メディア露出が多くなる前は、町はずれに佇むアットホームな店だった。
客入りが悪い大雪の時など、「救援」とばかりに食事に向かったことも懐かしい思い出だ。
だが、肉屋の息子の店主がご立派になりすぎて、しばらく足が遠のいていた。
今は西麻布かどこかに店を出し、ブイブイ言わせているそうな。
そのおかげで、牛込神楽坂の方は少し予約が取りやすくなっただろうか。
久々に行ってみると、料理のクオリティーはともかく、町のイタリアンの趣に回帰しているような印象。人気店主がいなくなって、かえって良かったのではないか。

名物のタルタル。火通しなど、若干ピントがあってない部分もあるが、店主不在の中で健闘している方ではないか。

熟成牛のカルパッチョ。ねっとりとした食感で、香りも高い。延々食べ続けたい衝動にかられる。何か本能に訴えるものが、この生肉にはあるのだろう。

ご自慢のLボーンステーキ。わっしわっしと赤身を噛みしだき、滲んだ肉汁を飲み下す時が何とも言えない。六本木などで増殖するアメリカ系のステーキハウスより安く、焼く技量も味も負けていないと思う。

こちらは熟成牛のパレルモ風カツレツ。衣は好き嫌いが分かれるだろうが、肉の風味は抜群。ステーキの後でも、スイスイいけてしまう。

ここの隠れた看板料理だと思う、モツのラザニア。煮込んだモツがたっぷり入り、締めパスタとしては最重量級である。
いろいろ変わったようにも感じるが、しかし相変わらず美味い肉を食わせてくれる店だ。
町の肉イタリアンとして、また気楽に行ける店に戻ってくれたら、と願うばかり。