人気フレンチである「ル・スプートニク」でも、サービスの柱であった人が渡仏してしまったそうで、ホールは結構大変そうだった。
料理を運んでくるのは、厨房のスタッフたちだったのだが、それはそれで客としては悪いことではなかった。「ああ、こんな人がシェフの下でやっているのか」とか、「女性もいるのね」とか、なにやら内情を知る機会を得たようで、なんとなく楽しい。
さらには、料理についての質問にも、的確な返答が得られるのもうれしい。
次回はきっと補強されているだろうから、貴重な体験?だったかな、と。
そんなル・スプートニクのある夏のコース。

いつもの泡の串刺しアミューズに次いで、枝豆のチュロス。
豆の香りが高く、サクッと揚げた食感も楽しい。

定番、ごぼうフリットの上には、稚鮎。
ほろ苦い風味に、五香粉が効いたゴボウの土の香りが良く合う。

こちらは、二週間熟成させたイサキでソルダムやチェリー、モッツァレラ・ブッファラを巻き込んだもの。旨みと風味が増した魚に、酸味とミルキーな甘みが加わり、口中混然たる状況。

長崎の岩がき。きゅうりのしぼり汁を低温窒素で冷やし固めた物と、きゅうりのジュレがかかる。
冷たくて、ちゅるんとした食感は面白いが、どこかきゅうりの青さが浮いているような気がする。

桜のチップで薫製したイワシに、いちじくとナスのワインビネガーマリネ。じゃがいものソースにビネガーにつけたペコロスにはハーブソースを垂らしている。
こういう取り合わせをよく考えるなあ、と感心してしまう。イワシにイチジクの甘みが合う、ということを知れただけでも、食べた価値があった。

すっぽんの甲羅をめくると・・・

下にはすっぽんと冬瓜を詰めたラビオリ。珍しく和テイストを取り入れた一皿。
料理王国8月号の「フレンチに醤油はあり?なし?」という記事にここのシェフが出ているが、「醤油はなし」派とのこと。でもすっぽんと冬瓜はあり、なあたり柔軟な思考の持ち主のようだ。

フォアグラ料理は、バニラロースト。ブリオッシュにはキノコパウダーがふってある。リンゴのキャラメリゼに蜂蜜ソースというあたりは、ど定番な方向性。


つづいてもクラシックな雰囲気の、舌平目のパイ包み。シイタケやホウレンソウをすり身で包み込んでいる。トリュフ入りのサヴァイヨンソースは、とても軽い仕上がり。
ここのパイ包みは、クラシックだけどモダンだな、といつも思う。

メインは豪州ソルトブッシュ・ラム。モンサンミッシェルのプレサレみたいな子羊らしい。
ジュにロックフォールのソース。最後は無難にまとめてきたな、という感じ。


チョコレートのデザートはいつもハイレベル。
毎度ながら、満足感の高いコース。
またサービスが安定して、出力全開の店にもどることを願ってやまない。