前のど真ん中に立ち、「俺の店の、俺のショーの始まり~!」という風情で食事がスタートする。
周囲で支える若い子たちは、いずれも大石シェフを慕って集まったセミプロ風の男女。
それをどうにかこうにか使いこなすシェフの人柄はさすがなものだ。
発展途上であることは自他ともに認めるところだろう。
ただ、現時点でもすでに1人3万円は超える客単価。
ワイン専門家もいない中でのペアリングなど、色々改善すべき点はある。
店の完成度が上がるまで、大石ファンが支え切れるのか。
そのあたり、店も客も試されるところである。
まずは直接手のひらにのせられるアミューズ。潰したグジェールで挟んだ蟹に燻製のクリームとキャビア。
余市のウニとカリフラワーのムース、コンソメジュレがけ。ジュレが繊細な味わい。穂シソはいらないような。
増毛のボタンエビをマデラで漬けたものと、バルサミコの酢飯。フレンチ割烹らしい一品。
オータムトリュフを浮かべたすっぽんのコンソメ。鶏出汁にすっぽんを煮出して8時間かけて作ったもの。
澄んではいるがコクがあり、労作にして秀作。
八寸風の前菜盛り合わせ。パテ・ド・カンパーニュとうさぎのテリーヌは、共に肝類を抑えて食べやすい味わい。
フォアグラと栗のもなか。元気なお嬢さんが「どうぞ!」っと出してくる。
セップ茸のフライ。ご立派なサイズ。
ウナギの白焼きに燻製をかけたキャピアと芋のピュレ。トマトのドレッシング。
フレンチを食べ込んでいない人も喜ぶ料理。
豪州産の子羊を2つの火通しで。塩パンでクルートして焼いた赤身と、脂を絞り出すようにして焼いた骨付近。
セミドライトマトとオリーブを入れたジュのソース。骨側はスイートマスタードとハーブで。
牛ランプのマデラソース。大きな塊で上手に火通し。
アワビのリゾット風炊き込みご飯。嫌う理由はない。
まだ足りない人にはカレーも。
和栗のモンブランで締め。
ガチなフレンチ愛好者はどう評価するだろうか。
銀座の金持ちおじさんには好まれそうだが。