柴田書店の「専門料理」を定期購読しているが、だんだん飽きてきた。
特にフレンチは、同じような料理人の同じように小奇麗な料理ばかりなので、読んでいて本当につまらない。
多分、価値観と人間の幅が狭い編集者が作っているんだろうな、と思う。人間味というか、人情に薄いといおうか。
メディアであんまり紹介されていないのが、ここ「ラシェット・ブランシュ」。
映えないからだろう。
自分の写真を見ても、そう思う。
いつも同じような料理で、同じような写真。
でも、それはすごいことだと思う。
それでずっと店を維持していけているのだから、本当の意味での、息の長い名店といえよう。
フォアグラ・仔ウサギ・隠元のコンソメ・ゼリーがけ。何気なく見える料理だが、細部が素晴らしい。隠元の硬さが的確。仔ウサギ肉の火通しがジャストで、しっとりとしながらしっかりとした噛み心地。コンソメジュレは、店の信条を表しているかのような、丁寧で繊細で澄んだ旨みが広がる。
いつも頼んでしまう、オマール海老と春キャベツのシャンパンバターソース。キャベツが主役に負けてない料理。アラン・サンドランスのフォアグラのキャベツ包みを想起させる。キャベツという庶民の食材を、ここまで昇華させる腕前に感服。
穴子のポアレ、焼きナスのピューレ。これも大好きな一皿。こんがりパリッと焼き上げたアナゴと、焼きナスの香ばしい風味が引き合って相乗していく。和食材を使ったフレンチの逸品は数多あれど、これほど完成度の高い料理には、そうそうお目にかかれない。
この店の看板メイン料理、小鳩のロースト。最適な火通しで、身のレア感と皮のクニュッとした感じを楽しめる。鮮度の良い小鳩の、血の風味が何ともいえない。頼めば2人で半羽ずつにしてくれるが、やっぱり丸々1羽食うことで、物語の全編を味わうことができる。
この駄文を書きながら、「また予約入れなきゃ」と気が逸ってしまう、稀有な店である。