では、日本料理の人に、「割りのいい業態は?」と問うたら、大半が寿司屋か天ぷら屋と答えるのではなかろうか。
「寿司屋は魚だけだから楽でいいし、天ぷら屋はぼろ儲けじゃないですか」という(やっかみの)声をよく聞く。
最近では、割の合わない日本料理と割のいい寿司または天ぷらを組み合わせた、「ハイブリッド店」が色々出てきた。
この店「あら垣」もその一つといって良いだろう。
店主は、日本料理で修行した人物。
独立を機に、「天ぷら屋」を標榜することに決めたのだそうな。
なので、初手や合間に出る料理は、天ぷら専門店のそれを凌ぐレベルである。
さらに、発展途上の天ぷらの腕もなかなか。
天ぷらだけを一筋に出すシリアスな店より、ニーズがありそうだ。

初手はタラの白子、といっても一工夫で昆布締め。いい具合に旨味が乗っていて、鼻に抜ける香りもいい。

造りは、脂の乗った金目鯛とイカげそ。9000円のコースだから高望みはしなかったが、どうしてなかなかのモノを出してくれる。

このすっぽんの煮凝りもいける。身が適度に散りばめられ、味と食感のバランスがとれている。

ここから天ぷら。活けの車エビは折々に3回出てきた。エビに関しては、ちょっと揚げ過ぎだろうか。芯までしっかり火が通っていた。

むかご。

めごち。これは質がいい。目が詰まっていて、風味も十分。

宮城産の牡蠣も大振りで、ジューシー。巻いた海苔も効いている。

キス、肉厚。


塩をしたマナガツオが、これまたうまい。


途中、こんなのも。玉ねぎのすり流しにイクラと車エビ。

あなごも良質。
普段は、ごはん前に追加を頼むところだが、かなり食い応えがあり、コースだけで終了。

絞めの天茶。出汁の品がいい。
9000円なら十分満足。
高いだけの天ぷら屋が増殖中だから、できればこの値段をキープしてほしいものだ。
立地は微妙だが、応援したくなる店である。
あら垣 (天ぷら / 勝どき駅、月島駅、築地駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.5