東のすきやばし次郎、西の小松弥助――。
というらしい。
レジェンド、とも。
80歳を超えてなおも付け場に立っていると、それだけでも神々しく見えるのだろう。
実際にそのお姿を拝見してみたが、お寿司を握るのが本当に楽しそう。人柄も(東と違って)良く、客へのサービストークを絶やさない。
威圧的なところはなく、優しいお爺ちゃんだ。弟子への指導も細やか。
ただ、寿司自体がそんなにすごいわけではないように思う。
活きの良いネタに、あっさりした飯を多めに握る、親しみやすい寿司だ。
値段も(東のバカ高い)レジェンド級ではなく、納得のいくレベル。
無理してテーブル席に入れてもらったが、モノは試しという意味で、良い経験となった。
立ちっぱなしのレジェンド。
つまみからお願いしたら、まずこれ。蒸しあわび。普通にうまい。
造りは、甘海老、バイ貝、ヒラメ。1月初旬はどこへ行っても寒ブリがなかった。
鱈白子のすり流し。ややシャバシャバで濃度がない。
握りは、アマダイ、ひらめがネタかぶり。名物の包丁をたくさん入れた赤いか、ハマグリに、ちょっと炙ったトロ。
ハマグリのツメは甘め。生々しく、東京の仕事をしたハマグリとは異なる感じ。
名物らしい「白山」。づけマグロとトロロ、ウニ。
漬けの赤身。上にはこのわたが乗っているが、これはちょっと疑問手。赤身の香りの邪魔になる。
この後、うなきゅう巻が出て、一通り。量は少ない設定。
追加のしめ鯖とこはだ。どちらも優しい締め方。シリアスな寿司ラバーの評価は分かれそう。
アナゴ。姿に工夫はあるものの、味はもうひとつか。
ネギトロ巻。これは大トロたっぷりで当然うまい。
こちらは「贅沢巻」。マグロとあわびが入っている。食材のマッチというより、客の満足を優先してくれるところがサービス精神。
以上に、ビールや日本酒180mlを3種ほど飲んで、他の客より長っ尻をして、2人で4万5千円弱のお支払。
金沢では高いのだろうが、東京から行くとありがたく感じる。
アパホテルから解放されて、いろいろすっきりされたのだろうか。
楽しそうに働いているのをみて、あやかりたいと思うばかりであった。